スティーブ・カー・ヘッドコーチが2014年にヘッドコーチに就任した際、ゴールデンステイト・ウォリアーズにもたらしたのが、「Strength in Numbers」(人数の強さ)という信念だ。ロッカールームのみならず、球団のその他のあらゆるレベルで見受けられるようになった。
ウォリアーズ元社長のリック・ウェルツは2016年に「ここに来た初日から、カーHCは人数の強さに基づいて取り組んできた。そして全員が貢献した。本当にそこから『Strength in Numbers』が生まれたのだと思う」と話している。
アメリカ代表の指揮官として初めて臨んだ公式戦で、カーHCはデジャブのような感覚を覚えたかもしれない。8月26日、FIBAバスケットボールワールドカップ2023の初戦でニュージーランドに99-72で勝利したアメリカは、ロスターのあらゆる選手が貢献したのだ。
ただ、最終スコアは試合の内容を真に反映してはいない。アメリカは苦しいスタートになり、第1クォーター中盤で4-14と二桁点差をつけられたのだ。恐れ知らずのニュージーランドを相手に、活気のないスターティングラインナップが精彩を欠いた。
流れを変えたのが、リザーブメンバーだ。パオロ・バンケロ、タイリース・ハリバートン、オースティン・リーブスがフレッシュなエネルギーをコートにもたらす。アメリカは15-4のランで第1Qを終え、リードを奪うと、9点差をつけてハーフタイムに突入し、後半に引き離した。
バンケロはフィールドゴール10本中8本成功で試合最多の21得点をマーク。リーブスは12得点、6アシスト、ハリバートンは10得点、4リバウンド、3アシストを記録した。控えセンターのウォーカー・ケスラーを除き、12選手のうち11選手が得点をあげている。
スターターのパフォーマンスは、危険信号とも受け止められる。今大会のアメリカはケビン・デュラントやレブロン・ジェームズのようなスーパースターに頼ることができない。おそらくアンソニー・エドワーズがそういう存在になれるかもしれないが、初戦は5ターンオーバーとアメリカの課題のひとつとなってしまった。
しかし、アメリカはトップ選手たちが常に最高級のパフォーマンスを見せなくても良いのだと示した。そういう場合でも、グループフェーズは圧倒的に勝利を収められるだろう。アメリカほどの層の厚さを持つチームはほかにないからだ。
ミケル・ブリッジズは試合後、「最初にやられたけど、僕たちはとにかく40分間続けた」と話している。
「とにかく踏みとどまり、最後にやってみせた」
カーHCはウォリアーズでの1年目でNBA優勝を果たした。「人数の強さ」は、また新たなタイトルにつながるだろうか?