FIBAバスケットボールワールドカップ2023でカナダ代表としてコートに立つたびに、ディロン・ブルックスはブーイングを浴びせられた。だが、最後にフィリピンのマニラでコートを後にする際、ブルックスには「MVP」のチャントが寄せられた。
9月10日、カナダはワールドカップの3位決定戦でオーバータイムの末にアメリカを下した。史上有数の白星に導いたのがブルックスだ。3ポイントショット8本中7本成功で39得点をあげ、アメリカを倒して銅メダルを獲得。カナダの歴史をつくった。
ブルックスの39得点は、大会におけるカナダ代表選手の1試合最多得点記録を約70年ぶりに更新することになった。1954年にカール・リッドが樹立した記録を上回ったのだ。ブルックスの活躍で、カナダは2024年のパリオリンピック出場権に加え、ワールドカップ初のメダル獲得を達成した。
大会を通じ、ブルックスは相手チームの脅威となってきた。平均15.1得点、2.9リバウンド、2.6アシスト、1.3スティールを記録し、攻守両面においてカナダで最も安定していた選手のひとりだった。
自らを世界最高のペリメーターディフェンダーと評したブルックスは、3Pと守備で活躍。3P成功率58.8%をマークした。最終戦では重要な3Pを次々に沈めてアメリカ相手の勝利に貢献するなど、大事な局面での活躍も光った。
試合後、ブルックスはアメリカのレジェンドである故コービー・ブライアントの「ブラックマンバ」のメンタリティーに鼓舞され、現在のバスケットボール界で有数の悪役という立場を喜んで受け入れたと話している。
ブルックスは「そういう役割というだけさ。みんなが好きなはずだよ。僕も大好きだった」と述べた。
「コービー・ブライアントのようなものだ。彼がいかにして『ブラックマンバ』をつくり上げなければいけなかったか、ということさ。コートに立つと別人格なんだ。そして僕の役割は悪役だと思っている」
ブルックスは少し前からそういった役割を担うようになった。最も有名なのは昨季のNBAで、レギュラーシーズンやプレイオフ・ファーストラウンドのロサンゼルス・レイカーズ戦で、レブロン・ジェームズとレイカーズを挑発したことだ。
そのため、ブルックスはインドネシアやフィリピンのファンからワールドカップでブーイングを浴びせされることになった。だが、本人は感謝している。
ブルックスは「ありがとう。僕のプレイを見て、最初からみんながツイッターやインスタグラムで批判してくれたことは、日々向上する助けになる」と述べた。
最後に笑ったのは、生涯最高のパフォーマンスで銅メダルを手にし、マニラを去ることになったブルックスだった。