2022年FIFAワールドカップ・カタールの序盤戦でサウジアラビアがアルゼンチンを相手に番狂わせを演じた。これは、世界の舞台で小国が大きな衝撃を与えた最も新しく、そして最も素晴らしい例のひとつだ。
ワールドカップの歴史は、ダビドがゴリアテに勝利したような忘れられない番狂わせ、劇的な逆転勝利、王者の恥ずべき敗北に満ちている。数々の夢が生まれ、そして打ち砕かれてきた。
ロシアで開催された2018年ワールドカップでは、クロアチアが決勝進出を果たし、王者ドイツがグループステージであえなく敗退したことが記憶に新しい。
中東のホスト国が初出場を果たした2022年のカタール・ワールドカップでも、衝撃が起きる可能性はある。現アフリカ王者のセネガルが、同大陸史上初のワールドカップ優勝を果たすかもしれない。
『スポーティングニュース』は、過去最大級の番狂わせ、そして2022年カタール大会で番狂わせを起こす可能性があるチームを紹介する。
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W杯史に残る番狂わせトップ10
10位:韓国 2-1 イタリア(2002年) - ホスト国がアッズーリに衝撃
1986年から1998年まで4大会連続で勝利をあげることなくグループステージ敗退に終わっていたにもかかわらず、韓国はホスト国を務めた2002年大会で番狂わせを予感させるほど自信に満ちていた。
熱狂的な地元の応援に後押しされ、フース・ヒディンク監督率いるチームは、ポーランドとポルトガルを相手に見事な勝利を収め、グループステージを首位通過する。
だが、韓国の力が特に試されると思われたのが、ラウンドオブ16でのイタリアとの大一番だ。そして、ヒディンクのチームは、イタリアの激しいプレッシャーの中で生き残った。
1-0と先制したイタリアが苦しみ、試合に踏みとどまったホスト国は、ソル・ギヒョンの同点弾で延長戦に持ち込むと、アン・ジョンファンのゴールデンゴールで勝利を収めた。
韓国の衝撃的な勝利は大きく称賛されたが、大会後は続く準々決勝スペイン戦での勝利における不正疑惑が話題を占めることになった。
9位:ブルガリア 2-1 ドイツ(1994年) - ニュージャージーで興奮のストイチコフ
ベルリンの壁崩壊後、統一国家として初めてワールドカップに出場した1994年アメリカ大会で、王者ドイツは王座防衛を目指していた。
ベルティ・フォクツ監督率いるチームは、大会に向け、ローター・マテウスやユルゲン・クリンスマン、マティアス・ザマーといった経験豊富なタレントたちをそろえていた。
ベスト8まで順調に勝ち進んだ王者だったが、ブルガリアとの準々決勝で不意を突かれることになる。絶好調だったのが、ブルガリアの名手フリスト・ストイチコフだった。
バルセロナの主力だったストイチコフは、決勝トーナメントに至るまでもアルゼンチンを撃破していたが、最高のパフォーマンスを披露したのはドイツ戦だ。
ドイツは残り15分から屈し、ブルガリアはストイチコフの素晴らしいフリーキックで1-1の同点に追いつくと、さらにヨルダン・レチコフのヘディングシュートで逆転し、ベスト4に駒を進めた。
8位:スイス 1-0 スペイン(2010年) - スペインの南アフリカの栄光は衝撃の黒星発進から
2008年のEUROを制していたラ・ロハ(スペイン)は、南アフリカ大会で優勝候補の一角だった。だが、ビセンテ・デル・ボスケ監督率いるチームは、ダーバンでの初戦で苦戦を余儀なくされる。
珍しくまとまりを欠いたスペインは、ジェルソン・フェルナンデスの先制点を許すと、シンプルにその後も反撃できなかった。
最終的に、この黒星がスペインを失敗に追いやることはなかった。だが、デル・ボスケ監督が選手たちを再び集中させるうえでインパクトを与えたことは明白だ。そしてスペインはアンドレス・イニエスタの決勝点で初の世界タイトルを手にすることとなる。
7位:北朝鮮 1-0 イタリア(1966年) - アジアサッカーの新境地を切りひらいた北朝鮮
北朝鮮のサッカーの歴史で最も有名なのは、パク・ドゥイクだ。同国代表チームの歴史で最も素晴らしい瞬間をもたらしたのである。
当時優勝2回のイタリアは、イングランド大会で難なくグループステージを突破すると思われていた。だが、パク・ドゥイクの決勝点で初出場の北朝鮮が決勝トーナメントに進出。イタリアはグループステージ敗退に終わった。
6位:アメリカ 1-0 イングランド(1950年) - イングランドのW杯初黒星
1950年のブラジル大会でワールドカップ初出場を果たしたばかりのイングランドだったが、それまでで最大の番狂わせとなるかもしれない。相手はパートタイム選手ばかりのアメリカだったのだ。
ジョー・ゲイジャンズのゴールで、アメリカは1-0で勝利した。ビル・ジェフリー監督率いるアメリカによる大番狂わせは、『The Game of Their Lives』という本・映画で何十年と語り継がれている。
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5位:アイルランド 1-0 イタリア(1994年) - アメリカで笑顔を取り戻したアイルランド
1990年イタリア大会でベスト8に進出し、世界のサッカー界で有名になったアイルランドだが、彼らはホスト国に敗れたことがずっと頭に引っかかっていた。
そして猛暑のニュージャージーでイタリアと再び対戦することになり、ジャック・チャールトンはリベンジを心に誓っていた。
レイ・ホートンによる思いがけない一発で、アイルランドは序盤に先制。イタリアはアイルランドゴールに襲いかかったが、ポール・マグラーの壁に何度となくはね返された。
4位:イタリア 3-2 ブラジル(1982年)- カンプ・ノウのロッシ
1982年スペイン大会に臨んだブラジルは、12年ぶりのワールドカップ優勝を遂げる運命と思われていた。
ソクラテスとジーコがインスピレーションとなっていたテレ・サンターナ監督のチームは、開幕から4試合で全勝していたにもかかわらず、2次リーグでイタリアに敗退させられた。
ワールドカップの歴史でも有数の素晴らしい個のパフォーマンスを披露したのが、パオロ・ロッシだ。ハットトリックでブラジルを敗退に追いやり、イタリアを優勝の栄光へと導いた。
3位:アルゼンチン 1-2 サウジアラビア(2022年) - メッシの連続無敗が36試合で途切れる
バロンドール受賞7回の主将リオネル・メッシを擁し、直近のコパ・アメリカで優勝したアルゼンチンは、大方の予想で優勝候補にあげられながらカタール入りした。
FIFAランキングが自分たちより48位も下のサウジアラビアを相手に、リオネル・スカローニ監督のチームは理想的なスタートを切る。開始10分、メッシがPKを決めた。
あまり危険な兆候がなかったが、アルゼンチンは48分にサレフ・アル=シェハリの同点弾を許すと、衝撃はその5分後。サレム・アル=ダウサリの強烈な一発がサウジアラビアを熱狂させた。
スカローニ監督の選手たちは敗北を回避できず、イタリアの37試合連続無敗という記録に並ぶことができなかった。彼らは、続くメキシコ戦で記録を更新することも期待されていたのだ。だが、毅然としたサウジアラビアはリードを保つのにふさわしく、史上有数の記憶に残る結果を残した。アメリカのブックメーカー『BetMGM』によれば、史上最大の番狂わせだ。
2位:カメルーン 1-0 アルゼンチン(1990年) - ミラノで呆然の王者
王者アルゼンチンは12年で3度目となるタイトル、そしてワールドカップ史上3チーム目となる連覇を目指し、1990年イタリア大会を迎えた。
ディエゴ・マラドーナ率いるアルゼンチンは、決勝で西ドイツに敗れることになったが、開幕戦で大きな衝撃に見舞われている。
低調に終わった1982年のワールドカップデビューのリベンジを目指したカメルーンが、終盤のフランソワ・オマン=ビイクの決勝点で、不調のアルゼンチンにミラノで不意打ちを食らわせたのだ。
ヴァレリー・ニポムニシ監督のチームは、最終的に準々決勝でイングランドに敗れたが、ワールドカップにおけるアフリカ勢の新境地を切りひらいた。
1位:セネガル 1-0 フランス(2002年) - 王者レ・ブルーがあ然
ロジェ・ルメール監督率いるフランスは、日本と韓国が共催した2002年大会を前に、王者の呪いに苦しむこととなった。大会に向かう中で小さな騒動がつきまとい、ティエリ・アネリやパトリック・ヴィエラといったタレントたちを擁しながら、ジネディーヌ・ジダン不在の開幕戦で苦戦を強いられた。
セネガルはそれを十分に生かし、パパ・ブバ・ディオプの歴史的な決勝点で勝利した。
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FIFAワールドカップにおける最大の衝撃
年 | 試合結果 | ラウンド | ハイライト |
2002 | セネガル 1-0 フランス | GS | https://www.youtube.com/watch?v=NZ7Cdw-zO0M&t=18s |
1990 | カメルーン 1-0 アルゼンチン | GS | https://www.youtube.com/watch?v=C6uIUg9ovP0 |
1982 | イタリア 3-2 ブラジル | 2次リーグ | https://www.youtube.com/watch?v=yBC02hKBTlQ&t=1s |
1994 | アイルランド 1-0 イタリア | GS | https://www.youtube.com/watch?v=sLKf6spsD-w |
1950 | アメリカ 1-0 イングランド | GS | https://www.youtube.com/watch?v=U4ESTvxyqsI |
1966 | 北朝鮮 1-0 イタリア | GS | https://www.youtube.com/watch?v=-S5BYnzocO0&t=80s |
2010 | スイス 1-0 スペイン | GS | https://www.youtube.com/watch?v=RxiBdX5F2I8 |
1994 | ブルガリア 2-1 ドイツ | 準々決勝 | - |
2002 | 韓国 2-1 イタリア | ラウンド16 | https://www.youtube.com/watch?v=Ym4fLNvcbX0 |
2022 | アルゼンチン 1-2 サウジアラビア | GS | - |
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2022年ワールドカップにおける番狂わせの可能性
サウジアラビアが証明したように、小国が優位に立つうえで重要になり得るのが、大会の序盤戦である。それらの試合では、有力チームがしばしば自己満足に陥ることが特徴的だ。
オーストラリアとコスタリカはそれぞれ、スロースタートで悪名高いフランス、スペイン相手の番狂わせを狙うだろう。
カナダもプレッシャーにさらされるベルギーに衝撃を与える候補になり得る。開幕戦でガーナがクリスティアーノ・ロナウドのポルトガルと対戦するグループHは特にどうなるか分からない。
2022年ワールドカップで番狂わせを起こす可能性のあるチーム
国 | FIFAランキング |
カタール | 48 |
オーストラリア | 39 |
コスタリカ | 34 |
カナダ | 43 |
ガーナ | 50 |
サウジアラビア | 51 |
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