スポーツではよく、安全なリードは存在しないと言われる。だが、NBAにおいては、歴史が逆転不可能と証明してきたリードがひとつ存在している。
NBAプレイオフの歴史において、最大7戦制の4勝先取方式でシリーズ0勝3敗となったケースは156回。そのうち、4チームが3連勝で第7戦まで持ち込んだ。ただ、逆転してシリーズを制した例はない。
2023年のイースタン・カンファレンス・ファイナルでは、マイアミ・ヒートを相手に0勝3敗となったボストン・セルティックスが歴史をつくりかけた。第4戦と第5戦を制してマイアミでの第6戦にも勝利し、史上初の0勝3敗からの逆転シリーズ制覇に近づいたのだ。
しかし、最後はホームでヒートに敗れ、歴史に新たな1ページを刻むことはできなかった。
2023-24シーズンのプレイオフでは、ウェスタン・カンファレンスのファーストラウンドでフェニックス・サンズがミネソタ・ティンバーウルブズを相手に、ロサンゼルス・レイカーズがデンバー・ナゲッツを相手に、ニューオーリンズ・ペリカンズがオクラホマシティ・サンダーを相手に、それぞれシリーズ開幕3連敗を喫し、やはり逆転することができていない。
また、両地区の決勝でも、西でウルブズがダラス・マーベリックスを相手に、東でインディアナ・ペイサーズがボストン・セルティックスを相手に、シリーズ0勝3敗という崖っぷちに立たされ、そのまま敗退を余儀なくされている。
そして両カンファレンス・ファイナルに続き、NBAファイナル2024もシリーズ0勝3敗が実現した。セルティックスが3連勝を飾り、マーベリックスは後がなくなっている。
ルカ・ドンチッチやカイリー・アービングを擁するマーベリックスは、NBAプレイオフの歴史を塗り替えることができるだろうか。
『スポーティングニュース』では、NBAプレイオフでシリーズ0勝3敗から第6戦ないし第7戦に持ち込んだ過去のケースを振り返った。
NBAプレイオフで0勝3敗から第6戦に持ち込んだチーム
年 | ラウンドとチーム | シリーズ結果 |
2022 | 東地区 1回戦 ラプターズ | 76ersが4勝2敗で勝利 |
2015 | 東地区 1回戦 バックス | ブルズが4勝2敗で勝利 |
2013 | 西地区 1回戦 ロケッツ | サンダーが4勝2敗で勝利 |
2013 | 東地区 1回戦 セルティックス | ニックスが4勝2敗で勝利 |
2010 | 東地区 決勝 マジック | セルティックスが4勝2敗で勝利 |
2007 | 東地区 準決勝 ブルズ | ピストンズが4勝2敗で勝利 |
2000 | 東地区 準決勝 76ers | ピストンズが4勝2敗で勝利 |
1996 | NBAファイナル スーパーソニックス | ブルズが4勝2敗で勝利 |
1962 | 西地区 決勝 ピストンズ | レイカーズが4勝2敗で勝利 |
1949 | NBAファイナル キャピトルズ | レイカーズが4勝2敗で勝利 |
1947 | 準決勝 キャピトルズ | スタッグズが4勝2敗で勝利 |
NBAで0勝3敗から第7戦に持ち込んだチームは?
セルティックス(2023年 対ヒート)
2023年のイースタン・カンファレンス・ファイナルで、セルティックスはシリーズ0勝3敗から第7戦に持ち込んだ史上4チーム目となった。
だが、そこまでの道のりは容易ではなかった。第4戦と第5戦で快勝したセルティックスは、第6戦で歴史的チャンスを失いかけたのだ。残り4分で10点差をリードしながら、一瞬のうちに1ポゼッションゲームまでリードを縮められたのである。
残り3秒にはジミー・バトラーに3本のフリースローを決められ、1点のビハインドを背負った。さらに、決まれば勝利というマーカス・スマートの3ポイントショットが外れる。しかし、ホワイトの逆転決勝ブザービータープットバックで、セルティックスはボストンでの第7戦に持ち込んだ。
NBAの歴史で一度も成し遂げられなかったことまであと1勝に迫ったセルティックスだが、ホームでの第7戦は前半から二桁のビハインド背負い、最大23点差をつけられ、84-103で黒星。史上2チーム目となる第8シードからのNBAファイナル進出を許すことになった。
ブレイザーズ(2003年 対マーベリックス)
第6シードのブレイザーズは、ダーク・ノビツキーを擁する第3シードのダラス・マーベリックスと対戦したNBAプレイオフ2003のファーストラウンドで0勝3敗とリードを奪われた。
平均8.7点差で3連敗を喫したブレイザーズだったが、第4戦と第6戦で快勝。第5戦は4点差で制し、第7戦まで持ち込んだ。
だが、舞台をダラスに戻しての第7戦、マーベリックスのノビツキーに31得点、11リバウンドを許し、95-107で敗れた。
ナゲッツ(1994年 対ジャズ)
ナゲッツは1994年に歴史をつくりかけた。
第8シードから初めてファーストラウンドを突破したチームとなったこの時のナゲッツは、ウェスタン・カンファレンス・セミファイナルで第5シードのユタ・ジャズに冷や汗をかかせたのだ。最初の3試合を落としたナゲッツだったが、第3戦は1ポゼッション差だった。
そして第4戦を1点差で制し、敗退決定を回避したナゲッツは、ロードでの第5戦も8点差で勝利。さらにホームでの第6戦にも3点差で勝ったのだ。
しかし、ソルトレイクシティでの第7戦は、カール・マローンに31得点、14リバウンド、6アシストを許し、ジャズに10点差で敗れている。
ニックス(1951年 対ロイヤルズ)
1951年のNBAファイナルで、ニューヨーク・ニックスは同じ州のロチェスター・ロイヤルズに最初の3試合で敗れた。
敗退の危機に瀕したニックスだが、第4戦を6点差、第5戦を3点差、第6戦を7点差で制した。
だがロチェスターでの第7戦は、ロイヤルズのアーニー・ライゼンに24得点、13リバウンドを許し、75-79で敗戦。1951年のNBAタイトルを取り逃した。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。
翻訳:坂東実藍
編集:スポーティングニュース日本版編集部