NBAファイナルが1勝1敗のシリーズタイで6月7日(日本時間8日)の第3戦に向かうと予想した人は少ない。だが、マイアミ・ヒートとデンバー・ナゲッツのNBAファイナルは非常に興味深いシリーズとなっている。
第2戦でヒートはナゲッツの守備にプレッシャーをかけられると示した。一方で、ナゲッツはここまでのいずれの試合でも、ヒートが何をしようと止めるのが極めて難しいと示している。
第3戦を前に、それぞれのチームのアドバンテージを見てみよう。
ナゲッツのアドバンテージ:ヒートに止められない攻撃
第2戦ではニコラ・ヨキッチをスコアラーにする効果が騒がれた。第2戦のヨキッチは41得点をあげたが、4アシストにとどまり、チームは108-111で敗れている。
しかし、少し分析すると、ヨキッチが何度か味方に良いチャンスをつくったのが分かる。唯一の問題は、チームメイトたちがショットを決められなかったということだ。
さらに重要なのは、第2戦でヒートの守備が騒がれたとはいえ、それでもナゲッツは止められなかったということだ。108得点という数字は多くないように見えるが、それは試合のペースがスローだったからでしかない。
第2戦を通じてナゲッツは見事に得点を積み重ねた。『Cleaning the Glass』によると、ポゼッションあたり1.26得点という数字は、今季の試合で17番目に多い。それでも敗れたのは、ヒートにさらに良い数字(ポゼッションあたり1.29得点)を許したからだ。
ヨキッチはまだヒートに自分を止めるための答えを見つけさせていない。フィールドゴール28本で41得点をあげている。長期的な解決策にヒートを至らせていないのだ。
さらに、ヨキッチはポストで見事なまでに支配的だった。ポストでヨキッチがボールを持った時のナゲッツは、ポゼッションあたり2.22得点を記録している。こういうプレイでは、ヨキッチに抗わずにダンクさせるほうがヒートにとって良かったかもしれないほどだ。
ナゲッツのアドバンテージ:バトラーを抑えたゴードン
ナゲッツが勝てなかったのは、ヒートのジミー・バトラーがNBAファイナル2020でロサンゼルス・レイカーズを相手に2勝をもぎとった時のような見事なパフォーマンスを見せたからだと思った。しかし、それは間違いだった。
第2戦でナゲッツがバトラーに許したのは21得点。堅実だが見栄えのしない数字だ。バトラーをプレイオフ序盤戦のようなビッグスターにさせなかった。ボストン・セルティックスとのシリーズでサイズに苦しんだバトラーを、アーロン・ゴードンのサイズで苦しめたのだ。
主にゴードンが守った時、ナゲッツはバトラーにFG9本中5本成功とうまくショットを決められた。だが、成功率よりも重要なのは試投数の少なさだ。
大きな体のゴードンは、ショットを狙うバトラーを消極的にした。パスを出させたり、スイッチでケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、ジャマール・マレーといった、よりサイズの小さい選手を狙わせようとしたのである。
ナゲッツはヒートに、勝つためにバトラーのシグネチャーゲームは必要ないと示されてしまった。だが、ゴードンの守備が破られなければ、ヒートをより楽にすることはないだろう。
ヒートのアドバンテージ:ナゲッツ守備の規律のなさを露呈
第1戦のヒートはフリースロー試投がわずか2本だった。第2戦ではそれが20本に増えている。第1戦の試合後、ヒートはリムへのプレッシャーを増すことが目標と話していた。だが、第2戦のFTの大半は、ジャンプショットでナゲッツのファウルを誘ったからだ。
ヒートのFTの多くは、コールドウェル・ポープにファウルされてのものだった。2回にわたり、3ポイントショットの際に彼にファウルされている。ナゲッツの攻撃を止めることができないヒートだけに、FTを獲得できたのは、得点でペースを保つための良い兆候だろう。
第2戦でナゲッツが守備のローテーションで多く失敗し、ヒートはクリーンなかたちでのショットやオープンな3Pを打つことができた。その多くは、ボールがないところでの動きを続けた結果だ。
特にナゲッツを困らせたのが、ダンカン・ロビンソンだ。第4クォーターの重要な局面でのランで、ヒートは2回続けて同じプレイで3Pとレイアップにつなげている。
マックス・ストゥルースもスクリーンプレイでナゲッツに止めさせなかった。コールドウェル・ポープとマイケル・ポーターJr.を相手にワイドオープンの3Pにつなげた場面では、コールドウェル・ポープをいら立たせている。その数分後にも、マレーとゴードンを相手に同じ動きで3Pを決めた。
第2戦のヒートは3P成功率48.6%を記録した。おそらくそれは持続可能なものではない。だが、彼らはその動きで質の高いショットをつくり、良い成功率を記録し続けるはずだ。
ヒートのアドバンテージ:試合のブレーキのかけ方を発見
下馬評で不利とされるチームが、より才能ある相手に対して勝利を目指すなら、できる限りの変化をつくるのが最善だ。ここでは2つのことが含まれる。ポゼッションの数を制限し、3P試投を増やすことだ。
その両面でヒートは素晴らしい仕事をしてきた。Cleaning the Glassによると、ファイナルは平均88.5ポゼッションだ。ちなみに、レギュラーシーズンのリーグ平均は約99ポゼッションだった。
これはヒートのゾーンディフェンスによるところでもある。それが試合の流れを途切れさせるのに役立ったのだ。
基本的には、2016年にクリーブランド・キャバリアーズがゴールデンステイト・ウォリアーズを相手に用いて優勝したのと同じだ。1試合平均92ポゼッションに抑えたことで、キャバリアーズはウォリアーズの速いテンポの攻撃にブレーキをかけた。そして試合結果を左右するのが、数本のショットとなるようにしたのだ。
また、ヒートは3Pも多く放っている。第2戦では45%近い確率で3Pを狙った(レギュラーシーズンのリーグ平均は39%だ)。そして彼らがそれらを外することはないかのようだった。
これは賢い戦略だ。ヒートは自分たちが望むプレイスタイルで進めるのをナゲッツに止めさせなかったのである。