【コラム】元英国代表FWが語る三笘薫:史上最高の日本人選手になれる可能性(ジェイ・ボスロイド)

2023-02-04
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サッカー元イングランド代表フォワード(FW)で、Jリーグでもプレーしたジェイ・ボスロイド氏が、英プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCでまばゆいばかりの輝きを放つ日本代表・三笘薫について語る。


三笘薫はプレミアリーグ屈指のウィンガー

1月の欧州サッカー移籍市場で、ブライトンはモイセス・カイセドの流出を免れたが、次の夏の移籍市場では、もう一人のスター選手獲得に、大金が積まれることを覚悟したほうがいいだろう。

三笘薫は、現在のプレミアリーグで屈指のウィンガーだ。これはすごいことだ。これまで何人の日本人選手がプレミアリーグで成功を収めただろうか? 彼は史上最高の日本人選手になる可能性がある。いや、すでに、なっているかもしれない。

先週、FAカップのリヴァプール戦で三笘が決めたゴールは美しかった。しかし、あのプレーに驚くべきではない。

私はJリーグにいた頃から、川崎フロンターレで輝く三笘を絶賛していた。そのときの川崎は、2020年のJ1と天皇杯を制覇した。おそらく、日本サッカー史上最高のチームだ。

ワールドカップ以降、7試合に先発し4得点を挙げている、いまの三笘を見ると、川崎時代の彼を思い出す。彼は簡単そうに相手を抜いていく。頭もきれる選手だ。だからこそ、カタールW杯で出場時間が少なかったことを残念に思う。日本代表の森保一監督には彼なりの戦略があったわけだから、あまり非難したくはないが、そこには日本的な考え方があったように私には思える。

「いいか。ワールドカップは一世一代のチャンスなんだ。だから、いまのベストメンバーを選ばせてくれ」と言うのではなく、この舞台まで連れてきてくれた選手への強い忠誠心があった。たとえば、鎌田大地は出場すべきではなかったが、プレーの良し悪しにかかわらず、評判がいいという理由でスタメン入りしていた。出場するたびに違いを生み出していた浅野拓磨は、先発出場するべきだった。

三笘は素晴らしく、相手にとっては常に脅威となる。中に切れ込んで得点を決められるし、外に開いてプレーすれば、チャンスを演出できる。どこかのビッグクラブが彼と契約しても不思議ではない。トッテナムか、または、リヴァプールやマンチェスター・シティに行く可能性もある。それくらいの選手だ。ただリヴァプールは、いまは彼を見ることすら嫌かもしれない!

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もし三笘がマンチェスター・シティに加入したら…?

三笘は間違いなく、ラファエル・レオンやクヴィチャ・クワラツヘリアと同じくらいの実力を持っていると思う。近々、1億ポンド(約160億円。1ポンド=160円換算)以上の市場価値になるだろう選手たちだ。でも、残念ながら、ヨーロッパや他の伝統的なサッカー大国出身ではなく、日本人だからという理由で、三笘は彼らほどの評価は受けないだろう。

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もし三笘がマンチェスター・シティに加入したら、どうなるだろう? ブライトンのスタイルはシティのものと似ているところがある。ただ、シティのほうが実力の高い選手が多いというだけだ。もし、いまのシティで、左ウィングにジャック・グリーリッシュと三笘のどちらを使うかと聞かれれば、私なら三笘を選ぶだろう。

グリーリッシュの能力が低いと言いたいわけではなく、三笘のほうがシティに合っていると思うのだ。必要とされる献身性を持っている。川崎では、そのようなプレーをしていた。個人よりもチームが優先される、日本的なスタイルだ。一方のグリーリッシュがアストン・ヴィラで成功したのは、ピッチ上を自由に駆け回ってボールを受けることができたからだ。

グリーリッシュ本人も、(シティの)決まったシステムの中でプレーすることに慣れるまで苦労したと語っている。三笘はそのような環境でのプレーにもともと慣れていた上に、(ブライトンで)さらに成長した。

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三笘の存在が日本サッカーにとって大きな転機に

三笘のような存在は、日本の古い慣習を打ち破ってくれるだろう。レアル・ソシエダの久保建英にも同じことが言える。

日本の文化では、「傲慢」(arrogance)という言葉は、常に悪く捉えられるが、サッカーで成功するには、ピッチ上での、「いい意味での傲慢さ」が必要だ。ピッチ外で礼儀と敬意を忘れないことは、どの文化においても欠かせないが、ピッチに立ったら多少の傲慢さが求められる。

共にプレーした川辺駿や三好康児など、日本には、ほかにもヨーロッパで活躍できる能力のある選手たちがいた。でも、当時の日本には、選手が1対1のコーチングを受けられる環境がなかったので、私が助言をした。いまは改善されてきているが、まだ先は長いだろう。

元チームメイトの中で、ヨーロッパに行った選手たちには、「海外に行って成功しろ。そして、日本に帰ってきたら他の選手たちにマインドセット(考え方)を教えろ」と伝えていた。帰国して日本サッカーに恩返しをしてほしい。もっと、そういう選手が増えてほしい。

三笘にとっては、この恩返しが遠い未来になることを願う。いま、三笘は最上級のリーグで最高の選手になる実力があることを示している。これは日本サッカーにとって、大きな転機になり得るだろう。

翻訳:早坂卓真


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