2023年2月、カイリー・アービングはブルックリン・ネッツからの移籍を求めてトレードを要求し、NBAの大勢にショックをもたらした。
『The Athletic』によれば、ロサンゼルス・レイカーズ、フェニックス・サンズ、ロサンゼルス・クリッパーズなど、多くの球団が関心を示した。だが、最終的にアービングを獲得したのはダラス・マーベリックスだ。そしてそのために彼らが見返りとして手放したのは、驚くほどのものだった。
今振り返ると、このトレードはマーベリックスにとってかなり良いものだったと思われる。今季、彼らはNBAファイナルに勝ち進んだ。アービングはルカ・ドンチッチ、ジェイソン・テイタムに続き、シリーズ3番手のベストプレイヤーだ。当時のトレードがなければ、彼らがここまでくることはなかっただろう。
ここでは、当時の『スポーティングニュース』のトレード評価を振り返り、1年が経った現時点での新たな評価をまとめる。
マーベリックスがカイリー・アービングのトレードで手放したのは?
マーベリックス獲得:
- カイリー・アービング
- マーキーフ・モリス
ネッツ獲得:
- スペンサー・ディンウィディー
- ドリアン・フィニー・スミス
- 2029年ドラフト1巡目指名権(保護条件なし)
- 2027年と2029年ドラフト2巡目指名権
カイリー・アービングのトレードの当時評価
アービングのトレードには様々なリアクションがあった。
『ESPN』のケビン・ペルトン記者は、マーベリックスをD評価とした。スポーティングニュースではマーベリックスをB+、ネッツをB-と評価している。
「マーベリックスは混戦模様のウェスタン・カンファレンスで中位から抜け出し、優勝を競う上位に浮上できるかもしれない取引に踏み切った」
そしてこの予想は当たった。西地区は第4シードから第10シードまでがわずか5ゲーム差と、かつてないほどの激戦となったのだ。アービングのトレードは、その中でマーベリックスがNBAファイナルまで勝ち進むのにつながった。
当時、スポーティングニュースでは、ネッツに対してあまり良い評価をしなかった。ケビン・デュラントのトレードや下り坂に向かう可能性を予想している。ディンウィディーの獲得にも疑問を示し、ジョシュ・グリーンやジェイデン・ハーディーのような若手を狙うべきだとしていた。
カイリー・アービングのトレードのマーベリックス新評価
マーベリックスはアービングを獲得するために最大の条件を出した。だがそれでも、手放したものからすべてお買い得だったと言えるだろう。
アービングはマーベリックスに加入してから見事な出来だ。2023-2024シーズンのレギュラーシーズンは1試合平均25.6得点を記録。試合終盤のタフショットの決定力から、年間最優秀クラッチ選手賞の投票で7位となった。
これは、マーベリックスがNBAファイナルまで勝ち進むための秘策となった。守備が極めて優れた対戦相手たちを倒してきたのは、アービングとドンチッチがクラッチタイムに止められないほどの活躍を見せてきたからだ。
また、アービングは守備でもかつてないほど貢献している。これまではターゲットと見なされてきたが、守備で努力とタフネスを示してきた。
そして最も重要なのは、アービングがマーベリックスで大きなケガを負っていないということだ。2023-24シーズンのレギュラーシーズンでは24試合を欠場した。だが、プレイオフの平均出場時間は40.2分間。マーベリックスは常にスター選手のひとりをコートに立たせることができている。
フィニー・スミスの放出は痛手だったが、マーベリックスがデリック・ジョーンズJr.とミニマム契約を結んだのは大きかった。
このトレードはすでにマーベリックスにとって素晴らしい取引だったと感じさせている。アービングが健康と集中を保ち続ければ、史上有数の取引となるかもしれない。
新たなマーベリックスの評価:A
カイリー・アービングのトレードのネッツ新評価
このトレードが実現した時、ネッツは厳しい立場にあった。ネッツでのアービングはコート上よりコート外でのことが目を引いていたのだ。そして、トレードしていなければ、おそらくアービングはシーズン後の夏にフリーエージェントとして退団するところだった。
それでも、この取引でネッツは良い見返りを手にしなかった。ベテラン選手を2人獲得し、船が沈むのを避けようとしたが、そうはならなかったのだ。
ネッツはこのトレードでディンウィディーを望んだと伝えられている。そしてマーベリックスにとって最高の売り時で手に入れたかたちとなった。ディンウィディーはマーベリックスで3ポイントショット成功率40.5%だったが、以降はこの数字を達成していない。そして1年後、デニス・シュルーダーのトレードでネッツを退団することになった。
フィニー・スミスもネッツではうまくいっていない。ネッツがあまりに多くのウィングをロスターに加えたことで、今季の彼はベンチスタートになった。チームの守備が混乱したため、守備での影響力も減少。どこにも向かっていないチームで31歳になっている。
結果、ネッツは32勝50敗というひどい成績で、NBAドラフトで全体3位指名権を獲得したが、すぐにヒューストン・ロケッツに譲渡することになった。散々なシナリオで、しかもまだ終わりではない。ネッツは2025年と2027年の指名権もロケッツにコントロールされている。
マーベリックスから手に入れた指名権も、あまり良さそうではない。ネッツはアービングのトレードが裏目に出て、ドンチッチがマーベリックスからの移籍を求め、指名権がロッタリーピックとなることを願っていた。だが、ドンチッチはマーベリックスにとどまり、タイトルを競うチームで非常に長く続けることになるかもしれない。2029年にドンチッチは30歳。まだ極めて高いレベルでプレイしているはずだ。
当時、アービングの見返りにネッツが手にすることができたのは、これがベストだったのかもしれない。だが、チームの再建に役立てるべく、少なくともひとりはもっと若い選手の獲得を優先すべきだっただろう。
新たなネッツの評価:C-
原文:Kyrie Irving trade, revisited: Giving new grades to Mavericks, Nets one year after stunning deal(抄訳)
翻訳:坂東実藍