なぜアメリカ代表は先発メンバーを固定しないのか? テイタムやエンビードが不出場|パリ五輪2024

2024-08-01
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(NBA Getty Images)

バスケットボールのアメリカ代表を率いるスティーブ・カー・ヘッドコーチは、世界で最も簡単かつ大変な仕事に取り組んでいる。

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アメリカのロスターはパリオリンピック2024に出場しているチームで最も層が厚い。一方で、カーHCには世界最高のスターである12選手のロスターでスターティングラインナップとロスターをやり繰りしていく責任がある。

先発出場できるのは5人しかいない。そして1クォーターが10分と短いだけに、チームの全員を試合に出すのはほぼ不可能だ。オリンピック開幕から2試合で、NBAのMVP受賞者ジョエル・エンビード、オールNBA選出4回のジェイソン・テイタム、オールスター選出2回のタイリース・ハリバートンが、いずれもコーチ判断で出場機会なしだった。

カーHCはスターティングラインナップとローテーションをいじり続けている。だが、オリンピックでの2連勝を含め、ここまで7戦全勝という完璧な成績を残してきた。それにもかかわらず、指揮官がどのように選択しても、それが間違いであるかのようにとらえられている。

スターティングラインナップとローテーションを固定すべきタイミングなのだろうか。『スポーティングニュース』がまとめた。

なぜスティーブ・カー・ヘッドコーチはアメリカのスターティングラインナップを変更し続けるのか

カーHCはこれまでの7試合で4つの異なるスターティングラインナップを採用してきた。そしてすでに次のプエルトリコ戦では、最も多く採用してきたメンバーで臨むつもりだと明かしている。ステフィン・カリー、デビン・ブッカー、ドリュー・ホリデー、レブロン・ジェームズ、エンビードの5人だ。

アメリカ代表の先発ラインナップ 試合数
カリー、ジェームズ、エンビード、ブッカー、ホリデー 4
カリー、ジェームズ、エンビード、テイタム、エドワーズ 1
カリー、ジェームズ、エンビード、テイタム、ホリデー 1
カリー、ジェームズ、エンビード、テイタム、デイビス 1

この中で常に先発出場してきたのは、カリーとジェームズだ。ブッカーとホリデーは、7試合のうち5試合でスターターだった。

エンビードは6試合で先発出場してきたが、南スーダン戦ではスターティングラインナップから外れ、出場機会もなかった。7月31日(日本時間8月1日)の試合では、テイタムがスターターに名を連ねている。

セルビアとのオリンピック初戦でテイタムが出場しなかった際、カーHCは「理にかなったコンビネーションでいった」と説明。セルビアとの試合に特化した選択だったと述べた。

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そして南スーダン戦でエンビードの出場機会がなかったことについても、カーHCは南スーダンが「大会で最も速いチーム」だったからだと話している。

『Washington Post』のベン・ゴリバー記者によると、一部のスター選手が出場していないことについて問われたカーHCは、報道陣に「彼らはプロであり、お互いに献身的だ」と話した。

「私はソーシャルメディアを見ない。選手たちにもあまりそういうことに注意を払ってほしくないね。視聴率につながるメロドラマみたいな、レギュラーシーズン中みたいなものだ。ここではとにかく金メダルを勝ち取るだけなんだよ」

アメリカはここまで無敗だけに、カーHCがローテーションを変え続けていることを非難するのは難しい。ただ、ラインナップが頻繁に入れ替わることが、選手たちのコート上でのケミストリーに影響を及ぼすことはないのだろうか。

セカンドユニットのフロントコートコンビ、アンソニ-・デイビスとバム・アデバヨは、攻守両面で止められない活躍だった。彼らがエンビードを上回るパフォーマンスを見せ、先発出場にふさわしいとしても、これほど成功しているコンビを解消させるのは、あまり理にかなっていない。

それでも、デイビスとテイタムをスターティングラインナップに起用しながら、アメリカはベンチメンバーの得点で66-14と南スーダンを圧倒した。ここまでは、誰が先発出場し、誰がベンチスタートから途中出場しても、同じように結果を出せるだけのタレントがそろうチームと示している。

また、デュラントがスターティングラインナップに戻るタイミングという問題もある。アメリカ代表の歴代最多得点を記録しているデュラントは、ふくらはぎのケガで強化試合の5試合をすべて欠場した。だが、オリンピック開幕から2試合、デュラントはコートでかなり快適そうだ。

今後はより厳しい相手との、より大事な試合になっていく。グループフェーズでは最も弱い組だったが、金メダルまでの3試合は大会屈指のチームたちとの挑戦になる。

もしかしたら、カーHCはグループフェーズを使って正しいコンビネーションを見つけ、決勝トーナメントが始まってから完成させるつもりなのかもしれない。あるいは、今夏のアメリカ代表は、それが問題にならないほど優れたチームなのかもしれない。

原文:Steve Kerr's rotations, explained: Why USA basketball coach hasn't settled on starting lineup in 2024 Olympics(抄訳)
翻訳:坂東実藍