NBAプレイオフ2024開幕から2試合、インディアナ・ペイサーズのパスカル・シアカムは素晴らしい出来を見せている。
オールスター選出2回のシアカムは、ポストシーズン最多の平均36.5得点をあげ、フィールドゴール成功率64.6%を記録している。4月23日(日本時間24日)の試合では37得点、11リバウンドをマーク。プレイオフ開幕から2試合連続で35得点&10リバウンド超は、ウィルト・チェンバレン以来の記録だ。
ボックススコアが示す素晴らしさだけではない。シアカムはまさにペイサーズがポストシーズンに向けて必要と考えていたものをもたらしている。シアカムの活躍で23日(同24日)の第2戦を125-108と制したペイサーズは、ミルウォーキー・バックスとのシリーズを1勝1敗のタイとした。
ブルース・ブラウンJr.とジョーダン・ウォーラ、2024年の全体19位と29位の指名権、2026年の保護条件つき指名権と引き換えにシアカムを獲得したトレードは、ペイサーズにとって当たりだったようだ。
ここでは、なぜシアカムがペイサーズにそれほど見事にフィットしているかをまとめる。
パスカル・シアカムは自動的にミスマッチ誘発
バックスは今シリーズで多くの理由からヤニス・アデトクンボの不在を強く感じているだろう。そしておそらくその最大の理由が、シアカムに対抗できるチャンスを持つロスターで唯一の選手がアデトクンボということにある。
バックスはシアカム相手にブルック・ロペスを試した。だが、守備で衰えたかのようにされている。ロペスはクローズアウトやペースを保つことができなかった。
ボビー・ポーティスも同じようにやられている。バックスがより小さい選手をシアカムにつかせようとすると、すぐにポストアップから簡単に得点された。ゾーンにしても、シアカムには崩される。
シアカムはビッグマンにとってあまりに速く、ウィングにとってあまりに強いのだ。より小さい選手がマークの時は、タイリース・ハリバートンが見事にシアカムを見つける。ハリバートンがまだベストでない中、シアカムはペイサーズの攻撃をけん引しているのだ。
シアカムはトランジションですさまじく、年をとってスローなバックス陣営を打ち破る。ハリバートンのフォワードバージョンだ。素早く自らイージーな得点をあげている。
また、シアカムは平均4.0アシストを記録し、うまくバランスのとれたパフォーマンスを見せるなど、効果的なパスも出している。
シアカムの得点に関してさらに見事なのは、そのすべてがペイサーズの攻撃の流れの中で自然に生まれていることだ。指揮をとるのはハリバートンに変わりない。だが、相手の注意をすべて引きつけているのがシアカムなのだ。ボールを持たないところで素晴らしく、カッティングで簡単な得点をあげ、スクリーンでアドバンテージを生む。
まさにこのために、ペイサーズはシアカムを獲得したのだ。プレイオフでハリバートンの負担を減らすのに完璧な、次なるスター選手なのである。
パスカル・シアカムのショットが復活
今季のシアカムは出だしが厳しかった。最初の30試合で3ポイントショット成功率はわずか24.1%だったのだ。だが、ペイサーズにトレードされて以降、レギュラーシーズンの41試合で38.6%を記録している。
そしてプレイオフになり、シアカムのショットは完全復活を遂げた。それがバックスの守備戦略を狂わせている。バックスのプランは、ロペスをシアカムから離し、リムを守れるようにすることだった。しかし、シアカムがシリーズ成功率50%の3Pを沈め、その戦略を崩したのだ。ハリバートンとのピック&ロールからポップし、ロペスの守備を無効化させている。
3Pが決まる時のシアカムは、完全に異なる選手だ。ペイサーズは、シアカムのショットが通算の成功率に戻ることに賭けた。そして彼はそれが賢い手だったことを証明している。
ペイサーズの守備を支えるパスカル・シアカム
プレイオフに入ってからの2試合で、ペイサーズは守備がレギュラーシーズンから大きく向上した。1試合平均の失点は11.7点少ない。
レギュラーシーズン | プレイオフ | |
---|---|---|
ディフェンシブレーティング | 117.6 | 114.2 |
順位 | 24/30 | 11/16 |
平均失点 | 120.2 | 108.5 |
順位 | 27/30 | 13/16 |
その支柱となっているのが、平均未満のディフェンダーである味方の弱点をカバーするシアカムだ。ガード陣がスクリーンから抜かれても、リムでシアカムがレイアップを叩き落とす。
シアカムはコート全体を飛び回る。クローズアウトで3Pをブロックする場面もあった。ビッグマンのロペスからデイミアン・リラードのようなスピードのあるガードまで、あらゆる選手をスイッチで守ることができている。
今の彼は2019年と2020年のオールディフェンシブチームで票を投じられた時のようだ。そのバージョンのシアカムは、トロント・ラプターズで失われていたが、ペイサーズで復活したのである。
理論上、シアカムとハリバートンのコンビは理にかなっている。そしてこのプレイオフで、実際にそれを目にしているのだ。今のシアカムは、どのチームも生かせるようなプレイオフのスター選手に見える。それだけに、他チームは彼をトレードで獲得しなかったことを悔やんでいるはずだ。
原文:This is why Pacers traded for Pascal Siakam: Spicy P has been best player not named Jokic in 2024 NBA Playoffs(抄訳)
翻訳:坂東実藍