ゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カー・ヘッドコーチは、二桁差での敗戦が決まる48.3秒前にスターティングメンバーをベンチに下げると、スター選手たちに歩み寄った。
6月2日(日本時間3日)に行われた2022年NBAファイナルの第1戦でウォリアーズがボストン・セルティックスに108-120で敗れ、カーHCが彼らを叱らなければならないと感じたとしても理解できる。
ところがカーHCは、彼らと握手をしたり、拳をぶつけ合ったり、軽い抱擁をしたりした。この瞬間、6月5日(同6日)の第2戦に勝利するために、ウォリアーズが何を拠り所にしているかが垣間見えた。
「勝っても負けても何があっても、僕らは団結して一緒に戦うんだ」と、ウォリアーズのガードのクレイ・トンプソンは言う。
「自分たちの思うようなプレイができなかったからと言ってバラバラになったりしない。ただひたすらできるだけハードにプレイするだけ。そうすれば、もっと良くなるってことはわかっている」
ウォリアーズが楽観的なのには理由がある。このチームのスター選手たちには5回のファイナル進出と3度のNBAタイトルを獲得した経験があるだけでなく、負けを取り戻す実績もあるのだ。
これでウォリアーズは2015年以降の第1戦を21勝3敗としているが、この試合の前の2つの敗戦後にはすぐに応戦した。2016年のウェスタン・カンファレンス準決勝の第1戦でオクラホマシティ・サンダーに6点差で敗れたウォリアーズは、第2戦では27点差をつけて勝ち、2019年のNBAファイナル第1戦でトロントに9点差で敗れた後の第2戦では、5点差で勝利している。
ウォリアーズの今シーズンはどうかといえば、プレイオフ1回戦(対デンバー・ナゲッツ)、西地区準決勝(対メンフィス・グリズリーズ)、西地区決勝(対ダラス・マーベリックス)で連敗はない。だが、レギュラーシーズンは別の話だ。
レギュラーシーズンのウォリアーズは、2連敗が4回、3連敗が1回、4連敗が1回、5連敗が1回あった。しかし、これはトンプソンやステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーンの負傷が重なり、若いロスターで戦っていた時期と一致する。第2戦に向け、ウォリアーズには故障者リストに挙がっている選手はいない。
「僕らは常に挑戦を受け入れてきた」とグリーンは言う。
「それは今回も変わらない。今回も受け入れるよ。だから、自信が揺らぐことはまったくないんだ」
とはいえ、セルティックスは対処すべき多くのリストをウォリアーズに与えている。
ウォリアーズは、セルティックスのフォワードのジェイソン・テイタム(フィールドゴール17本中3本成功の12得点)とガードのジェイレン・ブラウン(FG23本中10本成功の24得点)の効率を落とすことに成功した。しかし、マーカス・スマート(3ポイントショット7本中4本成功)とアル・ホーフォード(3P8本中6本成功)、デリック・ホワイト(3P8本中5本成功)の3Pに対してはほとんど注意を払わなかった。
第1戦終了後、カーHCは「セルティックスが21本の3Pを決めて、そのうちホーフォードとホワイトが合わせて11本も決めていたら、彼らを敗るのは難しいだろう」と話している。
92-80とリードして第4Qを迎えたウォリアーズは、勝利を確定させたかに見えた。しかし、第4Qはセルティックスが40-16とウォリアーズを圧倒し、一方のウォリアーズはFG成功率41.2%、7回もターンオーバーをしている。
「攻守でお互いを信頼することだ」とトンプソンは言う。
「僕はローテーションでミスをした。もっと連動して動いて、オープンになっている選手にボールをまわすようにしないといけない」
ウォリアーズは、4年目のシーズンを迎えたジョーダン・プールの成長を心強く感じていた。プレイオフでは頼れる先発とクローザーの両方で台頭してさらに魅力を増した。ところが、ファイナルに初出場したプールは別人のようで、第1戦ではFG7本中2本成功の9得点、4ターンオーバーと苦戦した。
「セルティックスはジョーダンに対して良い仕事をして多くのプレッシャーを与えていた」とカーHCは話す。
「彼をもっとフリーにするために我々にできることがあると思う。彼はすごい選手なんだ。だから、彼はここから立て直して良いプレイをするだろう」
グリーンは、FG12本中2本成功(うち3P4本中0本成功)でわずか4得点と不調だったが、また同じことを行うと誓った。ウォリアーズはグリーンのディフェンスを重視しているが、シューティングはそれほどでもない。それでもウォリアーズは、ディフェンスを拡散できるようにグリーンには得点面でも脅威でいてほしいのだ。
「積極的に打ち続けるつもりだ」とグリーンは言う。
「いつかは入るようになるよ」
同じ問題がカリーにはほとんどなかったのは想定通りだ。彼は第1Qで21得点をマークし、全体では3P8本中6本成功を含む、FG9本中7本を成功させた。セルティックスは驚いたことに、カリーのショットに対抗しなかったり、ピック&ロールからオープンで打たせたりしていた。しかし、第1Qで爆発した後は、第2Q(FG2本中0本成功)、第3Q(FG8本中3本成功)、第4Q(FG6本中2本成功)と調子は続かなかった。
カリーがベンチに下がっていた第4Q開始2分25秒間に、セルティックスは7-0のランで反撃した。それは、カリーが38分を超えてプレイしなければならない可能性を示唆していた。
「どんな手段を使ってでも4試合勝つことだ」とカリーは話す。
「(48分間のうち)42分間は勝てる努力をした。でも、バスケットボールはそういうものじゃないんだ。6月5日(同6日)にシリーズをタイに戻すことが先だ。すべてはそこからだよ」
ウォリアーズはそうなることを信じていて、第1戦の後には自分たちのフラストレーションを認めている。それでも、誰かのせいにすることも、肩を落とすこともせず、その代わりに、3日と4日(同4日と5日)は試合映像を見て練習をして、どう調整するかを話し合うと誓っていた。
「とにかく何が悪かったのかを正直に話し合うこと、それぞれがお互いに責任を持つこと、勝つために必要な必死に努力することを話し合うんだ」
NBAの歴史を見ると、今の状況は必ずしもウォリアーズに有利ではない。ファイナルの第1戦に勝ったチームが最終的にシリーズを制する確率は70.7%(85チーム中53チーム)だ。それでも、アウェイでの第1戦に勝利した17チームのうち、NBAタイトルを獲得したのは8チームしかない。そして、ウォリアーズにはまた、現在の状況を比較的楽観視できるこれまでの経験がある。
「さすがにみんな落ち込んでいる」とカーHCは言う。
「でも、プレイオフが7試合のシリーズなのには理由があるんだよ」
原文:Disheartening Game 1 loss hasn't left Warriors disconnected
翻訳:YOKO B Twitter:@yoko_okc