6月16日(日本時間17日)、ゴールデンステイト・ウォリアーズがTDガーデン(マサチューセッツ州ボストン)でNBAチャンピオンシップを祝う中、ホームのロッカールームで黙って座っていた時間はボストン・セルティックスにとって悲痛なものだった。
しかし、1年目のヘッドコーチのイメイ・ユドカの目にはこの瞬間が極めて重要なものに映っていた。
90-103で敗れた第6戦の後の彼のメッセージはこうだった。
「この経験を前に進む糧にすること。一番重要なメッセージは、ここから学び、成長し、この経験を生かして、さらに上のレベルに到達することだ。選手やコーチングスタッフとして、とにかく以前と同じではいけない。この経験を糧に来年につなげられるオフシーズンを過ごすことだ」
これらの言葉はユドカHCにとって大きな意味を持つ。なぜなら、彼は以前にも同じ経験をしているからだ。
2013年、当時サンアントニオ・スパーズでアシスタントコーチを務めていた彼は、マイアミ・ヒートとのチャンピオンシップ争いで、忌まわしいレイ・アレンの同点3ポイントショットをきっかけに惨敗する経験をしている。だが、その時の痛みを胸に、スパーズはその翌年のファイナルまで勝ち進み、タイトルを獲得した。
今の若いセルティックスと当時高齢化が進んでいたスパーズの間で違うのは、これがセルティックスが長年にわたって優勝候補となる始まりに過ぎないことだ。セルティックスは過去5年間でイースタン・カンファレンス・ファイナルに3回進出し、今シーズンはついに壁を乗り越えてNBAファイナルに辿り着いている。
次の難関は、全シリーズに勝利することだ。
「私がチームに言ったのは、レベルがあるということだ」とユドカHCは言う。
「ウォリアーズとの違いがわかるはずだ。あのチームは長い間一緒にプレイしてきていて、中心選手たちはもう10年も一緒だ。私たちに達成できるものを目の前で見てきたから、あと一歩届かなかったことはつらい。しかし、私が伝えたことは、未来は明るく、まだ始まったばかりなのだから、この経験をもとにもっと良くなって戻ってこようということなんだ」
セルティックスの中心選手のほとんどはここ数シーズン一緒にプレイしている。それでもまだ、彼らにとってこれは最大の試練だった。
今シーズンはジェットコースターのようなシーズンだった。新しいコーチとシステムに適応するという課題に対処するだけでなく、序盤に多くの健康の問題も抱え、セルティックスはシーズンを18勝21敗でスタートした。そして、1月中旬に11位だったチームは、レギュラーシーズン終了までに2位に浮上し、イースタン・カンファレンス優勝という奇跡的な大逆転劇を成し遂げたのである。
最優秀守備選手賞を受賞したマーカス・スマートは「ここまで来るのは簡単じゃなかった」と話す。
「それが僕らの自信にもつながった。ここに辿り着くまでに地獄を味わった。僕らのベストのバスケ、最高のシリーズができたわけじゃない。おそらく最悪のシリーズだ。でも、そういうものなんだ。僕らは若いし、さっきも言ったように、ここに来るまでに経験したことが、僕らがこれからすべきことを教えてくれたよ」
彼らの未来は過去の経験によって形作られるもので、このファイナルの敗北は最も重要な学びになるだろう。
ラリー・バードとレブロン・ジェームズとともに、1回のポストシーズンで600得点、150リバウンド、125アシストを記録したNBA史上唯一の選手となったジェイソン・テイタムは「大変だよ」と話している。
「ここまで来るのは大変なんだ。そして、それを乗り越えて優勝するのはさらに大変なことなんだよ。長い道のり、長いプロセスだった。僕が得たのはそういうことだ。キツいよ。自分たちが望むことをするためにはさらにレベルを上げなければいけない」
次の段階へレベルを上げるプロセスはすぐに始まる。リーグ最多の106試合を戦ったセルティックスはしかるべき休息を取り、その後再び振り出しに戻る。
アル・ホーフォードは、「来シーズンに向けてさらに良くなるために継続して取り組んで、充実した夏を過ごすようにしなくちゃいけない」と言う。
「もちろん少しは休むけど、でもこの夏は個々がもっと成長できる素晴らしい機会で、その後グループで集まったときには、そこからまた築き上げていける」
この敗北は、そこから学び、いずれ克服すべきもうひとつの障害に過ぎないのだ。
「僕はいつも困難を個人を形成する機会だととらえているんだ」とジェイレン・ブラウンは話す。
「どんな理由にせよ、今回は僕らのタイミングじゃなかったんだ。つまり、まだ学ぶべきことがたくさんあるということだ。個人的にも学ぶべきことがまだたくさんある。僕にとっては常に成長することが大事なんだ。向上し続け、リードするためのいろいろな方法を探し続ける。それが大切なんだ。未来は明るい。来年、また戻ってくるのが楽しみだよ」
原文:Celtics Use Finals Loss as Fuel for Their Future
翻訳:YOKO B Twitter:@yoko_okc