【インタビュー】正念場を迎えるグリズリーズのジェンキンズHC

2023-09-23
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(NBA Entertainment)

昨季、タイトルを競うチームと自覚していたメンフィス・グリズリーズは、多くの困難に直面した。そしてすでに新シーズンはもっと困難に出くわすと覚悟している。

グリズリーズの昨季に何よりも影響し、新シーズンに向けた暗雲となっているのは、コート外でのジャ・モラントの振る舞いが、本人やチームのコート上での仕事にも響いたことだ。モラントは3月、ソーシャルメディアに投稿された動画の中で、ナイトクラブで銃をひけらかしたことが分かり、NBAから8試合の出場停止処分を科された。そして5月にも同じことが起き、2023-2024シーズン開幕から25試合の出場停止に。グリズリーズは少なくともクリスマスの週までモラント不在となる。

だが、それだけではない。昨季のグリズリーズはケガにも悩まされた。スターターやリザーブのトップ2人が141試合を欠場したのである。こちらも新シーズンまで尾を引くことになった。アキレス腱断裂のブランドン・クラークは、新シーズンの大半を欠場することになる。

人材の面でも懸念はある。オールディフェンシブチーム入りのディロン・ブルックスと、控えポイントガードのタイアス・ジョーンズが退団した。現時点では、新戦力のマーカス・スマートがその穴をどちらもふさいでくれることを球団は期待している。スマートはかつて年間最優秀守備選手に選ばれた経験を持ち、2か月にわたるモラントの代役として必要とされていた選手だ。だが、その負担は大きい。

周囲の全員に責任感を持たせるようなリーダーであるスマートの獲得は、グリズリーズからモラントに対する「無言のメッセージ」だったのだろうか。

テイラー・ジェンキンズ・ヘッドコーチは、グリズリーズの指揮官として5年目のシーズンを迎える。今月39歳になったジェンキンズHCは、本当に信じている者らしい情熱と勢いで話してくれた。闘志にあふれ、どんな懸念にもポジティブに、そして何より仕事をすることで取り組む。

ジェンキンズ体制最初の4シーズンで、グリズリーズの攻撃は大きく成長した。シーズンごとに平均得点は増えており、昨季は球団最多の1試合平均116.9得点だ。ジェンキンズHCの下で、グリズリーズは34勝、38勝、56勝、51勝をあげてきた。2022年と2023年には、ウェスタン・カンファレンスの第2シードを獲得。2022年は年間最優秀コーチ賞の投票で2位となった。昨季のグリズリーズはフェデックス・フォーラムで35勝6敗を記録。ホームでNBA最高の成績だった。

しかし、プレイイン・トーナメント進出、プレイオフ・ファーストラウンド敗退、2021年はカンファレンス・セミファイナルで優勝したゴールデンステイト・ウォリアーズ相手の敗退と、3シーズンにわたってステップアップしてきたグリズリーズは昨季、プレイオフ・ファーストラウンドで第7シードのロサンゼルス・レイカーズに敗れた。シリーズを決めた第6戦では、85-125と大敗している。

こうして、グリズリーズの2023-24シーズンは重要な一年となった。ジェンキンズHCやグリズリーズが直近で経験した懐疑的な見方と重圧はさらに増しているからだ。

先日シカゴで行われたNBCA(コーチ協会)の会議の際に、ジェンキンズHCが新シーズンについて『NBA.com』に話してくれた(※以下の質疑応答は要約・編集されている)。


――モラントの出場停止からブルックスやジョーンズの退団、以前からのケガの問題や、新戦力たちとの融合など、今季はいくつかの課題に直面している。グリズリーズのオフシーズンをどのように評価しているか。また、トレーニングキャンプに向けてどのような状態か。

このオフシーズンから得られることはたくさんある。もちろん、ロスターに関する動きの一部もそうだ。スマートの加入にはとても興奮している。エリートクラスの選手だ。エリート級のリーダーであり、競技者だね。彼の加入はグループを次のレベルに引き上げてくれたと思う。彼を早く馴染ませ、スピードアップできたらいいが、彼は夏を通じてチームメイトたちと深く関わっていた。ああやって関係を構築してくれるのを見られたのは良かったよ。

それにデリック・ローズも加わった。試合における影響力や、ロッカールームの中、そしてコートの上で何をしてくれるか、経歴を見るだけで分かるだろう。

いくつか厳しい決断を下さなければならず、ディロンとタイアスがいなくなったのは非常に厳しい。彼らは別のところで機会を得るだろう。だが、マーカスとデリックの加入は大きな後押しだ。それと、全般的な成長だよ。ジャレン(ジャクソンJr.)はアメリカ代表で、サンティ(アルダマ)はスペイン代表で国際舞台を戦った。ほかの選手たちもこのオフシーズンを生かしたよ。

――昨季の終わりかたは今季にどうつながる?

私が就任してからの4年間で何かしら良いことをやってきたという自覚はある。ただ、それだけでは十分じゃない。レギュラーシーズン、プレイオフ、オフシーズンと、築き続けていかなければいけないんだ。365日続くもので、次のレベルに進まなければならない。

シーズンが早くに終わったので、選手たちは数週間のオフをとり、それから戻ってきた。多くの選手がサマーリーグにも出場している。コンタクトをとりながら、メンフィスを行ったり来たりし、遠くでもトレーニングしてきた。我々にとっては重要なトレーニングキャンプと重要なシーズンになる。

――モラントが少なくとも最初の25試合で不在となることに、どれだけのいら立ちがあるか。3月は耐えたが、またこのようなことになった。あなたと彼、そしてほかの選手たちは、自分たちをあわれむことなく、どのように乗り越えるのか。

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我々は常にチームとしてのスタンダードを話している。ひとりの個人じゃない。もちろん、ジャが25試合出られないことになり、どうなっていくかについては、彼やほかの選手たち、球団(ザック・クレイマンGM)と話してきた。だが、準備に関しては何も変わらない。チームに戻ってきた時のジャも含め、ロスターの全員が準備を整えていかなければならない。ローテーション入りしていようが、していなかろうが、ケガにも対処し、「次の選手が出てくる」というメンタリティーでなければならない。

これは、言うは易く行うは難しだ。だが、ここ2年のチームを見てくれ。様々な理由でいろいろな選手がいないことも多かった。だが、我々は自分たちがどんなスタンダードでプレイし、毎日どのように仕事していくかを話している。

――出場停止中、モラントがチーム施設でワークアウトや練習を行えるかどうかは決まった?

まだ詳細は決まっていない。我々はできるだけ彼がチームの近くにいられるように願っている。だが、(NBAと)もっと話し合わなければいけない。

――ベンチスタートからの貴重な存在だったブランドン・クラークの近況は?

手術を受けてから予定に変更はない。今はうまく回復しているところだ。とにかく長いプロセスだよ。

――通常、ああいったケガは回復までにまるまる一年を要するのでは?

そうだね。前向きな予想もあれば、「もっと慎重になろう」という見方もある。とにかく段階ごとに進めているよ。もうすぐいくつかフォローアップの検査がある。エナジーや強度がどの程度かを医者が判断できるだろう。でも、まだ道のりは遠い。

――1月にスティーブン・アダムズが右ひざの後十字じん帯を負傷し、残りのシーズンとプレイオフを棒に振ったが、今の状態は?

足の安定性や特にひざの強化など、オフシーズンにやってきたことからは、とても素晴らしくやっているよ。トレーニングキャンプには完全に「Go」という状態になることを願っている。でも、来週いっぱい見ていくよ。

――モラントの出場停止に加え、これだけ多くの負傷者がいて、82試合を通じてロスターが完全な状態だったらと夢に見ることもあるのでは?

それがこのスポーツの残念な現実でもあるんだ。これらの素晴らしいアスリートたちが競う副作用のひとつがケガなんだよ。コーチとしてできるのは、素晴らしいスピリットでケガに取り組んでいる選手たちが集中を保てるようにすることだ。周囲には素晴らしいスタッフやチームメイトがおり、リハビリプロセスを通じて彼らを支えることができる。できるだけ早く健康を取り戻せるように、可能なだけのリソースを与えてくれる。そうして困難を乗り越えて前進を続けるんだ。

ケガで誰かが離脱しても、我々の目標は変わらない。誰がいようがいまいが、我々のスタンダードが変わることはないんだ。誰かが離脱すれば、起用率は変わるかもしれない。でも、練習やワークアウト、試合において、自分たちのあり方はまったく変わらないよ。

――今季のグリズリーズで大きな一歩を踏み出してほしい点はあるか?

全般的に、最高のレベルで競い、勝つために必要なことを期待している。我々はいくつかのテストをこなしてきた。ここ3年のプレイオフで、ファーストラウンド敗退(が2回)と2年前のセカンドラウンド敗退だ。

我々にとって大切なのは、ポストシーズンになったらどうするかではなく、プレシーズンやレギュラーシーズンの毎日で何に取り組んでいくかだ。できるだけ準備を整えておくために何をするのかということだよ。

――モラント不在を考えると、インシーズン・トーナメントはグリズリーズにとって価値が高まるのか。それとも下がるのか。

選手たちは競うのが好きなんだ。だから、意義のある何かとその結果を得るためのもうひとつの機会になる。スキルを調整していくんだ。どのチームもそれぞれの哲学でポストシーズンに向けて構築していく。それがこれからは、シーズンのもっと早い時期に狙えること、もっと早くに勝利や優勝の習慣を身につける機会があるんだ。選手たちがうまく合わせられるように願っている。

原文:Q&A: Grizzlies coach Taylor Jenkins faces a critical season(抄訳)