NBAファイナル2023第3戦は、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチにとってキャリア最高の試合だったかもしれない。MVPを2回受賞している選手にとってだから、大きなことだ。
第3戦でヨキッチは32得点、21リバウンド、10アシストを記録し、ナゲッツを勝利に導いた。NBAファイナルで30得点&20リバウンド&10アシスト超は史上初のことだ。また、ヨキッチはマイアミ・ヒートを今プレイオフで彼らにとって2番目に少ない94得点に抑えるのにも貢献した。
ヨキッチは守備に限界があると言われることが多かった。だが、特に第3戦のヨキッチは、守備でヒートを苦しめることをいくつかやっていたのだ。
ここではその点を分析してみよう。
第3戦のニコラ・ヨキッチの守備が最も印象的だった理由
プレイ
分析
ヨキッチのショットが決まらず、ヒートのカイル・ラウリーがボールを運ぶ。
ラウリーがペースを上げてすぐにショットを狙わなかったことが、いくつかのクロスマッチにつながる。最も注目は、ジミー・バトラーをマークしたのがヨキッチになったことだ。
ヒートはすぐにそこを生かそうとした。ラウリーがケイレブ・マーティンにボールを渡し、マーティンはバトラーにパスを出す。そしてヨキッチと1on1を仕掛けるスペースをバトラーに与えるべく、マーティンはコートの反対側へと向かった。
今プレイオフでバトラーはこういう状況で相手チームを苦しめてきた。『NBA.com』によると、アイソレーションから1試合平均5.5得点をあげている。多くの場合で、バトラーは誰がマークについても強さやスピードで優位に立つ。
自分よりバトラーのほうが圧倒的に速いと知るヨキッチは、バトラーが進める方向がひとつになるように、ベースラインに向けて追いやる。
バトラーにレイアップを打たせないよう、ヨキッチはうまく足を動かす。そしてそれだけではない。
ヨキッチは、バトラーのバム・アデバヨへのパスを完璧に読んだのだ。
ヨキッチがバトラーを離れてアデバヨに向かい、ボールに対してプレイしにいく速さを見てみよう。
アデバヨに決めることが可能なショットを打たせることになったが、ヨキッチはそれを外させるだけのことをしたのである。
重要性
ヨキッチはフットワークが速いわけではない。一流のリムプロテクターでもない。しかし、ハイレベルな読みができるバスケットボールの知識を持つ。バスケット付近での存在感は凄まじい。6フィート11インチ(約211センチ)、ウィングスパンが7フィート3インチ(約221センチ)の選手を相手に得点するのは簡単ではないのだ。
これも
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これも
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第3戦のヨキッチはヒートのドライブにうまく対応し、自分をできるだけ大きく見せ、それに対してバトラーやアデバヨ、マックス・ストゥルースといった選手たちがショットを打たなければならないようにした。ヒートがただレイアップを失敗しただけのように見える場面も、彼らを迷わせたり、ショットを調整しようとさせるだけの微妙なことをヨキッチがしていたのだ。
その結果、第3戦のナゲッツは制限区域内からのヒートのショットを23本中8本成功に抑えた。フローターレンジからのショットも23本中9本成功にとどめている。ペイント内から29本中17本成功を記録された第2戦とは大きな差だ。
もちろん、ヒートが外したショットのすべてにヨキッチの影響があったわけではない。だが、その多くに影響したのだ。ヨキッチは2ブロックも記録しているが、そのひとつは、カバーした範囲から非常に素晴らしいものだった。
第2戦でナゲッツはヒートにペリメーターからのショットで苦しめられた。それが第3戦でオープンな3ポイントショットを制限できたのは、ヨキッチのこれらのプレイが役立ったからだ。
シリーズの序盤、バトラーはヨキッチの守備について問われ、「地獄のようなディフェンダー」と評して賛辞を寄せている。特にヨキッチの守備は「ペイントに入った時にいつも相手に決断させる」とし、さらにディフェンシブリバウンドを拾ってからのボール運びも相手にとって痛手になると述べた。
今後もヨキッチは守備に関して限界があるだろう。だがそれは、守備でヨキッチがインパクトを残せないという意味ではない。特に、適切なスキームの中で適切な選手たちが周囲にいればなおさらだ。ヨキッチは第3戦で過去最高級のパフォーマンスを見せ、それを証明した。