前回はフリーエージェンシー(FA)終了間際にNBA全30チームのランク付けをしたが、サマーリーグとオリンピックが終了し、ランキングを更新するタイミングになった。
注目記事:大谷翔平の最新成績&ランキングまとめ(外部配信)
夏のトーナメントでは、リーグを代表するスター選手たちがどのようなプレイをするのか、また若手選手の多くがどの程度貢献する準備が整っているのかを知ることができた。
ボストン・セルティックスは、ジェイソン・テイタムのオリンピックでの不甲斐なさにもかかわらず、このランキングのトップに君臨している。
ここでは、この1か月でNBA全30チームの順位がどのように変化したかを紹介する。
パリオリンピック2024終了後のNBAパワーランキング
ティア1:優勝候補
1. ボストン・セルティックス(—)
セルティックスは前回このランキングで1位だった。それ以来、ちょっとした波乱がいくつかあった。ジェイレン・ブラウンは自分を差し置いてチームメイトのデリック・ホワイトがオリンピック代表に選ばれたことに不満を表明し、テイタムはパリで出場した試合ではジャンプショットを16本打って1本も決められなかった。
だが、長い目で見ればどれも問題ではない。
セルティックスは昨季リーグを席巻したときと同じロスターを確保し、主力選手もまだ全盛期。シーズン序盤はクリスタプス・ポルジンギスがオフシーズンの手術からの回復のために欠場するが、彼がいなくても勝てることはすでに証明済みだ。
優勝するためには彼らを倒さなければならない。
2. オクラホマシティ・サンダー(—)
サンダーは2位をキープ。アレックス・カルーソとアイザイア・ハーテンシュタインというプレイオフで実績のある選手の加入と、チーム内での若いコアの育成により、彼らは今季大幅に飛躍するはずだ。
シェイ・ギルジャス・アレクサンダーとルー・ドートはオリンピックで良いプレイを見せた。ギルジャス・アレクサンダーは誰に対しても得点できることを見せ続け、ドートはディフェンス面で競争相手を封じ込めた。
このチームは非常に層が厚く、よく指導されたチームである。そして、このチームには試合終了間際にビッグショットを打てる正真正銘のMVP候補がいる。
3. ダラス・マーベリックス(—)
前回このランキングを発表して以来、マーベリックスには特に何も起きていない。ダンテ・エクサムはオーストラリア代表で活躍し、ルカ・ドンチッチはオリンピックを欠場した。
ウェスタン・カンファレンスの王者はこのオフ、クレイ・トンプソンとクエンティン・グライムズを加えてショット力の不足を解消し、かなり改善されている。デリック・ジョーンズJr.は抜けたが、新加入のナジ・マーシャルはより優れた選手だ。
ドンチッチとカイリー・アービングがもう1年フルシーズンを一緒にプレイすればケミストリーはさらに向上するはずだ。サポーティングキャストも理論上さらに良くなっており、このチームはより危険な存在になるだろう。
4. ニューヨーク・ニックス(—)
ニックスは先月、小さいながらも重要な動きを見せた。プレシャス・アチューワを獲得して待望のビッグマンを補強したのだ。サマーリーグでは素晴らしいプレイを見せたルーキーのタイラー・コレックがすぐにでも貢献できそうだ。
その結果、ニックスはリーグ屈指のスターティングファイブのひとつとして層が厚くなった。ミケル・ブリッジズとジュリアス・ランドルの存在は、昨季のプレイオフ第2ラウンドで健康な選手を使い果たしたニックスにさらなる得点力を与えるはずだ。トム・ティボドーHCは契約を3年延長し、フランチャイズにさらなる安定をもたらしている。
5. フィラデルフィア・76ers(—)
ジョエル・エンビードはオリンピックの序盤で調子が出ず、あまり良い結果を残せなかったが、重要な場面はいくつかあった。特に準決勝のセルビア戦では、終盤に7連続得点で逆転に貢献している。
76ersはレギュラーシーズン中、MVP級のエンビードをそれほど必要としないだろう。タイリース・マクシーの継続的な成長とポール・ジョージの加入は、ビッグマンの負担を軽減するのに役立つはずで、それはリーグ最高のトリオの1つを構成することを意味する。
6. ミルウォーキー・バックス(+3)
バックスはFAの開始時にはあまり動かなかったが、終了時には最高の動きを見せた。チームを改善する手段はほとんどなかったが、トーリアン・プリンス、デロン・ライト、ギャリー・トレントJr.という堅実なベテランロールプレイヤーを獲得している。
プリンスとライトは堅実なディフェンダーで、昨年バックスが経験した不安定なペリメーターでの守備の問題を解決してくれるはずだ。トレントはどちらかというとギャンブラーではあるが、多くのスティールを獲得し、Cleaning the Glassによれば昨年19位だったトランジション攻撃の火付け役となるだろう。
最も重要なことは、ヤニス・アデトクンボが依然として世界屈指の選手であることを再認識させたことだ。彼はギリシャ代表として1試合平均25.8得点、フィールドゴール成功率67.8%という驚異的な数字を残し、オリンピックの全選手でトップだった。
バックスはファイナルまでのすべてのプレイオフシリーズでベストプレイヤーを擁することになり、選手層の薄さも解消された。そのため、イースタン・カンファレンスの全チームの中でバックスはこの1か月で順位が最も大きく上昇している。
7. ミネソタ・ティンバーウルブズ(-1)
オリンピックでのアンソニー・エドワーズの1試合12.8得点はチーム3位だった。彼の3ポイントショットはますます威力を増しているようで、パリでは48.0%を記録。まだ賭けに出て失敗することもあったが、スイッチが入ったときの彼のディフェンスのプレッシャーは圧倒的だった。彼はリーグの次の顔に成長しつつある。
ティンバーウルブズが順位を落としたのは、ルディ・ゴベアのプレイが効果的でなかったからだ。彼はフランスにとって最も重要な場面で影を潜めてしまった。彼はビッグゲームにおいてインパクトの弱いプレイを見せ続けている。
8. デンバー・ナゲッツ(-1)
セルビア代表のニコラ・ヨキッチはパリオリンピックでの銅メダル獲得に貢献した。彼はポストで止めようがない。気になる傾向は、彼の3Pでの貢献の少なさだ。彼は3Pを16.7%しか決められなかった。これはプレイオフでも同様で、その成功率はわずか26.4%だった。
ナゲッツにとってもうひとつの厄介な傾向は、ジャマール・マレーのプレイだ。カナダ代表として出場した彼は、FG成功率わずか29.0%を記録し、自分を見失っているように見えた。
それでもナゲッツはヨキッチを擁する西地区における有力な優勝候補だ。しかし、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープを失い、マレーが苦戦している状況では、オフシーズン中に競争相手の多くが良くなったことを考慮すると心配にならざるを得ない。
ティア2:プレイオフ進出有力
9. クリーブランド・キャバリアーズ(+1)
昨季のキャブスは48勝をあげたものの、期待どおりではなかったという意見がある。ロスターには多くのタレントがいるが、JB・ビッカースタッフHCは奇妙な組み合わせによってチームの最大限の力を引き出すことができなかったようだ。
ケニー・アトキンソンはこの夏、フランスのアシスタントコーチを務めながら、同じような状況に直面。彼は、ビクター・ウェンバンヤマとルディ・ゴベアをペアで出さないなど決定的な手を打ち、準優勝に貢献した。準々決勝(カナダ戦)では、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのガード方法についてアドバイスし、彼がクリエイティブな思考を持ち、試合中の戦術に長けていることを見せつけている。
10. フェニックス・サンズ(+4)
サンズにはロスターの層の薄さを解消する手段があまりなかったが、FAの最後にいくつかのホームランを放った。まず、タイアス・ジョーンズという堅実なスターターをベテランミニマム契約で獲得。さらにモンテ・モリスというもう1人の堅実な新しいポイントガードの追加で、昨季からのチームの最大の弱点の1つに直接対処した。
また、ケビン・デュラントとデビン・ブッカーがオリンピックで素晴らしいプレイを見せ、この2人が互い高め合えるという自信を得た。ブッカーは、チームUSAのためにエゴを捨て必要であれば自分の役割を縮小することも厭わなかった。それは、デュラントやブラッドリー・ビールが活躍する試合では重要なことかもしれない。
11. オーランド・マジック(-2)
マジックにはまだ優勝を狙える最高レベルのタレントはいないが、それ以外はすべて揃っている。彼らはリーグで最も層の厚いチームかもしれない。
バクナー兄弟は優れた得点源としてドイツのオリンピック4位入賞に貢献した。フランツのジャンプショットにはまだ疑問が残る。彼の3P成功率は昨季の28.1%に続きわずか20.0%に終わった。このチームを次のレベルに引き上げるには、彼が3Pの脅威となる必要がある。
12. インディアナ・ペイサーズ(-1)
タイリース・ハリバートンはオリンピックでほとんどプレイしなかったが、アンドリュー・ネムハードはカナダ代表として頭脳プレイを見せ、前回のプレイオフでのブレイクアウトがまぐれではなかったという希望を与えた。
それ以外ではペイサーズが変わったことはほとんどない。ペイサーズは、再びプレイオフを戦い抜くタレントを備えた、よく指導されたチームだ。
13. メンフィス・グリズリーズ(-1)
ザック・イディーはサマーリーグで好調で、すぐにでも貢献できそうに見えた。彼は今、ルーキー・オブ・ザ・イヤー獲得の有力候補だ。
グリズリーズはスペイン代表のサンティ・アルダマのプレイを見ることができた。彼はオリンピックではシュートが好調で、1試合平均17.7得点とチームハイを記録したが、母国をノックアウトステージに導くことはできなかった。
ようやく健康状態の良くなったグリズリーズで、アルダマが大きな役割を果たす必要はないだろう。グリズリーズをあなどってはいけない。
14. ニューオーリンズ・ペリカンズ(-1)
ブランドン・イングラムは今頃にはトレードされるだろうと誰もが思っていた。ペリカンズは彼に巨額の延長契約を与えたくないようだが、それはリーグの他のチームも同じ気持ちのようだ。
ペリカンズは、ビッグマンの補強にもまだ対処する必要がある。ルーキーのイブ・ミッシは、サマーリーグではディフェンスでは存在感を示したものの、FG成功率はわずか46.2%で大きな役割で貢献できるようには見えなかった。ペリカンズはFAの後半にベテランビッグマンのダニエル・タイスを加えている。
15. マイアミ・ヒート(—)
ヒートはやや意外なことにチーム構成をあまり変えなかった。
アレック・バークスはフリーエージェントで加入した良いベテラン選手だが、違いを生み出す選手ではない。テリー・ロジアーがシーズンをフル出場できれば、ジミー・バトラーのオフェンスの負担を減らせるだろう。また、ルーキーのケレル・ウェアは、素晴らしい活躍を見せてヒートのサマーリーグ優勝に貢献している。
これらは、昨季の中位フィニッシュを変えるほどの動きではなさそうだ。
16. サクラメント・キングス(+2)
キングスはこの1か月で最大の動きを見せてデマー・デローザンをトレードで獲得。これにより、このランキングでは2つ順位を上げた。フィットはあまり良くないが、 デローザンはチームに貢献する方法を見つけることだろう。
ティア3:プレイオフ進出争い
17. ゴールデンステイト・ウォリアーズ(+1)
ウォリアーズがクレイ・トンプソンの代わりをどうするのか、つまり、バディ・ヒールドがその役割を果たせるのかについてはまだ懸念がある。しかし、ステフィン・カリーがオリンピックの2試合でその実力を見事に証明したことで、ウォリアーズは順位を上げた。また、ディアンソニー・メルトンとカイル・アンダーソンが加入し、ウォリアーズの選手層は昨年以上になっている。
18. ロサンゼルス・レイカーズ(+1)
レブロン・ジェームズはオリンピックでの活躍で当然のようにMVPを獲得した。彼の実力の低下を止めることは未だ不可能だ。アンソニー・デイビスは地球上で最高のディフェンダーの1人に見えた。
レイカーズがこの順位から浮上するにはやはりトレードが必要となる。レイカーズは、レブロンがまだオールNBAプレイヤーのうちにより多くの助けを得る必要がある。
19. ロサンゼルス・クリッパーズ(-3)
クリッパーズは夏の終わりにラッセル・ウェストブルックの代わりにクリス・ダンを獲得。ダンは昨季ジャズで活躍したディフェンスのスペシャリストだ。ニコラス・バトゥームもフランス代表のオリンピック決勝進出に貢献し、まだ余力があることを示した。
とはいえ、ポール・ジョージが去ったこのチームには、タフなウェスタン・カンファレンスで競えるレベルの戦力がない。
20. ヒューストン・ロケッツ(—)
この1か月、ロケッツはいいプレイをしていた。リード・シェパードはラスベガスで最も活躍した選手の1人だ。彼はサマーリーグで注目を浴びたキャム・ウィットモア同様、初日から得点を狙えるだろう。ディロン・ブルックスはオリンピックではカナダ代表として良いディフェンスを見せ、3Pを46.2%の確率で成功させた。
ロケッツには多くの若手が揃っている。
21. サンアントニオ・スパーズ(—)
ビクター・ウェンバンヤマは来季、リーグ最高のディフェンダーになるだろう。オリンピックでは攻守でフランスのベストプレイヤーとして活躍し、それを証明した。オリンピック中に試したような自らオフェンスをクリエイトすることはまだ無理だが、クリス・ポールとのコンビで信じられないほどのフィニッシャーとして成功するはずだ。
22. トロント・ラプターズ(—)
RJ・バレットのラプターズにおけるシーズン終盤の好調ぶりは、オリンピックでの1試合平均19.8得点、フィールドゴール成功率58.3%というパフォーマンスによってさらに証明された。彼はニックス時代よりもはるかに安定している。
23. ユタ・ジャズ(—)
ラウリ・マルカネンは少なくともあと1年はジャズに在籍する。2億3800万ドル(約349億8600万円/1ドル=147円換算)の契約延長にサインした彼はトレードの対象にはならない。
キヨンテ・ジョージはサマーリーグ(ソルトレイクシティ・サマーリーグ)でフリースローを量産して1試合30.5得点をマーク。サマーリーグには十分すぎるほどの実力があることを証明したが、1試合あたり5回のターンオーバーは懸念事項だ。コディ・ウィリアムズとカイル・フィリパウスキーは評判以上にNBAで通用しそうだったが、アイザイア・コリアーは苦戦していた。
24. アトランタ・ホークス(—)
ザカリー・リザシェイのサマーリーグはFG成功率39%、3P成功率25%といまひとつだった。デジャンテ・マレーを失ったホークスにとっては移行の年になりそうだ。
25. シャーロット・ホーネッツ(—)
ドラフト全体6位指名のティジャン・サローンはNBAで十分プレイできるようには見えなかった。セルビアを銅メダルに導いたバシリイェ・ミチッチは、ハイレベルなバックアップポイントガードになることを証明した。
ティア4:その他
26. シカゴ・ブルズ(—)
オーストラリア代表として出場したジョシュ・ギディーにとってはアップダウンの激しいオリンピックとなった。素晴らしいスタッツを記録してクラッチショットを決めたが、最悪のタイミングでボールをターンオーバーしている。マタス・ブゼリスは素晴らしいプレイを見せたが、効率よく得点することはできなかった。
27. ブルックリン・ネッツ(—)
デニス・シュルーダーは国際試合でいつも調子を上げる。1試合平均17.2得点、7.5アシストを記録した彼は、オリンピックのベストプレイヤーの1人だった。
28. ポートランド・ブレイザーズ(—)
ドノバン・クリンガンは1試合12.3リバウンドでリーグをリードし、1試合4.2ブロックで歴代最高記録を樹立してオール・サマーリーグ・セカンドチームの栄誉に輝いた。
彼のディフェンスがしっかり通用するという予想は的中しそうだ。
29. ワシントン・ウィザーズ(—)
バブ・キャリントンは早くもドラフトにおける掘り出し物候補のようだ。彼はサマーリーグのセカンドチームに選ばれ、ラスベガスで1試合平均15.8得点、7.4リバウンド、5.2アシストを記録。ビラル・クリバリーはオリンピックではフランス代表としてあまりプレイしなかったが、出場機会を得た時には見事なレイアップを何本か決めている。
30. デトロイト・ピストンズ(—)
ドラフト全体5位指名のロン・ホランドはラスベガスでは1試合平均18.7得点と得点力があり、ブロックやスティールも多かった。しかし、効率的ではなく、まだ未熟に見えた。
ピストンズはリーグで最も若いチームのひとつで、まだ勝利よりも育成に重点を置いている。
原文:NBA power rankings 2024: Bucks, Nuggets, Suns, Clippers among biggest risers and fallers after Olympics
翻訳:YOKO B