現在の女子プロレス界を牽引する世界的レスラートップ10、日本からは林下詩美、朱里もランクイン

2022-03-22
読了時間 約3分
(GETTY)

ここ数年、プロレスファンは多くのレスラーたちが四角いジャングルに足を踏み入れるのを目の当たりにしてきた。その何人かは大きな人気を獲得した。それがリング内での戦いであれ、あるいは観客へのアピールであれ、レスラーはそれぞれの個性でファンを魅了し、さらなる期待を抱かせている。

女子プロレスはかつてないほどの脚光を浴びている。米国でも日本でも、伝統的な女子格闘技の有名選手らが続々とプロレス界に参戦している。WWEにおける『Women’s Evolution』("ディーバ"という女性タレント的な起用から、男子レスラーと同じ扱いとなり"スーパースター"呼称に改められた)、インパクト・レスリング、SHIMMER、スターダム、シャインなどがよく知られているが、それ以外にも数多くの団体が女子プロレスの興行を行っている

新たな世代へと道を切り開いてきたのは、トリッシュ・ストラタス、メイ・ヤング、アジャコング、アランドラ・ブレイズ、ゲイル・キム、アメージング・コング、ミルドレッド・バーク、チャイナ、サラ・デル・レイなどのレジェンドたちだ。このなかにお気に入りの選手はいるだろうか。

女性の歴史月間に敬意を表し、米スポーティングニュースが選ぶ現在のトップ10女子プロレスラーは以下の選手たちである。

10. ブリット・ベイカー

まずはオール・エリート・レスリング(AEW)の女子世界チャンピオン、ブリット・ベイカーから紹介しよう。ベイカーのプロレス歴はまだわずか数年に過ぎないが、瞬く間に大スターへと成長し、世界中のAEWファンの心を捉えている。

ベイカーはリングに上がるたびに、チャンピオンに相応しい戦いを見せている。サンダー・ロサとの一連の戦いがベイカーの名前を不動のものに押し上げた。30歳で現役の歯科医でもあるという異色な経歴と、常に全力でファンを喜ばせる姿勢が、ベイカーの評価を揺るぎないものにしている。

ベイカーの次の3年間はどのようなものになるだろうか。

9. ジョーダン・グレース

ジョーダン(ジョーディン)・グレースは女子プロレス界でも屈指の強さを誇る。インパクト・ノックアウトとプログレス・レスリングの元世界チャンピオンである。斬新なスタイルで知られ、常に全力ファイトを身上としてきた。

インパクト・レスリングと専属契約している今年に限っても、グレースはデジタル・メディア・チャンピオンのタイトルを保持し、男女混合マッチや史上初の女子アルティメイトXマッチにも参戦した。夫であるジョナサン・グレシャムもレスラーであり、夫婦でプロレス界に多大な貢献をしている。ショーを盛り上げるためには、どのようなこともいとわない。

グレースは斬新なスタイルと強力なパワーを兼ね合わせている。そして観客の期待に応え続けるための努力を続けている。

8. 朱里

近藤朱里(しゅり)という名前をかつてのUFCスター選手として記憶しているファンもいるだろう。総合格闘技で6勝3敗の記録を残している。またキックボクサーとしても知られている。プロレスファンにとっての朱里は、誰もが戦うことを恐れるスターダムの現役世界チャンピオン(第14代ワールド・オブ・スターダム王者)である。

朱里はこれまで、スマッシュ、ハッスル、レスリング・ニュー・クラシック、REINA、そしてスターダムのリングに参戦してきた。総合格闘技でのキャリアを活かし、プロレスのリングに本物のテクニックを持ち込んだ。それは伝統的でもあり、破壊的でもある。独特の世界観をもつ朱里は目を離すことができない存在である。今はまだその名をよく知らないファンも、朱里がいかにエンターテイナーとして優れているかを多くの調査で知ることになるだろう。

7. サーシャ・バンクス

女子プロレス界の四天王と呼ばれる第一人者をこのリストから除くわけにはいかないだろう。サーシャ・バンクスはNXT時代から、常にトップレスラーのひとりとして活躍してきた。そしてベイリーとの一連の戦いでスターの座を手に入れた。WWEメインロースターへ昇格して以来、バンクスは女子チャンピオンを6回、そしてタッグ・チャンピオンを2回、獲得している。

バンクスの斬新なファイティング・スタイルは年を追うごとに変化している。一方で基本に忠実であり、リング内でのスキルはつねに安定している。ベイリーに加えて、ビアンカ・ベレアーとの戦いで、バンクスの実力が本物であることが証明された。レスリング外では、スターウォーズのテレビシリーズ『マンダロリアン』に出演し、2021年にはもっとも多くツイートされた女子アスリートの3位にランクされた。

何回かの故障でキャリアの中断を余儀なくされたが、その度に復活を成し遂げてきた。バンクスの能力と独特のスタイルは今も健在である。

6. サンダー・ロサ

サンダー・ロサはブリット・ベイカーの好敵手ということだけでは語ることができないレスラーである。チャンピオンに何回も輝き、世界中の子供たちに感動を与えてきた。

「メキシコ・ティフアナの墓場からやってきた」がキャッチフレーズの35歳レスラーはAEWを主戦場とし、他にもいくつかの独立系団体のリングにも上がってきた(東京女子プロレスにも出場)。ロサの闘志あふれるスタイルはファンだけではなく、他のレスラーたちも奮い立たせてきた。ベイカー、メルセデス・マルチネス、デオナ・パラッツォ、ジェイミー・ヘイターらとの激闘を通じ、ロサは本物のスター選手たちの仲間入りを果たした。

Scroll to Continue with Content

ベイカーとの戦いに限っても、金網マッチから総合ルールまで、ありとあらゆるルールに挑んできた。プロレスと総合格闘技の両方でスターになれる無限の可能性を秘めている。

5. セリーナ・ディーブ

(欧米の)多くのファンはセリーナ・ディーブの名前をWWEにおける『ストレート・エッジ・ソサエティ』(CMパンクが率いた禁欲ユニット)の一員として記憶しているだろう。それだけではなく、ディーブは女子プロレス界を牽引してきた中心人物である。

2015年に一時引退した後、ディーブはメイ・ヤング・クラシックでWWEに復帰した。そのときに会場のファンはスタンディング・オベーションで迎えた。ディーブがどれだけの努力を重ねてリングに戻ってきたかを知っていたからだ。WWEパフォーマンスセンターのコーチとなった後、2020年にはWWEから解雇された。しかし、ディーブがリングから遠ざかった期間は短かった。AEWと契約し、サンダー・ロサを破った一戦で、NWA女子世界チャンピオンのタイトルを獲得した。

35歳のディーブは「レスリング博士」と呼ばれている。プロレス界では屈指のテクニシャンだ。現在はAEWで志田光と戦いを繰り広げている。ディーブの存在はプロレスの勢力図を変えるほどのインパクトを与えた。

4. シャーロット・フレアー

シャーロット・フレアーの父親はリック・フレアーである。親譲りの才能はスター選手に成長するまでに数年しかかからなかった。まるで触るものすべてを金に変えてしまうようだ。リング上のフレアーはまさに全能だ。

グランドスラムをすでに達成したフレアーは、キャリアのすべてをWWEのリングで過ごしてきた。数多くのタイトルを獲得してきただけではなく、革新的なプロレスのスタイルを生み出してきた。現在はAEWで活動する婚約者、アンドラデ・エル・イドロの動きを取り入れただけではなく、それにフレアー自身のオリジナル技も加わって、観客をただ沸かすだけではない。ヒールとしての存在感も抜群であるし、人間の極限とも呼べるような技を見せるときもある。

フレアーは「女王」と呼ばれ、現在のWWEで最高レスラーのひとりとして考えられている。かつて誰も見たことがないようなことを、女子プロレスのリングで実現しようとしている。

3. 林下詩美

米国のプロレスファンはあまり聞いたことがないであろう名前だが、林下詩美は世界でも指折りの才能を持ったレスラーだと考えられている。わずか23歳にして、林下はスターダムでいくつかのタイトルを獲得している。

林下は神童から本物のスターに成長を遂げてきた。『プロレスリング・イラストレーテッド』誌の女子レスラー・トップ150人ランキングで2位に選出されている。出場するすべての試合で新しい姿を見せてきた。そのなかには1時間近くの長丁場になった試合もいくつかある。現在のプロレスではあまりないことだが、林下はそれをいとも簡単にやってのけているようにも見える。かつてスターダムのエースとして長年君臨していた紫雷イオに代わり、この団体を新時代へと引っ張る存在だ。「赤い女王」と呼ばれるスター選手に成長した林下は、自身が望めば、他のどの団体とも契約できるだろう。

恐るべきことに、林下はまだそのキャリアを始めたばかりなのだ(2018年8月12日デビュー)。

2. デオナ・パラッツォ

WWEに参戦する以前、デオナ・パラッツォは様々な場所で戦ってきた。インパクト・レスリングとスターダムに登場したことがあるし、リング・オブ・オナー女子部門の一員だった時期もある。2018−20年はNXT とWWEに参加した。WWEから解雇された後は、ありとあらゆる団体のリングに上がってきた。現在はインパクト・レスリングと契約を結び、そのリングを主戦場としている。

パラッツォはニュージャージー州出身の27歳だ。インパクト・ノックアウト・チャンピオンを2回制し、そのベルトを1年近く保持している。ミッキー・ジェームスとの戦いはテキサスでのデスマッチにまで発展し、女子プロレスの人気を高めた。パラッツォのテクニックはそれ以来輝きを増したようである。

現在はAAAレイナ・デ・レイナス王座とリング・オブ・オナー女子世界チャンピオンのタイトルを保持し、毎週のように両方のタイトルを防衛し続けている。女子プロレス界全体でも、最も多忙なファイターのひとりであると言えるだろう。パラッツォは今まさに全盛期を迎えている。

1. ビアンカ・ベレアー

ビアンカ・ベレアー(ブレア)は「有望株」から「見逃せない」レスラーになるまで、非常に短期間でスターの階段を駆け上ってきた。

WWEに参加した2016年以来、ベレアーはスターとしての力量を見せつけている。32歳でNXTの人気者になったことには、ベレアーの驚嘆に値する勤勉さによるところが大きい。新型コロナウイルスのパンデミックが世界中を覆っていた時期にWWEメインロースターに昇格すると、ベレアーの人気は急激に高まった。2021年には3番目として登場したロイヤルランブルで優勝した。そしてレッスルマニア史上で最高試合のひとつに数えられるサーシャ・バンクスとの激闘を演じた。メインイベントでバンクスを破り、大勢のファンの前でスマックダウン女子世界チャンピオンを戴冠した。

ベレアーはベテラン選手のテクニックを持つが、今でも観客を驚かせる新しい技を披露する。リングの外でもWWEスーパースターとしてのロールモデルの役割を担っている。ベレアーを止めることは何者にとっても困難である。

(翻訳:角谷剛)