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それは雪の中に始まり、そして雨の中で幕を閉じたのかもしれない。18年前のプレイオフ、ニューイングランド・ペイトリオッツが降りしきる雪の中で物議を醸した「タック・ルール」(訳者注:試合終盤にブレイディがファンブルしたかに見えたプレイがパス不成功と判定され、ペイトリオッツが攻撃権を保持した)によってオークランド・レイダーズを下し、それからNFL史上例のないペイトリオッツ時代が幕を開けた。そして1月4日(日本時間5日)の夜、雨の中でローガン・ライアンがブレイディのパスをインターセプトし、そのままタッチダウンしたときに、その時代は終焉を迎えたのかもしれない。
NFLワイルドカード戦、20-13のスコアでテネシー・タイタンズが勝利したことを告げる笛が鳴った瞬間、ブレイディのペイトリオッツとの契約も事実上の終わりを迎えた。ブレイディはまもなくフリーエージェントになり、また43歳になる。それはロジャー・ストーバック、ジョン・エルウェイ、ブレット・ファーヴ、そしてペイトン・マニングらがとっくに引退していた年齢だ。
次に何が待ち受けているかはブレイディ本人にしかわからない。あるいは彼は既に何かを示唆しているのかもしれない。
もっとも、NFLがペイトリオッツを巡る新たな疑惑について正式に態度を決めるまでは、その時代の終焉はある意味では訪れないのかもしれない。『ESPN』のアダム・シェフター記者によれば、NFLはペイトリオッツのビデオ・クルーが対戦前にシンシナティ・ベンガルズのサイドラインを不法に撮影したことに対し、何らかの制裁処分を下すようだ。シェフター記者は2週間のうちに決定が下されると言っているが、NFLはその報道を憶測であると回答している。
もしペイトリオッツがこの件で処分を受けるとしたら、このチームは6回のスーパーボウル優勝と同時に3回の制裁処分を受けたことになる(訳者注:ペイトリオッツは2007年に「スパイゲート」と呼ばれるビデオ盗撮疑惑、2015年に「デフレートゲート」と呼ばれるボールを細工した疑惑を起こしている)。
NFLファン、特に他チームのファンは、かつて1990年代のNBAシカゴ・ブルズに与えられたような称賛を、けっしてペイトリオッツ帝国には与えないだろう。マイケル・ジョーダンとチームメイトたちの業績は広く尊敬されていて、『ESPN』はまもなく彼らについて「兄弟の結束」と題したドキュメンタリーを放映するということだ。
ペイトリオッツの遺産はかつてどのスポーツのチームも持たなかった正負が入り混じったものになるだろう。
ブレイディがジレット・スタジアムで2019年シーズンを引き延ばす最後のチャンスに望みをかけた最終クォーター15分のうち、11分10秒間タイタンズの攻撃が続いた。タイタンズのランニングバック、デリック・ヘンリーは走り回り、CBSアナウンサーのジム・ナンツ氏とトニー・ロモ氏はこれがブレイディの現役最後の試合になるか、あるいはペイトリオッツでの最後の試合になる可能性を話していた。私(筆者)はこの件について、2020年に誰もが思いつく方法で考えてみようと思い、ツイッターで質問を投げかけた。
その質問は「もしこれが終わりだとしたら、ペイトリオッツ帝国のことをどう評価しますか?」というもので、選択肢は以下の通りだった。
1- ゆるがない敬意
2- 疑わしい
回答はほぼ半分に割れた。51%が2の「疑わしい」と回答した。これがまさにポイントだろう。
ニューヨーク・ジェッツのファンであるクリス・ガブリエル氏は「ペイトリオッツは大嫌いだ。だけど彼らがスポーツ界で最も偉大な帝国だったし、それは認めざるを得ないだろうね」と言った。
ピッツバーグ・スティーラーズのファンであるエバン・ジェンキンズ氏は「ペイトリオッツはNFLのランス・アームストロングだ」と言った。
試合後のブレイディはペイトリオッツあるいはNFLに戻ってくるかについては何も口にしなかった。もっとも後者への問いについてはやや強いニュアンスで、現時点において、引退は「多分ない」と言った。
「将来のことはわからないし、予測もしない。私はこのチームの一員でいられたことに誇りを持っている。今年だけではなく、すべての年においてだ。現時点で決断する必要は誰にもない。私はフットボールを愛しているし、このチームでプレイすることも愛している。この20年間で多くの勝利を挙げることができた、このチームでプレイすることを愛しているのさ」とブレイディはリポーターに語った。
2002年1月のあの夜にアダム・ビナティエリが雪の中でフィールドゴールを決めてから、思わぬ苦戦となった2019年シーズンに到るまで、ペイトリオッツはポストシーズンでの勝利数を30まで積み上げてきた。それが何を意味するのかの判断も、現時点では保留にしておいてもよいということだろう。
だが終わりの時がやってきたとしても、全員一致での称賛はありえない。
(翻訳:角谷剛)