【コラム】ワールドカップ2023賞金の内訳:チーム、選手が手にする賞金額は?|FIFA女子ワールドカップ2023

2023-08-21
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女子ワールドカップに参加した32ヶ国の代表チームには、世界最大の大会に参加したという栄誉に加え、FIFAから提供される賞金という形での報酬も手にする。

トーナメントに参加したチームに提供される賞金の総額は2007年に初めて公開されて以来毎回増額されていて、今回の発表では2019年よりも300%近く高いものとなった。

この賞金は、参加する選手たちにとってはもちろん、これから発展を目指すハイチやジンバブエのような国にとってみれば、自分たちのフットボール・プログラムに還元する資金を獲得する上で大きなプラスとなるものだ。

この記事では、今回の女子ワールドカップで提供される賞金の内訳を見ていくとともに、男子大会の賞金との比較もしていく。

女子ワールドカップ2023の賞金総額は?

今年3月、ジャンニ・インファンティーノFIFA会長は、今回のワールドカップで提供される賞金額が1億1,100万ドル(約162億600万円)にのぼることを認めた。

これは当初の提供額(6,000万ドル/約87億6,000万円)の倍近く、前回の女子ワールドカップの賞金総額3000万ドル(約43億8,000万円)と比較すると大幅な増額となっている。

インファンティーノはまた、大会参加のための準備費用として参加国の加盟協会に対して計3,100万ドル(約45億2,600万円)が別途提供されることも発表した。

このアクションは、「選手、FIFAが、業界内の均衡ならびに機会均等の実現へ積極的に取り組んでいる」ことを示すものとして、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)から称賛された。

女子ワールドカップ優勝国が受け取る賞金は?

女子ワールドカップの優勝国が受け取る賞金額は429万ドル(約6億2,634万円)、それに加え、優勝チームの選手たちはそれぞれ27万ドル(約3,942万円)を受け取ることが発表されている。つまり、優勝した国はFIFAから総額1,050万ドル (約15億3,300万円)を受け取ることになる。

2019年のワールドカップで優勝したアメリカ代表が手にした賞金は400万ドル(約5億8,400万円)だったので、それと比較すると微増に思われるが、各選手が受け取るボーナスを加算すると前回大会に比べ、大幅増になっていることがわかる。

初めて賞金が提供された大会でトロフィーを掲げたドイツが手にしたのが100万ドル (約1億4,600万円)だったことから考えれば、賞金額はとてつもなく増えていることがわかる。

ワールドカップ開催年 賞金総額  優勝国の賞金総額
2007年 580万ドル (約8億4,680万円)  100万ドル (約1億4,600万円)
2011年 580万ドル (約8億4,680万円)  100万ドル (約1億4,600万円)
2015年 1,500万ドル  (約21億9,000万円) 200万ドル (約2億9,200万円)
2019年 3,000万ドル   (約43億8,000万円) 400万ドル (約5億8,400万円)
2023年 1億1,000万ドル  (約160億6,000万円) 1,050万ドル (約15億3,300万円)

女子ワールドカップ2023の賞金の内訳:各チームが受け取る賞金は?

グループステージに参加したチームの賞金は156万ドル(約2億2,776万円)。ノックアウトステージへ進み、トーナメントを勝ち進んでいくたびに賞金額はアップしていく。

ラウンド16に進出した国の賞金は187万ドル(約2億7,302万円)。その先は1勝ごとに賞金が加算され、決勝戦に進んだチームは少なくとも300万ドル(約4億3,800万円)を手にする。

トーナメントのステージごとの賞金額は以下の通りだ(選手へのボーナスは除く)。

ステージ 賞金額 
グループ・ステージ 156万ドル (約2億2,776万円)
ラウンド16 187万ドル (約2億7,302万円)
準々決勝 218万ドル  (約3億1,828万円)
4位チーム 245万ドル  (約3億5,770万円)
3位チーム 261万ドル  (約3億8,106万円)
準優勝 300万ドル  (約4億3,800万円)
優勝 429万ドル  (約6億2,634万円)

女子ワールドカップ2023で選手が受け取る額は?

今大会は、賞金の一部が参加選手たちに提供される、女子ワールドカップ史上初の大会となった。

6月8日、FIFAは今大会の参加選手が一人3万ドル(約438万円)以上受け取ることを保証する旨を発表した。チームへの賞金同様、選手が受け取る額はチームが勝ち進むにつれて増加していく。

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女子サッカー選手の平均年収が1万5,000ドル(約219万円)ということを考えると、今大会の選手への賞金はすべての選手、特にこれからの国やチームでプレーする選手にとっては大きなインパクトを与える。

ジャンニ・インファンティーノも今回の変更を発表する際、「過去に例を見ない、新たな分配モデルによって提供される賞金は、選手たちの人生、キャリアにとって重要な意味を持つものとなるでしょう」と語った。

ステージ 選手一人当たりの賞金額 
グループ・ステージ 3万ドル (約438万円)
ラウンド16 6万ドル (約876万円)
準決勝 9万ドル (約1,314万円)
4位チーム 16万5,000ドル (約2,409万円)
3位チーム 18万ドル (約2,628万円)
準優勝 19万5,000ドル (約2,847万円)
優勝 27万ドル (約3,942万円)

女子ワールドカップ2023の賞金を男子ワールドカップ2022と比較すると?

今大会での賞金額の増額が正しい一歩であることは間違いない。しかし、男子ワールドカップの参加国に支払われる賞金と比較すると、まだまだ雀の涙程度に過ぎないとも言える。

昨年のカタール大会でFIFAが提供した賞金総額は4億4,000万ドル(約642億4,000万円)、優勝したアルゼンチンは4,200万ドル(約61億3,200万円)を手にした。

FIFAは、男女間で報酬面の平等をもらすべく尽力するとしており、次の大会となる2027年のワールドカップでは男女の賞金額を同額にしたいと表明している。

インファンティーノはまた、特定の地域で女子ワールドカップの放映権料が劣っていることについて、放送局を非難もしている。

「FIFAはこの問題に取り組んでいるが、業界全体はそうではないようだ」とインファンティーノ。

「この点において、放送局、スポンサーはFIFA、連盟、加盟協会、すべての人々のために今以上に尽力すべきだ。男子ワールドカップと比較して、FIFAが女子ワールドカップで提示されているオファーは10倍から100倍は劣るものなのだから」

「放送局やスポンサーが男子ワールドカップと同等のオファーを考えられないのであれば、我々としては彼らに女子サッカー、女子ワールドカップを売ることはできないということだ」

スペイン代表とイングランド代表の間で女子ワールドカップ2023決勝が行われる前夜、インファンティーノは、この問題を前に進め、賞金の問題についてを「何をすべきか、何が必要ないのか、男性たちに理解させるのは」プレーする女子選手たち次第だと示唆した。

「男子サッカーに対しても、FIFAに対しても、扉は開かれている。あとはドアを押し開くだけだ」

「今回のワールドカップでは5億7,000万ドル(約832億2,000万円)以上の収益が生み出されており、収支は見合っている。赤字にはなっていないし、世界レベルで見ても男子ワールドカップに次いで二番目に大きな収入額となっている」

「私にも4人の娘がいるから言えるが、すべての女性に言いたいのは、あなたたちには変化をもたらす力があるということ。どうか正しい相手を選び、正しい戦いを挑んでください」

注:1ドル=146円換算

原文:Women's World Cup 2023 prize money breakdown: How much does each team and player make?
翻訳:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)