NBAドラフト2023では興味深い動きがたくさんあった。複数のチームがドラフト前やドラフト中にこの機会を生かして連絡を取り合い、トレードに至っている。ここでは、 『スポーティングニュース』のSteph Noh記者によるNBAドラフト2023の勝者と敗者を見てみよう。
ドラフト当日に最善を尽くしたチームや、困惑させられるような決断を下したチームを振り返る。
NBAドラフト2023の勝者
スパーズ
もしもあなたがこの1年の世の中の動きを知らない場合に備えて言うと、サンアントニオ・スパーズは今年のドラフト最大の“賞品”であるビクター・ウェンバンヤマを手に入れた。レブロン・ジェームズ以来の有望新人と広く評価される選手だ。今後何年にもわたり、スパーズのフランチャイズプレイヤーとなるかもしれない。
ブレイザーズ
ドラフト当日の夜に注目されたのが、ポートランド・トレイルブレイザーズだ。全体3位指名権を彼らがどのように使うのか、様々な憶測があったからである。そしてブランドン・ミラーが全体2位で指名され、その価値はさらに高まった。全体3位でスクート・ヘンダーソンを指名できるからだ。
このことは、必ずしもデイミアン・リラードを喜ばせなかったかもしれない。ブレイザーズが全体3位指名権と引き換えにベテラン選手を獲得しなければ、リラードが球団にトレードを要求するかもしれないという噂が飛びかっていたからだ。だが、2022-2023シーズン終盤にこの立場を手にしようと狙ってきたブレイザーズは、今のところドラフトで掘り出し物を手にしている。
リラードの件がどうなろうと、ブレイザーズのファンは安心できるだろう。次のオールスター級のリードガードをドラフトで指名したからだ。
セルティックス
ボストン・セルティックスはクリスタプス・ポルジンギスをトレードで獲得してドラフトを迎えた。彼はセルティックスのシステムにうまくフィットする。これまでのビッグマンたち以上に、攻撃の様々なかたちで貢献するだろう。
また、彼らは指名権を全体35位から25位に高め、さらにそれを将来の2巡目指名権などにトレードした。
セルティックスはイースタン・カンファレンスの有力候補となるはずだ。そしてロスターをアップグレードし、優勝するかもしれない。人目を引くような指名があったわけではないが、ポルジンギスのトレードでこの日の大きな勝者となった。
トンプソン兄弟とオーバータイム・エリート
ヒューストン・ロケッツは全体4位でアメン・トンプソンを指名した。ジャンプショットの問題で指名がどうなるか予想が難しかったが、今年のドラフトで最も優れた身体能力の素質を持つひとりだ。スピードが素晴らしく、リムにフィニッシュし、パスのビジョンを持ち、守備での強度もある。
そして、デトロイト・ピストンズはすぐ、双子の兄弟アサーを全体5位で指名した。彼もまた同じ身体能力を持つ選手だ。リードボールハンドラーではないが、ショットはより優れている。
これは、アトランタの比較的新たなプログラム「オーバータイム・エリート」の大勝利でもあった。この組織からはさらに多くの有望新人たちが出てくるだろう。
マーベリックスとキングス
ダラス・マーベリックスは良い取引でドラフトをスタートさせた。不利な契約のダービス・ベルターンスを手放し、ドラフト指名権は全体10位から12位となったが、その指名権でデレック・ライブリー二世を指名した。素晴らしいリムプロテクターで、ルカ・ドンチッチとのコンビで空中戦の脅威になる選手だ。
さらに、マーベリックスは全体24位でオリビエ・マクセンス・プロスパーを指名した。複数のポジションで守ることができる素晴らしいディフェンダーだ。自分で攻撃もするため、ドンチッチの隣でもうまくフィットする。
マーベリックスにはディフェンダーが必要だった。守備ではリーグ25位だったのだ。まさにその必要な点を満たす選手を2人手に入れたのである。
その24位指名権とリショーン・ホームズをマーベリックスとトレードしたサクラメント・キングスも良かった。キャップスペースを3000万ドル(約42億9000万円/1ドル=143円換算)以上空けたことで、フリーエージェントで選手を狙える。
NBAドラフト2023の敗者
マイケル・ジョーダンのホーネッツ
マイケル・ジョーダンはエグゼクティブとして最後のパンプフェイクを見せた。
シャーロット・ホーネッツは全体2位でヘンダーソンを指名することを考えているかもしれないと言われていたのだ。だが結局、彼らはミラーを指名した。
この選択は間違えているように思える。ミラーは良い選手だ。だが、ヘンダーソンはウェンバンヤマがいないドラフトなら全体1位で指名されておかしくない有望新人だ。一瞬にして突破していけるだけの素晴らしい運動能力を持ち、素晴らしいディフェンダーになるための力を備えている。『スポーティングニュース』のカイル・アービング記者を含め、ドラフトアナリストたちの多くは、ヘンダーソンの方が優れた有望新人と考えていたのだ。
ホーネッツのファンも指名をよく受け止めなかった。もしもヘンダーソンが評判に見合う活躍をすれば、これまでも何度かドラフトでの選択に悩まされてきた球団にとっては、「もしも」が騒がれる醜く恥ずべき決断となるかもしれない。
全体27位でニック・スミスJr.を指名し、ホーネッツはやや名誉挽回を果たした。シーズンが始まる前はトップ5指名の可能性もあると言われた選手だ。ケガのためにそのシーズンをやや失うかたちにはなったが、堅実な指名だろう。
ヘンダーソンを見過ごしたことの埋め合わせにはならないが。
一部ファッションとグレイディ・ディックのスーツ
私はそれほどファッション好きではないが、ドラフトの夜ではかなり疑わしい決断を下した選手たちがいた。最大の敗者は誰だろうか?
グレイディ・ディックの格好も議論の的だった。
キャム・ウィットモア
ウィットモアは当初、全体3位指名候補とも言われた。大半のモックドラフト(ドラフト予想)で上位10位までの指名が予想されていた。だが、ケガの懸念やインタビューのまずさ、平均を下回るワークアウトの出来で、一気に20位指名まで下がってしまったのだ。
次々に自分の名前が呼ばれないでいく中で、明らかに落胆した様子を見せたウィットモアにとっては、つらい夜だっただろう。ただ、彼の敗北は、ロケッツの勝利でもある。ウィットモアとアメン・トンプソンを手に入れたのは素晴らしい結果だ。
ウィザーズ
ワシントン・ウィザーズは困惑させるような動きの数々に終止符を打った。まず、フェニックス・サンズとのトレードでブラッドリー・ビールと引き換えに複数の2巡目指名権や指名交換権を獲得。次にボストン・セルティックスとのトレードでクリスタプス・ポルジンギスと引き換えに契約満了を迎える選手と2巡目指名権を手にした。
さらに労使協定が厳しくなり、各チームがサラリー負担を軽減しようとする中、キャップスペースを空け、不利な契約と引き換えに指名権を得ようという狙いだ。それは良い計画だろう。ただ、彼らは見返りにほとんどドラフト補償を得ることなく、すぐにそのキャップスペースの多くを使ってジョーダン・プールを獲得したのだ。
プールはまだ向上できるだけに若い選手だ。しかし、彼の契約はリーグ最悪のひとつのようにみなされていた。彼の契約から解放されるには、多くのドラフト資産が必要だったはずだ。だが、ウィザーズはかなりのプロテクトがついた1巡目指名権と、2巡目指名権と、昨年のドラフトで主役ではなかった新人と引き換え、つまりほとんど何も受け取らずにプールを引き受けたのである。