里崎智也が語るプロ野球オールスターゲーム「一番気を使うのがキャッチャー」

2023-07-05
読了時間 約2分
(Takuma Hayasaka)

今年もプロ野球では球界を代表するスター選手が一同に介するオールスターゲーム(『マイナビオールスターゲーム2023』。以下、オールスター)が開催される。現役時代に7度の出場経験がある里崎智也氏に、オールスターに関する素朴な疑問をぶつけ、実情を語ってもらった。

そんなヤワい選手が一軍で活躍できるわけない

オールスターは選ばれし者だけが参加できる場である一方、出場することで選手の負担になるのではないか、と思うのがファンの心情だ。出てほしい反面、休んで前半戦の疲労を回復してほしい、そんな相反する気持ちを持つファンも少なくないだろう。里崎氏は現役時代、オールスターに出場することについてどのように考えていたのだろうか。

「(オールスターに参加しても)疲労なんて溜まりません(笑)。チームに残っても練習はしますし、逆にオールスターへ行くほうが練習しないから楽なんですよ。下手したら(その前後の日程次第では)移動もないし、言うほどしんどくないです。そんなヤワい選手が一軍で活躍できるわけないじゃないですか(笑)」

オールスターに出ない選手は試合がなくてもチームで練習がある。言われてみれば納得の答えが返ってきた。オールスターへの参加が選手の負担になるのではないかというファンの不安は、どうやら無用のようだ。

肩書きになるのでオールスター出場は大事

オールスターに選ばれることについてはどうだろうか。里崎氏は「大事です」と力説する。

「オールスター(に選ばれるに)は前半戦が勝負。それで人気(が必要という面)もあります。実力が正当に評価されるかは別問題ですが、実際にオールスターが近づいてくると、『何回出ました?』といった話になります。出場することがステータスなんです。自分の肩書きになるのでオールスター出場は大事ですよ。取れるものは取っとかないと自分のステータスが上がっていかないですから」

ファン投票の順位に関しては、里崎氏自身はさほど気にしていなかったようで、成績を残していればオールスターに出ることはできると考えていたという。

「ファン投票で1位になればいいですけど、圧倒的な成績を出していれば出られるのは出られます。人が選ぶので万が一はありますし、ファン投票1位のほうが支持があるので嬉しいですけど、結果さえ出していれば出られるには出られるので」

オールスターゲームの雰囲気は?

オールスターは他球団の選手とのシーズン中の数少ない交流の場でもある。中継では選手同士が談笑している風景もよく見られる。実際の雰囲気はどうなのだろうか。

「お祭りみたいなもので、誰もピリピリしていません。(里崎氏の場合)代表とかで一緒にやっていて知ってる人がいっぱいいます。毎年のことだから慣れてきますよね」

とは言うものの、最初の頃はやはり緊張するようだ。

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「でも一番最初はどこに座っていいか迷いますね。若くて初めての出場のときに同じチームから野手1人、投手1人とかだとドキドキするかもわからないですね。段取りがわからないから」

オールスターのベンチでは、仲の良い選手たちが喋っている姿も見られるが、試合中の座席位置はどのように決まっているのだろうか。

「先に座った人が好きなところに座ります。若い選手はいきなり真ん中には座れない。(常連やキャリアが上の人)みんなが座ったあとに空いているところに座るんです」

実に単純明快。実力とキャリアがものをいう世界であることがよくわかるエピソードだ。

オールスターゲームは『お祭り』『球宴』とも称される。試合を見ていても公式戦の緊張感とは明らかに選手たちの雰囲気が違う。勝敗にこだわるというよりは、より楽しんでいるように映る。里崎氏自身、オールスター戦における勝ちへの気持ちはあったのだろうか。

「まったくないです(笑)。自分が活躍すればいいだけです。活躍したら賞金がもらえるじゃないですか。勝たないとMVPはもらえないから、自分が活躍したときは勝たないとなって思っていました。勝っても(個人賞を取らなければ)何もないんで(笑)」

打たれだしたらさすがに気を使います

一方で、他球団の投手とバッテリーを組むことについては、キャッチャーとしてかなり気を使っていたという。特に、組んだ投手の監督がベンチにいる場合などは配球や球数にも神経を使うようだ。

「打者3人で終わればいいですけど、打たれだしたらさすがに気を使いますね。(組んだ投手の)監督がいたら『何球投げてんだよ…』みたいになるんで(笑)。そうなったら『もうちょっと変化球投げさそうかな』とか、気を使います。オールスターでキャッチャーは一番気を使いますよ」

今年のオールスターは7月19日(水)と20日(木)に行われる。一見和やかな雰囲気の中、人知れず誰よりも気を使っているキャッチャーたちの表情や動きに注目して見るのも面白いかもしれない。


里崎智也(さとざき ともや)プロフィール

鳴門工業高校、帝京大学を経て1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団し、2014年までNPBで16シーズンを過ごした元捕手。現在は野球解説者、評論家、YouTuberとして活躍。2005年と2010年に日本一を経験したほか、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では日本代表(現侍ジャパン)の正捕手として世界一に貢献。2008年には北京オリンピックにも出場した。NPBでの主な通算成績は、1089試合出場、打率.256、890安打、108本塁打、ベストナインとゴールデングラブ賞各2回(いずれも2006、2007年)。徳島県鳴門市出身、1976年5月20日生まれ。

▼オールスターゲーム通算成績

  • 出場:7回(2005年〜2007年、2009年〜2012年。すべて千葉ロッテ所属)
  • 表彰:優秀選手賞(2006年第1戦)、ベストバッター賞(2010年第2戦)
  • 成績:12試合、打率.238(21打数5安打)、2本塁打、5打点

取材・編集:勝田聡、丹治宣登(スポーティングニュース日本版)、及川卓磨(スポーティングニュース日本版)
撮影:早坂卓真
協力:林龍也
統括:舛田勇介(スポーティングニュース日本版)