サッカー元イングランド代表のフォワード(FW)で、Jリーグのジュビロ磐田と北海道コンサドーレ札幌でもプレーしたジェイ・ボスロイド氏が、プレミアリーグの注目の一戦について『スポーティングニュース』に独占コラムを寄稿した。日本時間4月27日早朝に行われる首位争い、マンチェスター・シティ対アーセナルの大一番について展望する。
アーセナルにとって必勝の一戦
エティハド・スタジアムで行われる水曜日(日本時間4月27日木曜日午前4時)の試合は、これ以上ないほど重要だ。ここ数週間、不調が続くアーセナルにとって、これは絶対に勝たなければいけない一戦だ。
この3試合、リヴァプール戦とウェストハム戦では、2-0から追いつかれて引き分け、プレミアリーグ最下位のサウサンプトンにも一時は1-3でリードされていた(訳注:結果は引き分け)。これではダメだ。
今季のアーセナルは素晴らしいシーズンを送っているが、昨年、好順位にいたのに、シーズン終盤にうまくいかなくなり、トッテナムにチャンピオンズリーグ出場権を奪われたことが思い出される。
彼らは大きな進歩を遂げたが、未熟さが残っている。プレミアリーグで最も若いチームのひとつだという事実は変わらないのだ。リーグで最も若いチームのひとつが、トロフィーを獲得することは、ほとんど起こらない。
経験豊富な選手と若い選手が調度いい具合に混在しているのが理想だ。アーセナルにはそれがない。彼らは、現在のような厳しい状況に置かれたことがない。一方のマンチェスター・シティは、大将といえる選手が数人いる。
ゴールキーパーのエデルソンは、いまのような状況を経験している。ルベン・ディアスはチャンピオンズリーグで活躍し、ポルトガル代表としても大舞台に立ったことがある。カイル・ウォーカーもフル代表で多くの試合に出場している。ケビン・デ・ブルイネはリーグ優勝経験者だし、ベルナルド・シルバも......。数え上げたらきりがない。さらに、アーリング・ハーランド、フィル・フォーデン、イルカイ・ギュンドアンなどがいて、若さと経験が見事に融合している。
サリバの離脱は言い訳にならない
ウィリアム・サリバの負傷は、最悪のタイミングでの出来事だが、それをすべての言い訳にすることはできない。
今季のアーセナルは幸運だった。彼らの先発メンバーはほとんど変わっていない。深刻な負傷をしたのは、長期離脱していたガブリエル・ジェズスと、レギュラーメンバーではない冨安健洋だけだった。
アーセナルが今このような状況にあるというのが、サリバが離脱したからだというのは如何なものだろうか。ジェズスが離脱したときはチームが好調だったので、誰も彼の負傷を言い訳にしなかった。マン・シティが、じりじりと差を詰めて来ているという重圧こそが、アーセナルの不調の原因だろう。
ペップ・グアルディオラ率いるマン・シティは、今季は調子を上げられていなかったが、適切なタイミングでギアを上げた。チームはいま、変革の時期にあるが、それでも結果を出し続け、上位に立ち続けられている。勝てないように見える試合でも、フリーキックやPKを獲得し、1-0で勝ち点3を死守するのだ。
ハーランドは史上最高のゴールスコアラーの一人
ハーランドは明らかにシティが勝ち続けられる大きな要因だ。彼のパフォーマンスは安定している。1月と2月に成績が少し落ちたのは、周りの選手が調子を崩したからだ。デ・ブルイネも、ワールドカップから戻ってきたときは調子が悪かった。でも、現在はまた調子を取り戻し、ハーランドも得点を挙げている。
私が彼に最も感心するのは、90分間ボールに触れなくても平気なことだ。そして、ペナルティエリアにボールが入ってきたら、ワンタッチでゴールする。
ハリー・ケインもリーグ24得点を挙げ、素晴らしいシーズンを送っている。ハーランドがいなければ、話題の中心になっていただろう。
ハーランドよりも多くのプレーに関与するケインの方が、全体的には優れたサッカー選手だと思う。ハーランドは足元の技術がそれほど高くないし、ファーストタッチも上手くはないが、素晴らしい動きと絶対的な決定力を持っている。
私にとっては、ハリー・ケインは間違いなくプレミアリーグ最高のストライカーであり、オールラウンドなプレーができるので、世界でもトップ2の一人だと思う。だが、私の発言でハーランドの記録が変わるわけではない。
ハーランドは信じられないようなシーズンを送っている。彼は最も偉大なゴールスコアラーだ。彼は史上最高のゴールスコアラーの一人として名を残すことができるだろう。
アーセナルは、彼へのパスを断ち切ることで、この男を止めなければならない。これは大舞台で課された大仕事だ。これ以上ないくらいに大きな仕事だ。
翻訳:早坂卓真