限られた友人たちを除き、リック・カーライル・ヘッドコーチに、年をとってきたと言う人はいないだろう。だが、暦はうそをつかない。1989-1990シーズン、ニュージャージーでカーライルが初めてコーチの仕事についた時、ポイントガードのひとりはレオン・ウッドだった。この28年、NBAの審判を務めてきた人物だ。
そしてデトロイト・ピストンズでのカーライルHCの1年目だった2001-2002シーズンに、ヘッドコーチないし暫定コーチを務めた35人の同僚たちのうち、現在もその仕事についているのは、ドック・リバースとグレッグ・ポポビッチしかいない。
64歳のカーライルHCは、ダラス・マーベリックス(555)、インディアナ・ペイサーズ(288)と、2つの球団のNBAレギュラーシーズン最多勝利記録を打ちたてた指揮官だ。通算では歴代12位の943勝をあげている。
2011年には、圧倒的有利と言われたマイアミ・ヒートを相手にアップセットを演じ、ダラス・マーベリックスを球団史上唯一のNBA優勝に導いた。
カーライルHCはペイサーズの指揮官というだけでなく、全米バスケットボールコーチ協会(NBCA)の会長も務めている。48年にわたる同協会の歴史の半分近い19シーズンも務めてきた仕事だ。
そのカーライルHCが、先日シカゴで開催された同協会の会議に際し、『NBA.com』のインタビューに応じてくれた。
――会長職はもう20年近くになる。これほど長くなると想像していたか?
これが19年目だ。来年が20年目だね。それが最後になる。別の新しい人に託す時だと伝えたよ。普通は3年なんだ。(NBAコミッショナーは)デイビッド(スターン)からアダム(シルバー)への移行期があった。私はなんとなく続いていたんだ。
――就任した時と今とで何か違いはあるか。コーチの待遇や報酬、福利厚生や、成功の基準などはどうか。平均年俸は当時から2、3、4倍となった。
2005年に就任した時は、年金が最大の問題だった。長年にわたって増額がなかったんだ。難しい問題だった。今こそ適切なタイミングだと経営陣を説得する方法を見つけなければならなかった。
当時はヒートのミッキー・アリソンが理事会のチェアマンだった。彼と素晴らしい話し合いができ、旗揚げを助けてくれたんだ。ある秋、約15年ぶりの増額となった。2007年のことだ。以降、何度か年金は増額された。形態は変わったが、どのプロコーチ協会にとっても最善のものだ。
この19年、我々はリーグと本当に重要な関係を築いてきた。デイビッド、そして今はアダムと知り合うことができたのはうれしい。様々な問題に関してほかにも多くの人たちと知り合った。
――今では、コーチたちの声や視点はより尊重されるようになったか?
長年にわたって本当にその点に取り組んできた。プライベートにアダムと会う機会もあったよ。昨年は我々にとって重要なことが3つあった。明かしたくはないが、2つは達成され、もうひとつは進行中だ。対話を続けることが重要なんだよ。
――再び試合の夜にコーチがスーツを着ることについて議論はあった?
服装に関する質問があると思っていた。当面はこのままだ。本当にNBAはこの分野でリーダーなんだよ。大学(バスケットボール)はとても楽な格好だ。100%ではないが、大部分がね。企業もそういう感じになっている。どんどんカジュアルになっているんだ。より楽な服装のほうがより効果的な仕事ができるという研究もなされているはずだよ。100%確信してはいないが、そう聞いた。
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――今季のペイサーズについて聞くが、リーグ有数の層が厚いロスターでは?
ウチのグループが大好きだよ。昨季はプレイオフに向けて層の厚さが重要となり、いくつかのラウンドを勝ち進めた。ハードに、そして正しくプレイする素晴らしい選手たちがいて、とにかく幸運だ。
いくつか予想外の成功を経て、今季はそれを続けていかなければならない。目標を背負うのは良いことだが、同じエッジをきかせ続けなければいけない。
――トレーニングキャンプからシーズンを通じてパスカル・シアカムがいるメリットは?
初日から彼がいるのは大きいだろうね。フロントオフィスは大半の選手と再契約できた。我々は出だしから厳しいスケジュールなんだ。最初の10試合から12試合がロードだし、大変になるだろう。
――ベネディクト・マサリンが肩の手術から戻り、ローテーションにおける役割を取り戻すには、何が欠かせないだろうか?
彼はとても競争心が強い。プレイオフでチームが成功し、何が大事だったかを彼は目にした。スピードのあるプレイをし、攻撃で素早く決断することや、3ポイントショットが重要になるだろう。守備ではフィジカルにプレイし、難しいマッチアップを積極的に引き受けてほしい。それらができれば…彼の能力はすでに知ってのとおりだよ。
――アーロン・ニスミス、マイルズ・ターナーといった選手たちを中心に守備を築いていかなければならない。マサリンもその可能性がある。
いつも彼と話していることのひとつは、できるだけ攻守両面で最高の選手になるために厳しく指導していくということなんだ。彼のような能力を持つなら、それを生かすためにできる限りをしなければならない。
――昨年は、タイリース・ハリバートンの才能をチームの成功につなげることについて尋ねた。そしてその通りになった。彼はブレイクし、ペイサーズはカンファレンス・ファイナルに進出している。彼を次に待つのは?
彼はまだ24歳になったばかりだ。つまりまだとても若い。成功した時の挑戦は、さらに成功を積もうとすることだ。彼は本当に相手チームの集中を誘う選手だよ。相手は彼に対してフィジカルにプレイしてくる。彼を苦しめるためにできる限りをしてくるんだ。彼はどの試合でも相手チーム最高のペリメーターディフェンダーを相手にしなければならない。
昨季の彼はいくつかケガに対処しなければならなかった。この夏は肉体にハードに取り組んできたよ。より強く、できればもっと耐久力をつけてほしい。彼がそこに集中しているのを知っている。それに夏のオリンピックでの経験が大きな自信となったはずだ。
――パリで出場機会が限られていたことは?
ある程度の出場だった。ただ、一員であるだけで、毎日体育館で(ステフィン)カリーや(ケビン)デュラント、(レブロン)ジェームズなど、歴代最高級の選手たちと一緒におり、彼らが日常的にやっていることを見るだけでも大きい。彼のキャリアにおける今の時点で彼らにとって大事だったことを聞けるじゃないか。そういったことはすべて、プライスレスだよ。
――ファンや市場にとって、インディアナ・フィーバーの意味は? ペイサーズのシーズンへの熱量が、ケイトリン・クラークの加入とWNBAシーズンにつながったかのようだが。
大ファンだよ。私たちはまだダラスに家があり、夏はそこで長く過ごすんだが、4日前にフィーバーとウィングスの試合に行ったんだ。素晴らしい試合だった。フィーバーは第3クォーターに9点のビハインドを背負ったが、反撃し、ケルシー・ミッチェルやクラークらがみんな素晴らしいプレイをして、7点差で勝ったんだ。フィーバーがどのアリーナに行っても活気あふれる。本当にクールだ。
タイリースも(フィーバーの試合でコートサイドに)いつもいる。彼女も我々の試合に何度か来てくれた。街にとって素晴らしいアンバサダーだ。
ケイトリンは素晴らしいシーズンだった。エンジェル・リースもね。彼女たちのWNBA入りは、1979年の(ラリー)バードとマジック(ジョンソン)みたいだよ。彼らがリーグに加わって、NBAは飛躍した。今のWNBAも彼女たちと飛躍している。
原文:The Q&A: Rick Carlisle looks to build on Pacers' 'unexpected success'(抄訳)
翻訳:坂東実藍