NBAプレイオフ2024を迎えるにあたり、王者デンバー・ナゲッツは有力な優勝候補と見られていた。だが、ウェスタン・カンファレンス・セミファイナルでミネソタ・ティンバーウルブズを相手にシリーズ2連敗スタートとなり、敗退の可能性が取りざたされている。
5月6日(日本時間7日)の第2戦で手痛い黒星を喫した試合後、ナゲッツのレジー・ジャクソンは「こてんぱんにやられたよ」と話した。
「文字どおり、手荒くやられた」
16勝4敗という成績で昨季優勝まで飾ったチームが、なぜこのようなことになったのだろうか。昨季のプレイオフ・ファーストラウンドで、ナゲッツはウルブズを第5戦で沈めている。しかし、ウルブズがその時とは同じチームではなくなったのだ。
ここでは、ウルブズが王者を倒すのに完璧なマッチアップとなった理由をまとめる。
ジャマール・マレーの無力化
今シリーズでマレーは苦しんでいる。フィールドゴール成功率はわずか28.1%で、平均12.5得点という数字だ。そしてこれは目新しいことではない。レギュラーシーズンでもウルブズとの対戦では平均17.3得点と、シーズン平均21.2%から数字を落としている。
マレーはファーストラウンドの終盤からふくらはぎの痛みに悩まされているようだ。爆発力がなく、明らかにいら立っている。試合中に審判に向けてヒートパックをコートへ投げ込んだことでも明白だ。
だが、ケガは理由の一部でしかない。マレーは骨折で昨季のファーストラウンドを欠場したジェイデン・マクダニエルズ、アンソニー・エドワーズ、そしてニキール・アレクサンダー・ウォーカーに見事な仕事を許している。
ニコラ・ヨキッチとマレーのツーメンゲームは、特にマクダニエルズとアレクサンダー・ウォーカーのスクリーンをかいくぐるうまさに抑えられた。子どもの出産で第2戦を欠場したものの、ルディ・ゴベアの存在もある。
マレーが彼らに圧倒されたのは明らかだ。ファーストラウンドでのフェニックス・サンズのビッグスリーと同じである。
また、ウルブズの守備はそのフィジカルの強さも特筆に値する。これが特にマレーを苦しめた。審判たちはシーズンが進むにつれてコンタクトをより許すようになっており、ウルブズの激しい守備はその恩恵を受けているのだ。
ナゲッツにとってさらに痛手となったのは、控えポイントガードのジャクソンが第2戦で足首を負傷したことだ。彼が続けられなければ、ウルブズの守備を打ち破れるかはさらにマレーにかかってくる。だが、マレーはまだその答えを見つけていない。
ニコラ・ヨキッチがウルブズのサイズに苦戦
このシリーズでヨキッチがFG成功率42.1%の平均24.0得点という数字にとどめられているのは驚きだ。レギュラーシーズンではFG成功率58.3%を記録し、悪かった試合はほとんどない。
こうなるかもしれないという警鐘は鳴らされていた。昨年のシリーズで、ヨキッチはウルブズにFG成功率48.5%にとどめられていたのだ。年間最優秀守備選手候補であるゴベアが厄介なのは明らかだろう。アーロン・ゴードンを離して動き回るゴベアの存在で、ヨキッチはいつものようにリム付近で押し込むよりも厳しいフェイダウェイショットを打たされた。
ウルブズがこの戦略でうまくやれたのは、カール・アンソニー・タウンズ、ナズ・リード、そしてカイル・アンダーソンまでもが、ヨキッチ相手に良い仕事をしたからだ。ヨキッチは、ウルブズのサイズを上回ることができていない。
このヨキッチ対策は、普通は機能しない。ゴードンへのロブで対抗されうる。ウルブズもアンダーソンがゴベアの代わりだった第2戦では止められないところがあった。だが、ゴベアがいれば、その効果を大きく失わせる。ゴベアはヨキッチのショットを阻みつつ、ゴードンのカバーも同時にできるリーグ有数の選手なのだ。ウルブズのサイズを持つチームはほかにない。そしてそれがナゲッツの急所であることが証明されているのだ。
アンソニー・エドワーズの活躍
ケンテイビアス・コールドウェル・ポープは、オールディフェンシブチームの選出で票を投じられるだろう。だが、エドワーズを相手にチャンスはなかった。ナゲッツはゴードンで抑えようとする場面もあったが、彼もエドワーズにはやられている。FG成功率60.9%で平均35.0得点のエドワーズは、このシリーズで圧倒的なベストプレイヤーだ。加えて、エドワーズはプレイオフで3P成功率41.9%も記録している。
ナゲッツにはエドワーズに1on1で対抗できるディフェンダーがいない。そして最初の守備網を突破されたら、リムプロテクターとなる選手がいない。ヨキッチはエドワーズに苦しめられた。
守備でウルブズに狙われたニコラ・ヨキッチ
ナゲッツはゴードンにタウンズを守らせ、ヨキッチをアンダーソンにつかせることで、ヨキッチを守ろうとした。しかし、アンダーソンをエドワーズへのスクリーンに使われ、ヨキッチがエドワーズを止めようとしなければいけなくなったのだ。
ボールスクリーンだけではない。ナゲッツはストロングサイドに寄る傾向を突かれ、素早いパスで逆サイドに振られた。ヨキッチにこういうプレイで3ポイントラインまで飛び出す速さはない。
また、ヨキッチはビッグマンを使ったピック&ポップを守る際の足さばきの遅さも突かれた。タウンズやリードに対して素早くクローズアウトすることができなかったのだ。ヨキッチをガードにあてて隠そうとしても、ピック&ロールでエドワーズを守らされた。ナゲッツは弱点を見事に突かれたのだ。
では、なぜほかのチームはこれができなかったのだろうか。すべてはウルブズのチーム編成までさかのぼる。ティム・コネリーはナゲッツを築いた人物だ。その土台にあるひびをすべて知っていた。そしてサイズ、ペリメーターでの守備、フロアを広げるショットと、ナゲッツの最も痛いところを突くのに完璧な要素をそろえた別のチームをつくり上げたのである。
ナゲッツの失敗というより、ウルブズがうまくやってきたということだ。ファーストラウンドでナゲッツは非常に優れたロサンゼルス・レイカーズに圧勝した。だが、ウルブズに対する答えは持っていない。シリーズ最初の2試合でそれが示されたのだ。
原文:Why the Timberwolves are crushing the Nuggets: Jamal Murray's struggles, Nikola Jokic defense lead reasons(抄訳)
翻訳:坂東実藍