ニューヨーク・ニックスのジェイレン・ブランソンは、フィラデルフィア・76ersとのNBAプレイオフ・ファーストラウンドで苦戦している。このことは、2つのとらえ方ができるだろう。
ひとつは、ブランソンがオールスター選手のような出来でないにもかかわらず、ニックスがシリーズを2勝0敗とリードできているという見方だ。もうひとつは、ニックスがジュリアス・ランドル不在でファーストラウンドを突破し、さらに勝ち進むためのリズムをつかむのに、ブランソンの活躍が必要なのはほぼ確実ということである。
ブランソンは2022年にウェスタン・カンファレンス・ファイナルに勝ち進んだダラス・マーベリックスで重要な役割を担った。2023年はニックスをカンファレンス・セミファイナルに導いている。この間、ブランソンは平均23.9得点、フィールドゴール成功率47.0%、3ポイントショット成功率33.5%、フリースロー成功率84.8%を記録した。
この2試合は、単純にブランソンの出来が良くなかったというだけなのか。それとも、76ersが特別に何かしているのだろうか。ここで見ていこう。
ジェイレン・ブランソンの76ers戦のスタッツ
今季のブランソンはNBA有数のスコアラーだった。76ers相手でも、ニックスのチーム得点王であることは変わらない。だが、数字は平均28.7得点から平均23.0得点に落ちている。精度に関しても、FG成功率29.1%、3P成功率16.7%と苦しんでいるところだ。
NBAプレイオフ2024開幕から2試合での数字と、レギュラーシーズンの数字を比較してみよう。
レギュラーシーズン | NBAプレイオフ2024 | |
平均得点 | 28.7 | 23.0 |
平均アシスト | 6.7 | 6.5 |
平均リバウンド | 3.6 | 7.5 |
フィールドゴール成功率 | .479 | .291 |
3ポイントショット成功率 | .401 | .167 |
フリースロー成功率 | .847 | .800 |
76ersはどうやってジェイレン・ブランソンを抑えているのか
76ersはブランソン相手にいくつかのことをしている。まずは、サイズを使った守備だ。
これまでの2試合で最もブランソンを守ってきたのは、6フィート7インチ(約201センチ)でウィングスパンが7フィート2インチ(約218センチ)のケリー・ウーブレイJr.と、6フィート8インチ(約203センチ)でウィングスパンが7フィート1インチ(約216センチ)のニコラ・バトゥームだ。6フィート2インチ(約188センチ)のブランソンは、同じ高さのタイリース・マクシーや6フィート(約183センチ)のカイル・ラウリーとマッチアップした時のようなアグレッシブさではなかった。
マッチアップデータによると、ブランソンはウーブレイJr.やバトゥームが相手だった約17分間でFG試投18本。マクシーやラウリーが相手の9分間では試投21本だ。
6フィート8インチ(約203センチ)のトバイアス・ハリス相手にはアグレッシブだった。だが、FG試投7本ですべて失敗に終わっている。
ディフェンダー | 時間 | 得点 | FG成功-FG試投 |
ケリー・ウーブレイJr. | 10:08 | 11 | 4-10 |
ニコラ・バトゥーム | 6:30 | 8 | 4-8 |
タイリース・マクシー | 5:09 | 7 | 2-11 |
カイル・ラウリー | 3:50 | 13 | 5-10 |
トバイアス・ハリス | 2:58 | 2 | 0-7 |
ジョエル・エンビード | 2:10 | 10 | 4-14 |
ウーブレイJr.とバトゥームは、スクリーンをかわして長さを生かし、ブランソンを煩わせる。ブランソン自身も彼らの守備を称賛していた。また、ウーブレイJr.とバトゥームにはしっかりとヘルプもある。76ersはレギュラーシーズンの3P成功率が31.0%だったジョシュ・ハートを外し、ヘルプに行くことを惜しまない。
ラウリーがハートから離れ、ブランソンがバスケットにまっすぐドライブするのを阻み、レイアップを決めさせなかった場面がこれだ。
3P成功率が今季のリーグで3位だったドンテ・ディビンチェンゾから離れ、ブランソンに対してヘルプに向かう場面もあった。明らかに76ersはブランソンをできるだけ苦しめることに集中している。
もうひとつ、76ersがうまく仕事しているのは、ファウルせずに後方からブランソンにコンテストしていることだ。
マクシーがブランソンをブロックしたのは一度ではない。
後方から二度、ブランソンを阻んでいる。
ラウリーとウーブレイJr.も似たようなかたちでブランソンのショットに影響を及ぼしてきた。76ersにとって重要なポイントになっていることはほぼ確実だ。
そしてもちろん、ジョエル・エンビードという有数のリムプロテクターがにらみをきかせるのも、76ersの役に立っている。今シリーズでブランソンはFG試投55本だが、制限区域内からは6本のみ。多くがフローターレンジやミッドレンジからで、37本中10本という数字になっている。
レギュラーシーズンのブランソンはそれらの位置から決定的だった。しかし、後方から張りつくディフェンダーがおり、ペイントでエンビードが控える中、ブランソンにはあまり仕事するためのスペースがないのだ。
大きく驚くことではないだろう。エンビードがコートにいる時の76ersは、レギュラーシーズンでトップ5レベルの守備だったからだ。特にランドル不在のニックスには、プレイメークでブランソンの負担を軽減できるクリエイターが欠けている。それにより、76ersはブランソンに集中できるのだ。
第3戦でブランソンが再び活躍できるように、ニックスのトム・シボドー・ヘッドコーチが調整できるかどうかは興味深い。ニックスがプレイオフで勝ち進みたければ、ブランソンがどこかでオールスター選手らしい調子を取り戻す必要がある。
原文:Jalen Brunson stats: Inside Knicks star's struggles vs. 76ers and what it means for New York in 2024 NBA Playoffs(抄訳)
翻訳:坂東実藍