NBAドラフト2011で全体11位指名されて以降、クレイ・トンプソンといえばゴールデンステイト・ウォリアーズだった。トンプソンはウォリアーズで物語となるようなキャリアを過ごしてきた。だが、すべてのスター選手が完璧な結末を迎えるとは限らない。
今季、トンプソンは衰えの兆候を見せてきた。かつては優れたディフェンダーだったが、今ではよりスローなフォワードを守るにとどまっている。3ポイントショット成功率は38.7%と、自身ワースト2位の数字だった。シーズンの様々なタイミングで、スターティングラインナップからもクロージングラインナップからも外されている。
それでも、活躍した試合はあった。4試合で30得点超をあげ、まだ平均17.6得点を記録している。彼にとって悪いシーズンは、それでも他の多くの選手にとっては良いシーズンなのだ。
プレイの衰えと厳しい財政から、トンプソンは退団を余儀なくされるかもしれない。ウォリアーズは極めて支出の多いチームだ。『Spotrac』によると、今季終了後に推定1億7700万ドル(約272億5800万円/1ドル=154円換算)のラグジュアリータックス(ぜいたく税)を支払わなければいけない。プレイイン・トーナメントで敗退したチームにとっては高額だろう。
そして来季はそれが変わることになりそうだ。
オーナーのジョー・レイコブは、来季のウォリアーズがラグジュアリータックスの支払いから抜け出すことを望んでいると話した。そしてそのためのプランがあるという。その実現には、トンプソンや同じくフリーエージェントになるクリス・ポールに対し、極めて賢明な提示をしなければならない。ほかのチームが名乗りをあげ、もっと競争力のあるオファーを出す可能性もある。
ここでは、トンプソンを巡る状況についてまとめた。
クレイ・トンプソンのサラリー
トンプソンは2019年に総額1億8990万ドル(現在のレートで約292億4460万円)のマックス契約を結んだ。今季が5年契約の最終年だ。キャリア通算では2億6000万ドル(約400億4000万円)超を手にしている。そのため、彼にとって金はもはや最優先ではないかもしれない。
今後の契約で、かなりの減額となることは確かだろう。単純なサラリーモデルによれば、来季は約1800万ドル(約27億7200万円)となるはずだ。彼が毎年稼ぐ額としては合理的なところだろう。
クレイ・トンプソンの所属先候補
この夏の移籍を望む場合、選択肢は多くない。キャップスペースが十分と見られるのは、デトロイト・ピストンズ、フィラデルフィア・76ers、ユタ・ジャズ、オクラホマシティ・サンダー、オーランド・マジック、サンアントニオ・スパーズの6チームだけだ。
制約がある中で、トンプソンの今後の所属先として最も可能性が高いチームをまとめた。
ウォリアーズ
トンプソンはウォリアーズにいることを望んでいる。そしてウォリアーズは、彼を残したいと話した。ドレイモンド・グリーンは少なくともステフィン・カリーの契約最後の2年を過ごすために減俸に応じた。スティーブ・カー・ヘッドコーチも同じようにして延長契約を結んでいる。
トンプソンがウォリアーズと再契約するなら、おそらく同じ道をたどるだろう。2年3500~4000万ドル(約53億9000万~61億6000万円)の契約で、カリーとキャリアを終わらせるかたちだ。
マジック
『The Athletic』のティム・カワカミ記者によると、マジックがトンプソンにビッグオファーを出すかもしれないことは、「リーグで最も知られている秘密のひとつ」という。Spotracのキース・スミス記者によれば、マジックのキャップスペースは推定2560万ドル(約39億4240万円)。彼らはそれをトンプソン獲得に使うかもしれない。ウォリアーズが喜んで支払うであろう金額を大きく上回る。
トンプソンにとって、マジックがうまくフィットする理由は少なくない。いくつかあげるなら、以下のとおりだ。
おそらく、トンプソンはショットを次々に放つことを許される。マジックは守備が素晴らしいチームで、衰えてきているトンプソンの横の動きもカバーできるはずだ。
サンダー
トンプソンが加われば、来季のサンダーは正真正銘の優勝候補の一角となるかもしれない。ジョシュ・ギディーに代えて彼をスターティングラインナップに入れれば、サンダーはショット力を手にし、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのためにもっとフロアを広げることができるだろう。また、トンプソンはサンダーにプレイオフでの経験ももたらせる。
スミス記者によれば、サンダーのキャップスペースは3500万ドル超(約53億9000万円)。トンプソンを加え、さらに別のハイレベルなローテーションプレイヤーを狙うかもしれない。
76ers
76ersは5530万ドル(約85億1620万円)もキャップスペースを空けられる。この夏のFA市場で最も動くチームとなるかもしれない。
トンプソンは目玉が少ないFA市場において、獲得可能なベストプレイヤーのひとりとなる。76ersが優勝を目指す上で、トンプソンはある程度ターゲットとして理にかなうだろう。ジョエル・エンビードと組ませるために、短期的に過剰に支払うこともあるだろうか?
2017年にも76ersは同じ動きをした。キャリア末期のJJ・レディックと1年2300万ドル(現在のレートで約35億4200万円)の契約を結んだのだ。状況は違うが、同じ理由から理にかなっている。
原文:Klay Thompson landing spots: Magic, Thunder headline best options for Warriors legend in free agency(抄訳)
翻訳:坂東実藍