ニコラ・ヨキッチを止められる選手はNBAの歴史にもいない?|NBAプレイオフ2024

2024-05-16
読了時間 約2分
(Getty Images)

史上最多タイとなる通算4回目の年間最優秀守備選手賞を受賞したルディ・ゴベアは、NBAの歴史でも最高のディフェンダーのひとりとなるだろう。ユタ・ジャズでも同様にエリートクラスの守備の支柱だった彼は、トレードでミネソタ・ティンバーウルブズに加入してから、平均的だったチームの守備をリーグ最高に導いた。

だがそれでも、ウェスタン・カンファレンス・セミファイナル第5戦で、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチは、世界最高のバスケットボール選手である理由をすべての人に思い出させた。ヨキッチは40得点、13アシストをマーク。その多くが、ゴベアとの1on1から決めたものだった。

ヨキッチのパフォーマンスは、ゴベアに対する批判につながった。そのひとつは、長きにわたるライバルのドレイモンド・グリーンからのものだ。

グリーンは『TNT』の試合後の番組で、ゴベアについて「止めなきゃいけないんだ」と話した。

「やられたのは君だ。『オレたち』じゃない」

だが、ヨキッチが成功したのは、ゴベアの失敗以上にヨキッチ自身が素晴らしいからだ。何回にもわたり、ヨキッチは自分を守ることはできないと示したのである。

今のニコラ・ヨキッチを守れる選手はNBAの歴史に存在せず

ヨキッチがゴベアを相手に記録した得点を見れば、歴史的に偉大な選手を目の当たりにしているのは明らかだ。アンソニー・エドワーズも、笑うしかなかった。

試合後、エドワーズは「今夜の彼は特別だった」と話している。

「彼に花を贈らなければいけない」

チームメイトのアーロン・ゴードンも、「自分が見たものが信じられないよ。とんでもない」と述べた。

ヨキッチが支配したのは、ゴベアがドリブルで抜かれたり、ショットに対抗できなかったり、何か守備が悪かったからではなかった。シンプルに、全盛期のマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアント、その他の伝説的なスコアラーのレベルでヨキッチが素晴らしいショットを決めたからだ。

得点だけでは不十分というなら、ヨキッチには本人にとって当たり前でも、ほとんどの選手のキャリアで最高級に位置づけられるようなパスがある。

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これは、ゴベアのせいではないのだ。ヨキッチは直近のプレイオフの3シリーズで、年間最優秀守備選手賞の投票で4位以内だった3選手と対戦している。そして同じように活躍してきたのだ。

3選手に対するニコラ・ヨキッチのスタッツ(NBA Stats
ディフェンダー 得点 フィールドゴール成功率 アシスト ターンオーバー
ルディ・ゴベア(2024年地区準決勝) 48 51.4% 7 3
アンソニー・デイビス(2024年1回戦) 67 52.0% 25 4
バム・アデバヨ(2023年ファイナル) 67 56.5% 21 7

ヨキッチをいかに止めるかで守備を評価するなら、リーグの歴史を振り返っても、優れたディフェンダーはいなかったことになるだろう。ビル・ラッセルはヨキッチを止められないはずだ。年間最優秀守備選手賞のトロフィーに名前が冠されたアキーム・オラジュワンでさえ、ヨキッチには翻ろうされただろう。

昨年、オラジュワンは『Sports Illustrated』のインタビューで、ヨキッチのことを「彼こそ本物だ」と話している。

ヨキッチを守るのに成功した唯一の例は、彼に対するディフェンダーを増やすことだけだった。だがそれは、ヨキッチをパサーへと変貌させる。そして彼のチームメイトたちが、相手の守備を切り裂くのだ。

シリーズ最初の2試合で、ウルブズはその戦略を用いて成功した。カール・アンソニー・タウンズがヨキッチにつき、ゴベアが動き回る役割を務めたのだ。

だが、それが機能したのは、ジャマール・マレーが不調だったことも大きい。第3戦以降、マレーはフィールドゴール成功率50.0%、3ポイントショット成功率41.7%で平均19.7得点を記録。その戦略を通用させていない。

また、ナゲッツは賢い対応策も講じてきた。ゴードンをもっとスクリナーに使い、スイッチでヨキッチにゴベアをつかせるようにしたのだ。それにより、ゴベアをヘルパーとしての役割から外し、ヨキッチが1on1にいけるようにしたのである。

そして、ヨキッチはそのマッチアップを叩きのめしている。NBAの各チームがマークさせてきた他のすべてのディフェンダーたちと同じように、だ。我々が目撃していることは、これから何十年にもわたって語り継がれるほどの素晴らしさなのである。それを、本人の成功よりも誰かの失敗のせいとするのは、リーグ有数の支配的な選手を軽んじることになる。

原文:The Rudy Gobert criticism misses the point: Why nobody in NBA history could defend Nikola Jokic right now(抄訳)
翻訳:坂東実藍