選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。
第16話となる今回は、8年間で4回目となる優勝を果たしたNBAファイナル2022 第6戦の直後、ゴールデンステイト・ウォリアーズのドレイモンド・グリーンが盟友ステフィン・カリーとクレイ・トンプソンについて語った言葉の裏側に迫る。
今日の一戦一言(いっせんいちげん)
ドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
僕らは、それぞれまったく違う性格なんだ。似ている人とはふつう衝突するからね。僕らがひとつ同じなのは、勝つことが一番大事だということだ。
6月16日(日本時間17日)、ゴールデンステイト・ウォリアーズはボストン・セルティックスとのNBAファイナル第6戦に勝利し、チーム史上7回目、最近8シーズンで4回目のNBA優勝を果たした。シリーズの序盤では持ち味を発揮できずに苦労していたドレイモンド・グリーンも、第6戦では随所に彼らしさが光る活躍を見せていた。
7年前、2015年に優勝したときからメンバーの大半は入れ替わっているが、変わらずチームの核となっているのがステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、グリーンの3人だ。16日の勝利は3人にとってNBAファイナルでの通算21勝目だった。NBAファイナルで通算19勝をあげたサンアントニオ・スパーズのトリオ、ティム・ダンカン、マヌ・ジノビリ、トニー・パーカーを抜いたことになる。
優勝後、そんな3人のケミストリーについて聞かれたグリーンは、3人の性格がまったく違うことがうまくいっている理由だと語った。
「僕らは、それぞれまったく違う性格なんだ。似ている人とはふつう衝突するからね」
グリーン自身は3人がどう違うのか詳しく語らなかったが、3人を間近で見てきたアンドレ・イグダーラがそのことに関連して、やはり優勝会見で面白いことを言っていた。元NBA選手を父に持つカリーとトンプソンは、ほかの選手に比べてNBAの世界を特別視しておらず、そのために、ウォリアーズのカルチャーはのんきで自由奔放な空気があるのだが、それに対してグリーンがバランサーのような役割を果たしているというのだ。
「NBAという中で育ってきた2人に対して、ドレイモンドがうまくバランスを取っている。あの2人は、僕らがプロフェッショナル・アスリートとして過ごしているこのきらびやかで魅力的な世界に夢中になっているわけではない。だからウォリアーズのカルチャーはのんきで自由奔放なところがあって、ときにそれが仇になることもある。ドレイモンドの鍛錬、ハングリー精神、集中力、粘り強さが彼ら2人に対するすばらしいバランスとなっている。陰と陽の関係だね」
確かに、グリーンはカリーやトンプソンとは育った環境も性格も違う。三人三様にいいところがあり、お互いに違うところをリスペクトし、足りないところを補い合うことでケミストリーを築いてきたのだとわかる。3人と共に4回の優勝を戦い、近くで見てきたイグダーラらしい観察眼だった。