33歳の元NFL選手が死後、治療法のない慢性外傷性脳症と診断されていたことを両親が告発:「息子は自分自身も感じられなくなっていました」

2022-07-07
読了時間 約1分

元デンバー・ブロンコスのワイドレシーバー、デマリウス・トーマスは死亡したときに『慢性外傷性脳症(Chronic Traumatic Encephalopathy; CTE)』に苦しんでいたことを、トーマスの両親が7月5日放送の人気テレビ報道番組『グッド・モーニング・アメリカ』で明らかにした。

33歳のトーマスは、昨年12月に自宅のシャワー室で意識不明になっていたところを発見された。両親によると、トーマスは心停止につながる発作のあとで死亡した。ボストン大学の神経病理学部長を務めるアン・マッキー博士は、トーマスの発作はフィールド外で起きた頭部の負傷が引き起こしたもので、それには交通事故と石の階段で転倒したことが含まれると述べた。

「息子に起きたようなことを、彼ら(警察関係者)はすぐに心停止って呼びたがるのです」とトーマスの父であるボビー・トーマスさんは『グッド・モーニング・アメリカ』のインタビューで言った。

トーマスの家族は死後の脳をボストン大学に献体した。研究者らはトーマスがステージ2(訳者注:4段階のうち、2番目に軽い症状)の慢性外傷性脳症を患っていたことを発見した。

トーマスの脳を調べたマッキー博士は「他の多くの34歳以下の選手たちに起きたことがトーマス氏にも起きていました。前頭葉と側頭葉に複数の障害が認められ、脳のより深い部分にも異変が生じ始めています。 トーマス氏は慢性外傷性脳症と診断されました。 ステージ2です」と述べた。

人格変化、抑うつ、記憶障害などを引き起こす慢性外傷性脳症

慢性外傷性脳症は、頭部への反復した衝撃と密接に関係がある変性脳疾患である。この疾患はとくにアメフト選手に多い。2019年の米紙『The New York Times』による特集では、315人を越える元NFL選手たちが死後に慢性外傷性脳症と診断されたということだ。

慢性外傷性脳症は直接の死因にはならない。しかし、この疾患は人格変化、抑うつ状態、そして記憶障害などの症状を引き起こすことがあるとマッキー博士は言った。

トーマスの両親は、元々は陽気な性格だった彼らの息子が死に至るまでの数年は妄想と孤独にさいなまれていた、と言った。

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「デマリウスは気分が変わりやすくなって、ときには閉じこもってしまうこともありました。『ママ、僕の体がどうしてしまったか分からないよ。何とか自分を取り戻さないと。もう自分自身を感じられなくなっている』みたいなことを言っていました」とトーマスの母親であるカティナ・スタッキー・スミスさんは言った。

「研究者たちが慢性外傷性脳症の副作用や警告症状のことを説明してくれたときに、初めて腑に落ちました。デマリウスは確かにそのようなことをしていたって叫びたくなりました。もしあの頃に知っていたら、もっと彼のためにできることがあったはずです」と父のボビーさんは言った。

解剖によって判明する治療法がない慢性外傷性脳症

慢性外傷性脳症には現在でも治療法はなく、死後の解剖によってしか診断できない。

「彼らは静かに苦しんでいます。これは目には見えない怪我なのです」とマッキー博士は言った。

NFL公式サイトによると、2013年に4500人を越える元選手と家族がNFLに対して、「脳しんとうの危険性を隠蔽し、故障した選手を急いでフィールドに戻し、骨に衝撃を与えるようなシーンを褒めたたえて、それらをハイライト映像にしたてることで不当な利益を得た」として訴えをおこした。

「最初はデマリウスの脳を献体なんてしたくありませんでした。でも彼が『もし僕に何かが起きたら、僕は他の選手たちを助けられるようになりたい』と言っていたのを思い出したのです」と母のカティナ・スタッキーさんは述べた。

(翻訳:角谷剛)

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