NBAの歴史で最も注目されたドラフトロッタリーが、5月16日(日本時間17日)に行われた。世代を代表するスーパースター、ビクター・ウェンバンヤマをドラフト指名できるチームを決めるロッタリーだ。
そのチームは、サンアントニオ・スパーズになった。14%の確率を当て、ドラフト全体1位指名権を獲得したのだ。
今回のロッタリーで大きな勝者となったのがスパーズなのはもちろんだ。スパーズは世代を代表するビッグマンを指名するロッタリーでの勝利の伝統をウェンバンヤマで続けられることになった。彼らは1987年のロッタリーを制してデイビッド・ロビンソンを、1997年のロッタリーを制してティム・ダンカンを手に入れている。
だが、この日のロッタリーで恩恵を受けたチームはほかにもいる。NBAドラフトロッタリー2023における勝ち組と負け組を見ていこう。
NBAドラフトロッタリー2023 抽選結果
指名順 | チーム |
1. | スパーズ |
2. | ホーネッツ |
3. | ブレイザーズ |
4. | ロケッツ |
5. | ピストンズ |
6. | マジック |
7. | ペイサーズ |
8. | ウィザーズ |
9. | ジャズ |
10. | マーベリックス |
11. | ブルズ(マジックへ譲渡) |
12. | サンダー |
13. | ラプターズ |
14. | ペリカンズ |
NBAドラフトロッタリー2023の勝ち組
サンアントニオ・スパーズ
スパーズはこのためにあらゆる手を尽くした。2021-2022シーズン途中にデリック・ホワイト、昨年夏にデジャンテ・マレーをトレードで放出している。そして今季はヒューストン・ロケッツと並び、リーグワースト2位の成績となった。
そしてそれらすべてが報われた。彼らは今、チームを築く上で中心となるスターを手にしたのだ。
シャーロット・ホーネッツ
もちろん、ウェンバンヤマを逃した失望はあるだろう。だが、スクート・ヘンダーソンも、ウェンバンヤマがいなければドラフトで全体1位指名されるタレントだ。Gリーグ・イグナイトでプレイしたガードは、エリート級の運動能力や得点感覚を備えている。素晴らしいパスのビジョンも垣間見せてきた。思うようにリムにも到達できる。6フィート9インチ(約206センチ)のウイングスパンは、守備の展望においても魅力的だ。
ラメロ・ボールとのコンビネーションを深めていくのは少し大変かもしれない。だが、ヘンダーソンのような有望な選手を見過ごすことはない。
オーランド・マジック
マジックは2021年のニコラ・ブーチェビッチのトレードの一環で、シカゴ・ブルズから11位指名権を獲得した。この時にウェンデル・カーターJr.と2021年ドラフトの8位指名権も手に入れており、後者でフランツ・バグナーを指名している。そしてアル・ファルーク・アミヌの契約からも逃れた。
ブルズは上位4位指名の保護条件をつけていたが、運は彼らに味方せず。40勝でイースタン・カンファレンスの10位だったブルズが手にしたのは11位指名権だった。
ポートランド・トレイルブレイザーズ
ポートランド・トレイルブレイザーズは当初、プレイオフ進出が有力視されていた。11月18日(同19日)時点でウェスタン・カンファレンスの首位に立っていたのだ。だが、それから事態は悪化していく。シーズン終盤にはプレイオフ進出の可能性を閉ざし、最後の10試合でデイミアン・リラードを起用せず。リーグワースト5位の成績に終わった。
そしてこれは彼らにとってうまくいった。彼らはドラフト3位指名権を手に入れたのだ。
これからブレイザーズは難題に直面する。指名権をトレードし、まだオールNBAサードチーム入りするほど優れているリラードの周りにもっとタレントを集めるのか。それとも、昨年招へいした元『DraftExpress』アナリスト、マイク・シュミッツのドラフト知識を生かすのか。この夏最大の話題のひとつとなるだろう。
ロサンゼルス・レイカーズ
シーズン途中、レイカーズは悲惨な状況にあるかと思われた。ドラフト全体1位指名権を獲得することもあるかもしれないほどだった。2019年にアンソニー・デイビスを獲得したトレードの一環として、1巡目指名交換権のオプションがニューオーリンズ・ペリカンズにあったことを考えれば、そうなっていたら恐ろしい結果となっていたはずだ。
レイカーズにとって幸いなことに、トレードデッドライン(トレード期限)でシーズンを好転させることに成功。現在はウェスタン・カンファレンス・ファイナルを戦っており、ドラフト全体17位指名権を確保した。一方、ペリカンズは驚くことにロッタリーチームとなり、14位指名権を手にすることになった。
ダラス・マーベリックス
プレイイン・トーナメントに出場し、そこからプレイオフ進出を狙える可能性もあった。だが、ダラス・マーベリックスは最後の2試合をあからさまに落とし、リーグから75万ドル(約1億275万円/1ドル=137円換算)の罰金処分を科されることを選んだ。
彼らの目的は明確だった。ドラフト1巡目指名権が10位までの保護条件つきでニューヨーク・ニックスのものとなっていたのだ。マーベリックスはその指名権を何としても確保しようとしたのである。
そして結局、その目的を果たした。マーベリックスは全体10位指名権を獲得。ニックスへの譲渡は来年に先送りとなり、再び上位10位の保護条件つきとなった。
NBAドラフトロッタリー2023の負け組
デトロイト・ピストンズ
デトロイト・ピストンズはリーグ最少の17勝という結果に終わった。2021年ドラフトで全体1位指名したケイド・カニングハムは、すねのケガで70試合を欠場した。ロッタリーで2位までの指名権を得られれば、その痛みも相殺できたかもしれない。
しかし、彼らが手にするのは、全体5位指名権となった。
ピストンズにとってすべて悪いわけではない。2022年ドラフトで全体5位指名したジェイデン・アイビーは、シーズンを通じて真の成長を見せ、シーズン終盤にかけて最高の状態のようだった。カニングハムも復帰してから、高く評価されていた理由を思い起こさせるだろう。そして彼らはそのグループにさらに有望な若手を加えられる。
この結果は完全に想定外だったわけではない。5位指名権となる可能性は、五分五分よりもやや少ない程度だったのだ。それでも、彼らのファンにとっては落胆の夜となったことは違いない。
ロッタリーで飛躍を狙っていたチームたち
かつては、ロッタリーで驚くような飛躍を遂げたチームもあった。リーグ最低成績のチームでも4位までの指名権を手にする可能性が52%しかないという、確率の平坦化によるところが大きい。
今年は奇妙な例外となった。6位から14位までの指名権がすべて想定どおりだったのだ。成績ワースト4位までのチームで、指名権が5位以下になったのは、ピストンズだけだった。露骨なタンクや成績が悪かったチームが報われたかたちだ。反タンク主義の人は思うところがあっただろう。