フランスの専門誌『フランス・フットボール』が世界最高の選手を表彰するバロンドールは、サッカー界で最も権威のある個人賞として毎年大きな注目を集める。
そのプロセスは決して平穏なものではなく、しばしば争いの種となることもあるが、それでも世界中のジャーナリストや専門家らの投票によって選ばれるこの賞は、受賞者に計り知れないほど大きな名誉を与えるものだ。
近年独占し続けてきた2人のレジェンドによって、この賞の威信はますます高まった。2008年以降の15年間において、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウド以外でバロンドールを受賞したのはたったの2人だけとなっている。
だがメッシとロナウドはついにサッカーの世界最高峰であるヨーロッパを離れたため、彼らが今年も選ばれるとは考えにくい。2024年の受賞者は、次世代を担う偉大な選手として大きく前進することだろう。さらに、サッカー界の象徴ともいえるその2人が選択肢から消えたことで、次の受賞レースはかなり激しいものとなる。
ここでは、スポーティングニュースが今年の有力候補や歴代の最多受賞者をまとめる。
2024年は誰の手に? バロンドール有力候補
以下は、2024年のバロンドールに向けた男子の有力候補選手たちである。
ビニシウス・ジュニオール - FW、レアル・マドリード
レアル・マドリードのスターであるビニシウス・ジュニオールは、ここ数年でその名を世界に轟かせ、シーズンを重ねるごとに輝きを増してきた。このブラジル人はスペインで何度も人種差別に苦しめられたにもかかわらず、大舞台での活躍を続けている。
レアル・マドリードの強力な陣営の中でゴールやアシストなどをめぐる競争は激しいものの、ビニシウスはヨーロッパで最も成功を収めたクラブにおける不動の攻撃リーダーであることに変わりはない。今年のチャンピオンズリーグ決勝でも持ち前の決定力を見せつけ、自身の今シーズン24点目を記録してボルシア・ドルトムントを突き放した。ちなみに、彼は2年前の決勝でもリバプール相手にその試合唯一の得点を挙げている。
だが、ビニシウスは代表でもその実力を証明する必要があるだろう。24歳の彼はブラジル代表として34試合に出場しているが、その中で挙げたゴールはたったの5と貢献度は低く、コパ・アメリカでも準々決勝で姿を消した。いまだバロンドールの有力候補であることに違いはないが、今夏の不本意な大会が彼のチャンスを狭めたかもしれない。
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ジュード・べリンガム - MF、レアル・マドリード
ジュード・べリンガムは、まだ本当の意味でレアル・マドリードを自分のものにしていない。しかしイングランド出身の20歳は、クリスティアーノ・ロナウド以来、スペインの首都マドリードでプレーしたどの選手の1年目よりも多くのことを成し遂げた。また彼は、マドリードでの最初のシーズンでチャンピオンズリーグを制覇するという、ロナウドでもできなかった偉業を達成している。
べリンガムはこの世代随一の才能の持ち主で、カルロ・アンチェロッティが10番のポジションとして獲得するまで、ドルトムントで重要な役割を担っていた。彼の卓越した技術が6番や8番のポジションで起用されていた当時はばかばかしく思えたかもしれない。しかし正規のポジションを確保した結果、今シーズンは全大会を合わせて23ゴール13アシストを記録し、その実力を証明している。
また、べリンガムは今夏のユーロでも母国のため大活躍を収め、ラウンド16のスロバキア戦では後半アディショナルタイムにオーバーヘッドを決めチームを救った。もし彼が受賞することになれば、史上2番目に若い受賞者となる。
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キリアン・エムバペ - FW、パリ・サンジェルマン(レアル・マドリード)
現時点で世界最高の選手として多くの人々から認識されるエムバペは、今後数年間においてバロンドール投票のたびに世論の支持を受けるだろう。だが彼にとって非常に残念なことに、PSGでのキャリアは静かな終わりを迎え、他の選手たちに遅れをとっている。PSGがチャンピオンズリーグでドルトムントに敗れた際、彼はジェイドン・サンチョやウスマン・デンベレの陰に隠れその存在感は消えていた。
エムバペは実際、2024年に入ってからずっと不調続きである。クラブで今シーズン挙げた44ゴールのうち23ゴールは今年1月以降のものだが、重要な試合で決めたものはほとんどない。例えば、彼はクープ・ドゥ・フランスで8ゴールを挙げたが、2-1でリヨンを下した決勝戦では不発に終わった。さらに、リーグ・アンではモンペリエ相手にハットトリック、ロリアン相手に2点を奪うも、リール戦やリヨン戦ではベンチスタートとなり、モナコ、スタッド・ランス、ブレストらを相手に得点を挙げることはできなかった。それに加え、チャンピオンズリーグで見られた複数の欠場も彼の不調に影響したことだろう。
エムバペが2024年のバロンドールを獲得するためには、今夏のユーロで質の高いプレーを見せる必要があったが、彼の活躍は見られずフランスは準決勝で姿を消した。
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ハリー・ケイン - FW、バイエルン・ミュンヘン
今シーズンの欧州主要サッカーリーグの中で、ハリー・ケインほどゴールを挙げた者はいない。彼はドイツ初挑戦となる1年目で、バイエルン・ミュンヘンにおいて45試合を通して44ゴールと驚くべき数字を叩き出した。ただ残念なのは、エムバペと同じように、バロンドール受賞に近づけるような大舞台でのゴールはほとんどなかったことだ。
さらに、バイエルンは今シーズン1つもタイトルを勝ち取れなかっため、ケインの呪いという不吉なイメージがよりしみついてしまった。重要な試合での得点と言えば、最終的にブンデスリーガ王者となったレバークーゼンに対して挙げた1点だけで、チャンピオンズリーグ準決勝のレアル・マドリード戦では、今シーズン9つのうちの1つであるPKによって得点を記録した。
ケインはこれまでのキャリアにわたって数多くのゴールを提供しており、全体的なパフォーマンスは悪かったものの、今夏のユーロでも得点ランキング1位に輝いている。しかしその過程でべリンガムを凌ぐほどの活躍は見られなかったため、彼にとってバロンドールの獲得は至難の業となるだろう。
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フロリアン・ヴィルツ - MF、レバークーゼン
ドイツ国内において最もいいシーズンを過ごしたのは、レバークーゼンの中心選手としてクラブを歴史的な無敗優勝に導いたフロリアン・ヴィルツだろう。シャビ・アロンソの魔法によって、レバークーゼンは幾度となく逆境を乗り越え、国内2冠を達成した。
21歳のヴィルツは前十字靭帯断裂からの復帰後初シーズンであったが、それを感じさせないほど素晴らしいプレーを見せた。ピッチを自由に動き回る10番の役割を任された彼は、18ゴール20アシストとシーズンを通して高いレベルを維持。そしてホームのドイツで開催されたユーロ2024では、代表の攻撃の中心的存在となった。
だが彼にとって不幸なことに、バロンドール獲得に向けて2つの事実が不利に働いている。1つは、今シーズンの躍進でその人気を高めたとはいえ、レバークーゼンがバロンドールに必要な注目を集めるのに十分なほど有名ではないことだ。そしてもう1つは、ヨーロッパリーグ決勝での敗戦、アタランタがレバークーゼンの攻撃陣を完全に封じ込め、無敗の3冠達成を阻んだことである。これは彼にとって大きな傷となった。
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フィル・フォーデン - MF/FW、マンチェスター・シティ
フォーデンはマンチェスター・シティの史上初となるプレミアリーグ4連覇に貢献し、ヴィルツと同様に、クラブの偉業達成において重要な役割を果たした。彼は全大会を通して27ゴールと12のアシストを記録し、FWA(イングランドサッカー記者協会)年間最優秀選手賞を受賞している。
だが、これもヴィルツと同様に、彼にはいくつかの不利に働く事実がある。まず1つは、マンチェスター・シティはそれにふさわしい支配力を見せつけプレミアリーグを制覇したものの、チャンピオンズリーグと2つの国内カップ戦(カラバオカップ、FAカップ)での敗退は、昨シーズン達成した3冠を考慮すればある意味で失望だった。今シーズンと昨シーズンのチームを比較するのは公平ではないが、残念ながらそれが評価基準でもある。
そして2つ目は、同じチーム内に熾烈な競争を繰り広げるスター選手が揃っていることだ。アーリング・ハーランドは、彼の基準からすれば物足りない1年だったものの、それでもプレミアリーグの得点王としてゴールデンブーツ賞を獲得した。そしてロドリやケビン・デ・ブルイネらも、ピッチに立つたびにその輝きを見せ、記事の見出しを独占し続けている。フォーデンはマンチェスター・シティのより中心的な存在になる必要があるだろう。
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リオネル・メッシ - FW、インテル・マイアミ
これまでの歴史上、リオネル・メッシほどバロンドールを受賞した者はいない。36歳のアルゼンチン人はこれまで8度の受賞を誇り、直近の受賞は昨年で、1956年に41歳で受賞したスタンリー・マシューズに次ぐ2番目の年長記録となった。
現在MLS(メジャーリーグサッカー)のインテル・マイアミでプレーするメッシは、そこでも圧倒的な存在感を発揮しており、体力的な問題から多くの休みを取りながらも、ゴールとアシストではリーグトップで争っている。
だが、彼が9度目を受賞することはないだろう。ヨーロッパの選手のみに限定されていたバロンドールは2007年、世界中のどのクラブのどの選手でも対象となるよう拡大された。それでもMLSはヨーロッパのリーグに比べて明らかに格下で、彼はアルゼンチンをコパ・アメリカ優勝に導いたとはいえ、この賞を受賞するには十分といえない。
厳密には、メッシは昨年ヨーロッパ外でプレーする選手としてバロンドールを獲得した初の選手になったが、彼に対する投票の原因となった功績は、インテル・マイアミと契約する前のものであった。もし誰かがヨーロッパ外でプレーしながらこの賞を獲得できるとしたら、それはメッシであっただろうが、この段階ではもう手が届かないように感じられる。
スポーティングニュースの予想|バロンドール2024
この賞は、クラブでのパフォーマンスよりも、代表でのパフォーマンスに重きが置かれる傾向がある。よって、今夏に開催されたユーロとコパ・アメリカは、今年のバロンドールに大きな影響をもたらすだろう。
ビニシウスのコパ・アメリカでの失敗は彼の評判を大幅に下げ、メッシも優勝したとはいえかつてほどの輝きは見られなかったため、この2人が受賞する可能性は低い。
ユーロでは、イングランドが決勝まで駒を進めたが、ジュード・べリンガムとハリー・ケイン、どちらがよりインパクトを残したかについては議論の余地が残る。
結局のところ、代表での優勝は叶わなかったものの、クラブで大活躍を見せたべリンガムが最有力候補であるといえるだろう。
スポーティングニュースの予想
2024年のバロンドール受賞者:ジュード・べリンガム
2024年のバロンドール授賞式はいつ?
2024年のバロンドール授賞式は、フランス・パリのシャトレ劇場にて、10月28日(月)に行われる。
式は現地時間午後8時に開始予定だ。
バロンドールの歴代最多受賞者は?
以下は、バロンドールを2度以上受賞した選手たちをまとめた表である。
この賞はもともとヨーロッパ出身の選手のみに限られていたが、1995年にヨーロッパでプレーする選手まで対象が拡大。そして2007年以降、世界中のどのリーグ、どの選手でも対象となる現在の形となった。
選手 | 国籍 | 受賞回数 | 受賞年 |
リオネル・メッシ | アルゼンチン | 8 | 2009, '10, '11, '12, '15, '19, '21, '23 |
クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル | 5 | 2008, '13, '14, '16, '17 |
ミシェル・プラティニ | フランス | 3 | 1983, '84, '85 |
ヨハン・クライフ | オランダ | 3 | 1971, '73, '74 |
マルコ・ファン・バステン | オランダ | 3 | 1988, '89, '92 |
フランツ・ベッケンバウアー | ドイツ | 2 | 1972, '76 |
アルフレッド・ディ・ステファノ | スペイン | 2 | 1957, '59 |
ケビン・キーガン | イングランド | 2 | 1978, '79 |
ロナウド・ナザリオ | ブラジル | 2 | 1997, '02 |
カール・ハインツ・ルンメニゲ | ドイツ | 2 | 1989, '81 |
原文:Who will win 2024 Ballon d'Or? Predictions, favorites as Vinicius, Bellingham top list of men's candidates for award
翻訳:山下晴輝(スポーティングニュース日本版)