元全米王者ビラノバ大学出身のブランソン、ハート、ディビンチェンゾの『ノバニックス』はどのようにニックスで再集結したのか

2024-05-17
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Sarah Stier/Getty Images

「常に野生の猫のようであれ」――。ビラノバ大学バスケットボール部ワイルドキャッツの信念である。

大学を卒業して数年後、3人のバスケットボールプレイヤーがNBAで最高のチームを作り上げるために力を合わせ、この信念を文字どおり体現している。

かつてビラノバ大でチームメイトだったジェイレン・ブランソン、ジョシュ・ハート、ドンテ・ディビンチェンゾはNBAのニューヨーク・ニックスに集結し、今季チームをイースタン・カンファレンスの第2シード獲得と、ここ10数年で初めてのレギュラーシーズン50勝超えの成績へと導いた。このトリオは、ニックスにとって2000年以来となる東地区決勝進出まで、あとわずかというところまで来ている。

このレベルの舞台で勝つことは、彼らにとって目新しいことではない。彼らがNBAの優勝候補のチームの心臓となるよりもはるか昔、彼らはチームメイトとして大学バスケの頂点に立ったのだ。

彼らはビラノバ大からニックスにどのようにして辿り着いたのか? スポーティングニュースが彼らの軌跡を詳しく紹介する。

ジェイレン・ブランソン、ジョシュ・ハート、ドンテ・ディビンチェンゾのビラノバ大時代

2015年、ブランソンとディビンチェンゾは、大きな期待を背負う新入生としてビラノバ大に入学した。2人はルームメイトとなり、全米制覇を狙うワイルドキャッツでいかにしてプレイタイムを獲得するかを模索し、人生の新しいステップに適応する日々を過ごした。

3年生のハートは国内有数のウィングプレイヤーになりつつあった。4年生のリーダーにはライアン・アーチディアコノ、ダニエル・オチェフがいた。クリス・ジェンキンズ、フィル・ブース、そして新入生のミケル・ブリッジズが厚みのあるロスター枠を固めていた。

ブランソンはすぐにインパクトを残したが、ディビンチェンゾはシーズン序盤に足の怪我に苦しみ、残りのシーズンをプレイしなかった。新入生の2人はすぐに意気投合したが、ディビンチェンゾとハートはこれといった交流がなかった。

「ジョシュは、『俺はヤツが嫌いだった』と言うだろうね 」と、ディビンチェンゾは『ノバニックス』(3人の母校ビラノバ大とニックスになぞらえた愛称)についてESPNに語った。

「大半のヤツは同じことを言っていた。ジェイレンと僕は親友だったから、彼は僕に『大丈夫だよ』と言わざるを得なかったんだ。でもそう、それが僕たちの共通の絆だったんだ」

ビラノバ大は2015-2016レギュラーシーズンで35勝5敗の成績を残し、マーチ・マッドネス(3月から4月にかけて行われるNCAAバスケットボールの全米大会)の第2シードを獲得した。

(Getty Images)

ワイルドキャッツはNCAAトーナメントの最初の3ラウンドを易々と突破し、エリート8(準々決勝)では第1シードのカンザス大を破った。ファイナル4(準決勝)では、ウッデン賞(米大学バスケ界の年間最優秀選手賞のひとつ)を受賞したバディー・ヒールド擁する同じく第2シードのオクラホマ大と対戦した。この試合でディビンチェンゾは、プラクティスプレイヤー(レギュラーチームの練習相手)ながらシーズンで一番のインパクトを残した。

ディビンチェンゾがビラノバ大のスカウトチームでヒールドの役割を果たしたことは有名で、オクラホマ大との大一番のほんの数日前に、彼はワイルドキャッツの主力選手たちを打ち負かしていた。

「彼は僕らを焼き尽くしたんだ」とハートは語った。

「彼が決めたショットはものすごかった。もし、そのショットをバディーに決められていたら僕たちは終わっていただろうね」

ディビンチェンゾがヒールド役を務めた練習は功を奏し、ビラノバ大はオクラホマ大を44点差で破り、ヒールドはフィールドゴール12本中わずか4本成功の9得点に終わった。これはファイナル4の歴史の中で最も大差での勝利だった。

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「ディビンチェンゾは練習で、実際にヒールドが試合でした以上に大きなダメージを与えたんだ」と、ハートは後にそう語った。

ビラノバ大は2016年に優勝を果たし、2017年も連覇が期待された。

翌年、ハートはビッグ・イースト・カンファレンスの年間最優秀選手に成長し、ウッデン賞の最終候補に名を連ねた。ブランソンはチームで2番目のスコアラーとなった。そしてディビンチェンゾは、1試合平均25.5分の出場時間で8.8得点を記録し、重要なベンチプレイヤーになった。

だが、ハートとディビンチェンゾは相変わらず仲が良いとは言えなかった。彼らの緊張関係は限界点まで達したが、それは昨夏にディビンチェンゾがニックスと契約する妨げにはならなかった。

「ジョシュはただの遊び心のあるいじめっ子だったよ」と、ディビンチェンゾはESPNに語った。

ワイルドキャッツは2017年の連覇には届かず、ハートはNBAドラフトで1巡目指名を受けた。

ブランソンとディビンチェンゾは2018年に雪辱を晴らした。ビラノバ大を36勝4敗の成績に導き、ビッグ・イーストのレギュラーシーズンとトーナメントを制覇した。ブランソンは全米の年間最優秀選手、ディビンチェンゾはビッグ・イーストの年間最優秀シックスマンに選ばれた。

2018年、ビラノバ大は全試合で二桁以上の点差をつけて勝利し、再びNCAAトーナメントを制した。ディビンチェンゾは決勝戦で31得点と輝きを放ち、NBAドラフトの指名候補になった。2018年、ディビンチェンゾは全体17位でミルウォーキー・バックスに指名され、ブランソンは全体33位でどうにかダラス・マーベリックスに指名されることとなった。

(SN/Getty)

ブランソン、ハート、ディビンチェンゾそれぞれがニックスの一員になるまでの道のり

ジェイレン・ブランソン

ブランソンはNBAでの最初の4シーズン、ダラスでルカ・ドンチッチとプレイした。2022年のプレイオフでは、ドンチッチが怪我で数試合欠場したこともあって、平均21.6得点を記録し飛躍を遂げた。

その年のオフ、フリーエージェントとして自身の市場価値を確かめる決断を下し、ニックスと4年1億400万ドルの契約を結んだ。当時、この契約内容には多くの疑問の声が上がったが、今ではNBAで有数の価値ある契約となった。

ジョシュ・ハート

2017-2018シーズン、ハートはロサンゼルス・レイカーズでプロキャリアをスタートした。レイカーズで2年プレイしたが、2019年オフにレイカーズがニューオーリンズ・ペリカンズからアンソニー・デイビスを獲得した大型トレードでペリカンズへ移籍した。

移籍したニューオーリンズで2シーズン半を過ごしたのち、2022年のトレード期限前にCJ・マカーラムとのトレードで、ポートランド・トレイルブレイザーズへ移籍した。

2021-2022シーズンの残りをポートランドで過ごし、2022-2023シーズンもトレイルブレイザーとして開幕を迎えた。そして2023年のトレード期限前にニックスへとトレードされ、ブランソンと力を合わせることになった。この移籍はビラノバ時代の2人のチームメイトが歓迎した。

ドンテ・ディビンチェンゾ

ディビンチェンゾはキャリア最初の3シーズンをバックスでプレイした。優勝した2020-2021シーズンは66試合全てに先発したが、プレイオフでは故障により3試合を除く全ての試合で欠場した。

翌年バックスは、サージ・イバカを獲得する4チーム間トレードでディビンチェンゾをサクラメント・キングスにトレードした。そのシーズンをサクラメントで終え、2022年にフリーエージェントとしてゴールデンステイト・ウォリアーズと1年契約を結んだ。

そして2023年のオフ、ディビンチェンゾはニックスとの4年4690万ドルの契約にサインし、ノバニックスの一員になった。

原文 : Inside Nova Knicks connection: How Jalen Brunson, Josh Hart, Donte DiVincenzo went from Villanova to NBA teammates(抄訳)
翻訳:小野春稀(スポーティングニュース日本版)