ビクター・ウェンバンヤマはレブロン・ジェームズ以来の有望新人という触れ込みでNBA入りした。そしてルーキーシーズンに大いに活躍している。
1試合平均20.9得点、10.2リバウンド、3.4アシスト、リーグトップの3.4ブロック、1.3スティールというスタッツも、ウェンバンヤマがいかに素晴らしいかを示す表面の一部でしかない。ウィルト・チェンバレンが記録した平均38得点&27リバウンドの新人記録を上回る選手はいないだろう。だが、ウェンバンヤマのルーキーシーズンは誰にも引けを取らないものだ。
ビクター・ウェンバンヤマはNBA史上最も完全なルーキー
もっと得点やリバウンド、アシスト、ブロックを記録したルーキーはほかにもいた。だが、すべてでウェンバンヤマのレベルだった選手はいない。新人で平均20得点&10リバウンド&3アシスト&3ブロック超は、NBA史上初の数字だ。
このスタッツは過去に16回達成されている。だが、ウェンバンヤマは20歳で達成した。また、ほかに達成したのは殿堂入りした選手たちだ。しかも、ウェンバンヤマは平均出場時間が約8分も少ない中で達成している。
新人の36分あたりの得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックで、ウェンバンヤマは圧倒的だ。
選手 | 得点+リバウンド+アシスト+ブロック+スティール |
---|---|
ビクター・ウェンバンヤマ | 49.1 |
デイビッド・ロビンソン | 43.2 |
シャキール・オニール | 41.3 |
マイケル・ジョーダン | 41.1 |
ラルフ・サンプソン | 40.9 |
ルカ・ドンチッチ | 40.7 |
NBA有数の希少な記録である5x5も、ウェンバンヤマは通算51試合で達成した。さらにほかにも何度か迫っている。
ウェンバンヤマはガードのパス能力とハンドリング、NBA史上最高級ブロッカーのサイズとリバウンドを持ち、さらにはプルアップから3ポイントショット成功率42.5%とリーグ最高のビッグマンだ。
ルーキーにとどまらず、これだけ多くの様々な分野でこれほど支配的な選手はいなかった。
ビクター・ウェンバンヤマの出場時間あたりのスタッツは最高級
ウェンバンヤマは歴代2位の新人という意見には、ひとつの理由がある。サンアントニオ・スパーズの出来だ。
今季のスパーズは当初、あえてポイントガードや良いスペーシングなしの戦い方をし、ウェンバンヤマが成功するのに最も厳しい状況とした。それでもウェンバンヤマは良いプレイをし、センターにポジションが変わって、少なくともある程度ロブを出せるトレイ・ジョーンズが先発ポイントガードになってから飛躍を遂げている。
ただ、ウェンバンヤマのスタッツを最も妨げているのは、あえて出場時間に制限をかけていることだ。1試合平均28.7分間の出場は、新人では4位の数字である。新人王を受賞することは確実だが、ジョエル・エンビードのケガのために受賞したマルコム・ブログドンを除き、最も少ない平均出場での受賞となるだろう。
彼ほどの新人の典型的な出場時間に換算した場合、そのスタッツは歴代最高級のルーキーたちに匹敵するか、それ以上となる。36分あたりのスタッツは以下のとおりだ。
選手 | 得点 | リバウンド | アシスト |
---|---|---|---|
ウィルト・チェンバレン | 29.2 | 20.9 | 1.8 |
ビクター・ウェンバンヤマ | 26.2 | 12.8 | 4.3 |
カリーム・アブドゥル・ジャバー | 24.1 | 12.1 | 3.4 |
オスカー・ロバートソン | 25.7 | 8.5 | 8.2 |
マイケル・ジョーダン | 26.5 | 6.1 | 5.5 |
『Stathead』より
攻撃に関する数字が派手なウェンバンヤマだが、それすらも彼のベストではない。守備も考慮したら、チェンバレンにも引けを取らず、リーグ史上最高級となる。
ビクター・ウェンバンヤマは守備で史上最高の新人
NBAの歴史において、ルーキーでオールディフェンシブ・ファーストチームに選ばれた選手はいない。セカンドチームには、ティム・ダンカン、デイビッド・ロビンソン、アキーム・オラジュワン、マヌート・ボルの4人が選ばれている。ウェンバンヤマは5人目となるはずだ。
ウェンバンヤマはすでにリーグでトップ10に入るディフェンダーだ。『BetMGM』の年間最優秀守備選手予想オッズでは、ルディ・ゴベアに次ぐ2番目となっている。
ウェンバンヤマの守備に関する数字はすさまじい。平均3.4ブロックは過去7年で最多タイ。ここ15年で平均3スティール&1ブロック超達成は、ウェンバンヤマと昨季の年間最優秀守備選手に選ばれたジャレン・ジャクソンJr.だけだ。
ウェンバンヤマがいかに相手を抑えているかは、スタッツだけでは分からない。相手選手はバスケット付近にいるウェンバンヤマに挑戦することを恐れている。ワイドオープンのレイアップだと思っても、一瞬のうちにリムにやってくるウェンバンヤマにはたかれてしまう。まるで5歳児のようだ。
これから助けを得ていけば、ウェンバンヤマは年間最優秀守備選手を複数回受賞するようになるだろう。昨季、スパーズの守備はリーグ史上ワーストだった。そして今季もロスターの大半はそのままだ。それでも、ウェンバンヤマは限られた出場時間にもかかわらず、スパーズの守備を24位に引き上げた。
ビクター・ウェンバンヤマには他の歴代有望新人にない物語
歴代最高新人のリストをつくるなら、マジック・ジョンソンはその名をあげるにふさわしい。平均18得点、8リバウンド、7アシストを記録し、ロサンゼルス・レイカーズを優勝に導いた。カリーム・アブドゥル・ジャバーはミルウォーキー・バックスの白星を前年から29勝も増やし、MVP投票で3位になっている。チェンバレンもチームの白星を17勝増やし、MVPを受賞した。ラリー・バードは前年29勝だったボストン・セルティックスを61勝に導き、平均21得点、10リバウンド、5アシストという数字でジョンソンを抑えて新人王に輝いている。
ウェンバンヤマが所属するスパーズは今季、22勝60敗という昨季の成績を下回りそうだ。これはウェンバンヤマにとって不利となるだろう。しかし、1試合平均28分間という出場時間で勝利に貢献できることは限られている。
『Cleaning the Glass』によると、ウェンバンヤマがコートに立っている時と立っていない時で、スパーズは100ポゼッションあたり8.7得点の差がある。ウェンバンヤマが欠場した6試合でも彼の影響がうかがえた。スパーズは平均11.5点差をつけられ、6試合すべてを落としている。
ウェンバンヤマの出場時間が普通になり、一定の経験を積んでいるスターターがそろえば、次々に勝利と賞を手にするようになるだろう。
こういったチームの黒星に関する批判を払しょくした時に振り返れば、ウェンバンヤマが歴代有数の特別なルーキーシーズンを過ごしたことに気づくだろう。最高の状況に置かれたわけではない。だが、ウェンバンヤマは間違いなく特別な存在だ。
原文:Victor Wembanyama is having the second-best rookie season of all time despite the Spurs' penchant for losing(抄訳)
翻訳:坂東実藍