【インタビュー】ブレイザーズで3年目のビラップスHCがリラードの状況などを語る

2023-09-21
読了時間 約3分
(NBA Entertainment)

NBAチームの大半の指揮官は、2023-2024シーズンに向け、チームに何があり、何がないかをかなりの確実さで把握している。長所や短所をはじめ、どれだけのスター選手がいて、チームに何が必要で、何を目標としているかをリストアップできるだろう。だが、ポートランド・トレイルブレイザーズのチャウンシー・ビラップス・ヘッドコーチは違う。

ブレイザーズはデイミアン・リラードを巡る状況が不透明だ。リラードは近くトレードされるのか。それともトレードはないのか。遅かれ早かれトレードされるとの見方は強い。だが、トレーニングキャンプが迫る中、ビラップスHCがそのように見込むことはできないだろう。現時点でリラードはロスターにいるのだ。

3シーズン目を迎えるだけに、ビラップスHCにとっては重要な局面だ。2021年6月に就任し、ここ2シーズンは60勝104敗という成績だった。ブレイザーズは前任者テリー・ストッツの下で8シーズン連続のプレイオフ進出を果たしていたチームだ。

ネイト・マクミラン体制最初の2シーズン(2005-2006シーズンと2006-2007シーズン)で、ブレイザーズは164戦53勝111敗という成績だった。だが、2007-2008シーズンで勝率5割を達成し、その翌シーズンからは3年連続でプレイオフに進出している。ただ、現在のブレイザーズは異なる状況にある。リラードが去るなら、再建に向かうことが間違いない段階だ。

9月25日(日本時間26日)で47歳になるビラップスHCは、選手たちを味方につけてきた。昨季の終わりに、ユスフ・ヌルキッチはチームがビラップスHCのためにプレイすることを望んでいるとし、「みんな責められるかもしれないけど、チャウンシーのことは責められないと思う」と述べている。

ファンの多くも同様と見られる。『The Athletic』によるファン投票では、ブレイザーズの苦戦の主な理由として指揮官と答えたファンは、わずか10%だ。オーナー、ゼネラルマネジャー、選手たちに次ぐ数字だった。

しかし、現役時代にオールスターに5回選出され、2004年に優勝したデトロイト・ピストンズのリーダーだったビラップスは、責任から逃れようとしない。

先日シカゴで行われたNBCA(コーチ協会)の会議の際に、ビラップスHCが新シーズンについて『NBA.com』に話してくれた。


――現役時代はNBAで17シーズン、1000試合超を戦ってきた。ヘッドコーチになってからは2年。指導者に完全に移行できたと思うか?

もちろんだ。完全に移行できたよ。

――思っていたとおりだったか。現役時代はコーチたちをどう思っていた?

まったく違うね。師事していたコーチたちを常にリスペクトしていたし、反発したことはない。とても高く評価していた。コーチと口論したこともない。言い返したこともね。とにかく自分はそういうタイプの選手じゃなかった。自分が試合に出ていようが、出ていなかろうがね。(立場を)尊重していた。今も同様の敬意を求める。でも、選手たちには大きな敬意を示しているよ。

指導はとても楽しい。でも、指導者になることを考えている元選手と話す時は、『本当にしっかり準備しなきゃいけない。選手時代の10倍は時間が必要になる。でも、本当にやりたいなら、そのことも考えなくなる』と言っている。すごく楽しいんだ。

――2020-2021シーズンの1年間、ロサンゼルス・クリッパーズでタロン・ルーのスタッフを務めた。『ESPN』とクリッパーズではコメンテーターとして6シーズンだ。この仕事に備えるために、ほかにやっておきたかったことはあるか?

コーチになりたいと決意するだけでも、長い時間がかかった。そしてそう決意してすぐ、クリッパーズの仕事をもらったんだ。もちろん、まだ1年目でしかなかった。2、3年やっていたらもっと準備できたか? もちろんさ。学ぶことはとても多いんだよ。

でも、3年目を迎える今は、1年目に臨む時とはまったく違う。自信が完全に異なるんだ。当時の自分は分かっていなかったと知っている。今はプレイの仕方や教え方などを分かっているんだ。本当にこの仕事に慣れた。良い気分だよ。大きなことだ。

――リラードの状態が解決していないだけに、チームはとても大きな不安を抱えて待っているはずだ。理想的ではないだろう。ネガティブな意味で気を散らされるのでは?

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もちろん、落ち着かないし、難しいよ。でも、私にできるのは、自分たちの選手にベストを尽くす責任を持つことだけだ。どうなるかは知らない。私にコントロールできることは何もないんだ。でも
誰が今のチームにいて、この夏に誰と仕事してきたかは分かっている。誰に興奮しているかをね。本当に、私にできるのは、自分たちの選手のために全力を注ぐことだけなんだよ。何か起きるならその都度どうなるかを見ていこう。シェイドン(シャープ)の進歩はうれしいし、スクート(ヘンダーソン)やアント(アンファニー・サイモンズ)を指導するのもうれしい。

デイム(リラード)がどうなるか? 彼のことや彼を指導できることを私がどう思っているかは周知のとおりだ。とにかく、様子を見よう。どうなるかは分からない。でも、自分にできるベストを尽くす準備は整える。

ファンの大半は、どういうトレードでリラードを放出するにしても最高の見返りを得ようというジョー・クローニンGMを支持しているという報道を見た。

私たちには素晴らしいファンがいる。ブレイザーズのファンベースがトップクラスなのは、NBAの誰もが知っていることだ。何があろうと、彼らは変わらずデイムのファンだというのが真実だよ。彼がどこでプレイしようと、ファンの100%がデイムのファンでいるだろう。でも、彼らはブレイザーズのファンでもある。

――リラードが公にトレードや希望する移籍先について動くことで、これまでの良い関係が損なわれる可能性は?

デイムは素晴らしかった。ブレイザーズのファンにとっても、球団にとってもね。球団の誰に対しても決してネガティブではなかった。デイムは誠実なんだ。ずっとプロフェッショナルだった。目の前にあるのはビジネスなんだ。どちらにもプレッシャーはないと思う。

――だが、この件が尾を引けば、彼にとって厳しい状況になったり、チーム状況に損害を与えたりしないだろうか?

分からない。デイムは私がやってきた中で最も安定した人物のひとりだ。このプロセス全体が彼にとても重くのしかかっているかもしれない。とにかく本来の彼じゃないんだ。

でも、彼はキャリアの岐路にある。そして自分と家族にとって最善と考えることをしている。私は常にそれを応援したい。

――ドラフト全体3位で指名したヘンダーソンへの期待が大きいのは当然だ。1年目の選手として、現実的にどうだろうか?

スクートはこのリーグでスターになるよ。攻守両面でとても激しくプレイする。非常に意欲的だ。プレイメーカーで、本物のポイントガードだよ。リーダーシップもある。全世界が注目するようなエキサイティングな選手になるだろう。我々のファンは安心して楽しめるはずだ。

――このように若手が中心の中で、ジェレミー・グラントはどうフィットしていくか。29歳で新たに5年1億6000万ドル(約236億8000万円/1ドル=148円換算)の契約を結び、ロスターの大半と世代がずれる選手に払いすぎとの批判もあった。

我々がやっていることにジェレミーは完璧に合うと思う。バスケットボールを愛している男だ。攻守両面で自分勝手にならない。速いプレイをする。正しくプレイすることを望む。ウチの若手たちにとって、彼は完璧な存在となるだろう。彼もチームに戻ってきて興奮しているよ。

――フロッピングの判定と、コーチに2回目のチャレンジが可能になったことのどちらがよりシーズンに影響すると思うか。

しばらくしたらフロッピングは落ち着くと思う。かなりのペナルティー(フリースロー)だ。チャレンジについては、本当にうれしい。いくつかの試合で決め手となるだろう。

――昨季のあなたが使ったチャレンジは、ヘッドコーチの中で最も少ない10回だった。新シーズンでは変わる?

どうだろう。私はずっと思っているが、第2クォーターに2、3点差でチャレンジ可能な判定があっても、チームのベストプレイヤーが4つ目(のファウル)を取られない限り、取り返していく機会はたくさんある。選手たちには、“これ”(リプレイを示すジェスチャー)にこだわるなと言ってきたんだ。

原文:Q&A: Chauncey Billups on where he stands entering season 3 with the Blazers(抄訳)