ビクター・ウェンバンヤマはNBAドラフトロッタリー2023をフランスから見守った。だが、テキサスからの声援が聞こえたのではないだろうか。
5月16日(日本時間17日)に行われたドラフトロッタリーの結果、サンアントニオ・スパーズがドラフト全体1位指名権を獲得した。レブロン・ジェームズ以来の有望新人と広く評価されるウェンバンヤマを獲得する機会を手に入れたということだ。明らかに19歳のウェンバンヤマがスパーズ入りに興奮していた。
ウェンバンヤマは『ESPN』のブライアン・ウィンドホースト記者に「本当に、本当にうれしいよ。6月に加わってファンに会うのを、そしてできればチームに会えるのが待ちきれない」と述べている。
そういった気持ちになるのも当然だろう。スパーズはほかのどのロッタリーチームよりもウェンバンヤマの才能を最大限に生かすことができ、彼が球団を妥当な位置に戻せる状況にあるからだ。
スパーズのロスターにフィットするビクター・ウェンバンヤマ
ガードのスキルを持った7フィート5インチ(約226センチ)であるウェンバンヤマは、どんなラインナップにも入っていける選手だ。だが、特にスパーズではスムーズに溶け込むことができるだろう。スパーズにはすでに強いロールプレイヤーがたくさんいる。彼らに必要なのは中心選手だけだったのだ。そこで登場するのが、フランスの怪物である。
今季のオールルーキー・セカンドチームに選ばれたジェレミー・ソーハンは、フィジカルで多才なディフェンダーだ。ウェンバンヤマの存在により、彼はよりタフな役割を担うことができる。
フランスのメトロポリタンズ92で見せてきたように、ウェンバンヤマは8フィート(約224センチ)のウィングスパンと直感を生かして守備で支配することが可能だ。
攻撃でも、スパーズの主力に「ボールを持ちすぎる」とされる選手はいない。ソーハン、ケルドン・ジョンソン、デビン・バセルは、ウェンバンヤマのプレイを補完するはずだ。スパーズがトレイ・ジョーンズと再契約すれば、ウェンバンヤマには堅実なファシリテーターとなるポイントガードもいる。
ウェンバンヤマがジョーンズとピック&ポップを狙い、バセルがコーナー付近に入って、ウェンバンヤマにスペースが与えられる場面を想像してみてほしい。
スパーズの若い主軸が似たような年齢であることも、さらなる好材料だ。彼らはグレッグ・ポポビッチ・ヘッドコーチの指導で成長できる。
選手育成の素晴らしい歴史を持つスパーズ
スパーズがこれまでドラフトで全体1位指名したのは、デイビッド・ロビンソン(1987年)とティム・ダンカン(1997年)だ。とてもうまくいったと言えるだろう。
ウェンバンヤマがロビンソンやダンカンとは異なるタイプのビッグマンであることは確かだ。しかし、ポポビッチHCが育てたのは、殿堂入りしたその2選手だけにとどまるものではない。
1993-1994シーズン、ゴールデンステイト・ウォリアーズでドン・ネルソンHCのアシスタントコーチを務めていたポポビッチは、若きクリス・ウェバーのポテンシャルを見いだした。この10年でラマーカス・オルドリッジやボリス・ディアウ、ティアゴ・スプリッターらの力も引き出している。
ポポビッチHCによる育成はペリメーターにも及ぶ。マヌ・ジノビリ、トニー・パーカー、カワイ・レナードといった選手たちは、スパーズのシステムにいることで恩恵を受けた。
ビクター・ウェンバンヤマを中心にスパーズは早期再建が可能
ウェンバンヤマは「できるだけ早く優勝リングを勝ち取りたい」と望んでいる。しかし、NBAでプレイする準備を整えている最も有望な新人でも、一晩でチームを地下からトップクラスの優勝候補に変えることはできない。しかし、スパーズには再建を早めていくためのツールがある。
スパーズは十分なキャップスペースをもってオフシーズンに臨む。ドラフトでは全体1位指名権に加え、2巡目のトップに近い33位指名権もある。将来のドラフト指名権も大量だ。
球団上層部がウェンバンヤマは早くからインパクトを残せる選手になると信じるなら、スパーズはフリーエージェントやトレードを通じてロスターのアップグレードを図ることができる。ウェンバンヤマが今季のメトロポリタンズ92をリーグ2位に導いたことを考えれば、このアイディアもクレイジーなものではない。
ウェンバンヤマがチームにいることの素晴らしい利点は何か。スパーズがどの道を選んでも、おそらく成功できるだろうということだ。シンプルに、素晴らしいカップリングとなった。