ボストン・セルティックスのジェイソン・テイタムは、NBAファイナルを前に活躍が期待された選手だ。レギュラーシーズンで平均26.9得点を記録し、チームをけん引して、オールNBAファーストチームに選出された。NBAファイナルは、そのテイタムが最も大きな舞台で輝くタイミングだった。
だが、テイタムはアンチに彼らが捜していた燃料を与えている。
テイタムは3ポイントショット成功率28.6%、フィールドゴール成功率31.6%の平均17.0得点にとどまっている。平均4.5ターンオーバーはチーム最多だ。守備では第2戦を通じてルカ・ドンチッチにターゲットとされた。そしてリーグのマッチアップデータによると、テイタムはドンチッチにFG成功率75%を許している。
この表面的な分析で、テイタムは多くの冗談やあざけりの的にされた。このシリーズのベストプレイヤーでないことは確かだ。しかし、ショットに関する数字が良くないことがすべてではない。
得点よりもっと深く見ていくと、テイタムがポジティブな影響を及ぼしていることは否定できない。シリーズ最初の2試合で、テイタムは得点以外のすべてをこなし、セルティックスを助けてきたのだ。
NBAファイナル2024のジェイソン・テイタムは一見したほど悪くない
パスがすべて正しいジェイソン・テイタム
テイタムのアシスト数が物語っている。シリーズ最多の平均8.5アシストをマークしているのだ。
その多くはセルティックスのゲームプランによるものだ。セルティックスはできるだけドンチッチにアタックし、テイタムやジェイレン・ブラウンにつけさせている。そしてテイタムが彼を抜き、守備を崩して、良いパスを出し、チームメイトにお膳立てしているのだ。
このシリーズのテイタムは、リムに対するアグレッシブさのレベルをさらに引き上げた。『Yahoo』のダン・デバイン記者が指摘したように、第2戦での29回というドライブ数は、レギュラーシーズンのテイタムの平均の3倍超の数字だ。
それらのテイタムのドライブで特に恩恵を受けているひとりがドリュー・ホリデーだ。第2戦でホリデーがペイント内からのショットを9本中9本成功させられたのは、こういったパスのおかげである。
ダラス・マーベリックスはテイタムがペイント内に入ると、常に彼に対する守備をつける。そしてテイタムはそういった状況で利他的にパスを出し、それが勝利につながっているのだ。
ジェイソン・テイタムはスタッツが示す以上のディフェンダー
テイタムはドンチッチに良い確率でショットを決められたが、簡単なかたちで打たせていたわけではない。ドンチッチのジャンプショット試投のすべてで、テイタムは顔の前に手を出しているのだ。それでもドンチッチにはいくつかタフショットを決められたが、それは誰がマークしても変わらない。
第2戦のドンチッチは珍しく8ターンオーバーだった。そのうちの3つは、主にテイタムが守った時だ。テイタムがあまりスペースを許さず、ドンチッチは希望のないパスを出さざるを得なかった。
セルティックスはファイナル最初の2試合でマーベリックスを平均93.5得点に抑えている。その最大の理由のひとつが、テイタムの多才な守備なのだ。
ジョー・マズーラ・ヘッドコーチは、テイタムを相手のセンターにつけている。サイズで大きく譲りながらも、テイタムはうまく耐えた。そういった厳しいマッチアップに臨み、どんな場所でもスイッチをしようという意欲が、セルティックスの守備の鍵となっている。
良くない3Pを打つのをやめる必要
テイタムはほぼあらゆることをしているが、それでも改善必要となるのはショットセレクションだろう。このファイナルでは平均4.5本の試投で成功率わずか22.2%と、プルアップの3Pが良くない。珍しく、リムでレイアップを決めようとした際もいくつか失敗している。
それでも、テイタムのことは称賛すべきだ。マーベリックスのジェイソン・キッドHCは、セルティックスのベストプレイヤーはブラウンだと話した。だが、テイタムはこの挑発に乗っていない。逆にエゴを脇に置き、大変の場面で適切なプレイをしてきた。
第2戦の試合後、テイタムは報道陣に「成し遂げようとしてきたことに大きく近づいている」と話した。
「それなのに、エゴだったり、なんとしても自分が得点しようとしたりして、邪魔させるはずがない」
セルティックスはここまで快勝を収めてきた。そのためにテイタムは雑音をシャットアウトしている。得点が改善されない限り、おそらくファイナルMVPを受賞することはない。だが彼は、それよりもっと大切な優勝リングを手にするだろう。
原文:Inside Jayson Tatum's NBA Finals stats: Celtics star hasn't been as bad vs. Mavs as his haters want you to think(抄訳)
翻訳:坂東実藍