MLBとNFLのドラフトにおいていずれも1巡目での指名を受けた史上初の逸材カイラー・マレー。NFLのアリゾナ・カーディナルスに入団し、アメフトのキャリアに進んだものの、本人は両競技を続けたい意向を明らかにしたこともあった。だが、カーディナルスとの契約内容には「野球完全禁止」の条項が含まれているという。スポーティングニュースのKevin Skiver記者がリポートする。
カイラー・マレーを野球界に渡したくないカーディナルス
カイラー・マレーの契約内容が明らかになるにつれ、その奇妙さがますます浮き彫りになっている。
5年総額2億3,000万ドル(約316億円)と見られる契約延長のなかに週4時間の「自習」を必須とする条項が含まれていることがすでに報じられている。それだけではなく、NFLアリゾナ・カーディナルスはこの類まれなマルチ・アスリートに対して、オフシーズン中の活動を制限する意向を示しているらしいのだ。
NFLニュース専門サイト『PFT』によると、その契約条項には以下のような文言があるらしい。「もしマレーが野球に関連するいかなる活動 ― そこにはトライアウト、ワークアウト、チーム練習、練習試合、エキシビジョン、試合などが含まれるが、それだけではない ― をいかなるリーグのいかなるチームと行った場合」、契約不履行が発動されるということだ。
マレーは2018年にMLBオークランド・アスレチックスからドラフト1巡目指名を受けた。これまでにもフットボールと野球の両方でプロ選手になりたいという希望を口にしてきた。しかし、カーディナルスはマレーとの契約に、野球関連の活動に参加した際には保証額の支払いを停止する条項を含めたらしいのだ。
2020年、マレーはもう一度両方のスポーツをプレイしたいと、その思いを語ったことがある。
カイラー・マレーは野球への熱情をどう語ったか
「(前略)野球が恋しいです。それは間違いありません。バッターボックスに立ちたいし、また皆と一緒にフィールドに立ちたいのです。しかし、僕は今、自分がいるべき場所にいることも分かっています。もし野球を選んでいたら、今よりずっと強く(アメリカン)フットボールを恋しく思っていたでしょう。僕としては、両方やってみたいのです。僕にはできると確信しています。だから将来のことはどうなるか分かりませんが、今は自分がとても好きなことを楽しんでいます」とマレーが2020年に語ったとPFTは報じている。
カーディナルスのスティーブ・カイムGMは両スポーツ間で得られる報酬金額の違いについて明言したことがある。
「オークランド・アスレチックス全選手の年俸額とマレー個人の契約を比べてみたことはありますか」とカイム氏はマレーの契約延長に関する記者会見で逆質問した。
NFLドラフト前にカイラー・マレーがダン・パトリック氏に言ったことは
2019年のNFLドラフト前に、カイラー・マレーは人気スポーツキャスターであるダン・パトリック氏のインタビューを受けた。パトリック氏はマレーから何かしらの言質をとろうと懸命だった。
マレーはフットボールと野球の選択に関する、どのような質問にも答えようとしなかった。ドラフト前に春季トレーニング(野球)かプロ・デイ(アメフト)のどちらかに行くかということにも回答を拒否した。インタビューは最初にNFL公式フットボールを手に取ったマレーが、その感触について何もコメントしなかったことから始まっている。
Youtube動画: ダン・パトリック氏との最初のインタビュー
2021年に両者は2回目のインタビューを行った。前回のインタビューに関して、マレーはフットボールを選ぶことをその時点では決めていなかったと述べた。
Youtube動画: ダン・パトリック氏との2回目のインタビュー
このニュースが意味することは何か。それはマレーが春季トレーニングやアスレチックスのキャンプに現れることは当分ないということである。セレブとして登場することもないだろう。
原文:Kyler Murray's contract extension with Cardinals more stringent with general 'no baseball' clause, causes awkward Dan Patrick interview to resurface
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部