ビクター・ウェンバンヤマはNBA入りする前から、ゲームチェンジャーとなるディフェンダーになる可能性があると言われていた。7フィート4インチ(約224センチ)の身長と8フィート(約244センチ)のウィングスパン、そして優れた機動性で、昨季はフランスリーグの最優秀守備選手賞を受賞している。それらのスキルはNBAでのルーキーシーズンにもすぐに発揮され、わずか半シーズンでリーグ有数のディフェンダーとなっている。
主にサンアントニオ・スパーズの成績から、年間最優秀守備選手候補としてはあまり取り上げられていない。だが、スタッツや試合を見れば、彼がリーグで最も特別なディフェンダーのひとりであることは明白だ。
今季の年間最優秀守備選手賞は、ミネソタ・ティンバーウルブズのルディ・ゴベアが受賞すると見られている。圧倒的な有力候補だ。しかし、ウェンバンヤマは少なくとも議論されるべきだろう。
なぜビクター・ウェンバンヤマは年間最優秀守備選手候補にふさわしい?
見事な守備のスタッツ
年間最優秀守備選手賞が完全にスタッツだけに基づくものであれば、ウェンバンヤマには大きなチャンスがあっただろう。1試合平均3.2ブロックは大差でリーグトップの数字だ。新人でブロックがリーグトップなのは、1985-1986シーズンのマヌート・ボル以来である。
パスレーンでもウェンバンヤマは素晴らしい。平均1.1スティールはトップ50入り。ウェンバンヤマがシーズン半ばにして、ゴベアが2018年の年間最優秀守備選手賞を受賞したシーズンのブロックとスティールを上回っているという2月上旬の投稿は話題となった。
アドバンスドスタッツでも、ウェンバンヤマはすでにリーグ有数のディフェンダーだ。推定プラスマイナスではトップ10のディフェンダーと位置づけられており、『DARKO』でも8位となっている。
開幕してからのウェンバンヤマの進歩ぶりは見事だ。
守備に関するどのスタッツを見ても、上位のどこかにウェンバンヤマがいるのである。
見たことがないようなウェンバンヤマのハイライトシーン
映像を見れば、さらにウェンバンヤマがリーグ最高のディフェンダー候補だと分かるだろう。対戦相手はしばしば彼に挑戦できずに固まる。できたとしても、ウェンバンヤマのサイズによって赤子のように見せられてしまう。
ウェンバンヤマが力強くブロックしたら、地球の中心に直接ボールをスパイクするみたいに見えるほどだ。
試合終盤にリムでヤニス・アデトクンボをブロックした場面は、守備に関する今季のハイライトのひとつとなるだろう。
こういったブロックをするリムプロテクターの大半は、ファウルも多い。だが、ウェンバンヤマは逆だ。ファウルアウトは今季1回しかない。ファウルを犯す割合は2.9%だ。
ビクター・ウェンバンヤマの受賞に影響するチームメイト
年間最優秀守備選手賞の候補であるゴベアは、ウルブズをリーグ最高の守備へと導いている。ウェンバンヤマが所属するスパーズはリーグ24位だ。多くの投票者にとって、彼を外す十分な理由となるだろう。
しかし、ウェンバンヤマが加入したのは、昨季の守備がリーグ史上ワーストだったチームだ。繰り返すが、78年の歴史において、圧倒的に歴代ワーストだった。そして今季もロスターはほとんど同じだ。ウェンバンヤマはそのチームを立派な方向へとけん引している。それだけで見事な功績だ。
ウェンバンヤマがコートに立っていない時、スパーズの守備は芳しくない。平均出場28.4分間のウェンバンヤマがいる時のスパーズは、平均を上回る守備を見せている。だが、『Cleaning the Glass』によると、彼がコートからいなくなると、ディフェンシブレーティングは100ポゼッションあたりで10.2点も下がるのだ。これは昨季よりも悪い数字である。
最も影響を及ぼしたディフェンダーに年間最優秀守備選手賞が贈られるのであれば、ウェンバンヤマは強力な候補だっただろう。
投票者が選ぶ特別な基準はない。だが、トップ5の守備を誇るチームのベストディフェンダーが選ばれることがほとんどだ。ウェンバンヤマが彼にふさわしい評価を得るには、かなりの時間を要するだろう。
スパーズが守備の優れた選手たちでウェンバンヤマの周囲を固めれば、彼は何度も年間最優秀守備選手賞を受賞していくはずだ。特別なディフェンダーであり、どこまでたどり着けるかを自分でも分かっていないほどだ。全盛期には、史上最高のディフェンダーのひとりとなるかもしれない。
原文:Victor Wembanyama could be the NBA's Defensive Player of the Year if he had better teammates on Spurs(抄訳)
翻訳:坂東実藍