リラードとデイビスのトレード要求の違い

2023-08-02
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(Getty Images)

デイミアン・リラードがトレードを要求して1か月が経つが、彼はまだポートランド・トレイルブレイザーズのロスターにいる。そして、すぐに彼がポートランドを去ることはないようだ。

複数の報道によると、リラードはマイアミ・ヒートへのトレードを望んでおり、エージェントのアーロン・グッドウィンはそれを実現させようとしている。だが、ブレイザーズはヒートと真剣に話し合ってはおらず、ジョー・クローニンGMが適切な取引を見つけるのに「数か月」を要するかもしれないと明言した。

さらに事態を複雑にしているのが、トレードを求めるリラードや他選手に警告した先日のNBAの通達だ。リーグは今後、リラードやグッドウィンのコメントを注意深くチェックする。そして労使協定の違反があったと感じたら、処分を科すかもしれない。

この件の様々な要素にヒートのファンは極めて強いフラストレーションを感じており、リラードが細かく調べられる理由は何かを知りたがっている。

Miami Herald』のバリー・ジャクソン記者は、NBAの通達に関するニュースに反応するかたちで、アンソニー・デイビスのロサンゼルス・レイカーズ移籍要求やポール・ジョージのロサンゼルス・クリッパーズ移籍要求、ケビン・デュラントのフェニックス・サンズ移籍要求に関して同様の通達はなかったはずだと述べた。

NBAは、トレード要求がある種の想定ラインを越え、その必要があると感じたのかもしれない。ただ、リラードの状況や、エージェントの取り組み方が、他のスター選手たちのそれとは異なるのも事実だ。その違いを比較してみよう。

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アンソニー・デイビスとデイミアン・リラードのトレード要求の違い

契約期間

実際のトレード要求の詳細以前に、それぞれの契約の残り期間に大きな違いがあることを留意するのは大切だろう。

リラードは昨年夏、ブレイザーズと2年1億2200万ドル(約174億4600万円/1ドル=143円換算)の延長契約を結んだ。現在の契約は2025-2026シーズンまでで、2026-2027シーズンは6320万ドル(約90億3760万円)のプレイヤーオプションだ。

一方、デイビスは2019年のオフシーズンに、5年2億4000万ドル(約343億2000万円)のスーパーマックス延長契約を結ばないことをニューオーリンズ・ペリカンズに伝えた。2020年にフリーエージェントとなる状況だった。ペリカンズはトレードしなければ1年後に見返りなしでデイビスを失うところだったのだ。

デイビスのエージェントであるリッチ・ポールは当時、『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者に「アンソニーは正直に自分の考えを明確にしたいと望んだ。だから今、この決断を彼らに伝えた」と話している。

「それがアンソニーと球団の双方の今後にとって最善の利益なのだ」

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エージェントのアプローチ

デイビスがペリカンズ退団を望んでいると明らかにした際、ポールはデイビスがレイカーズでしかプレイしないとは言わなかった。デイビスは「安定して勝利し、優勝を競うチャンス」を求めているとしたのだ。

デイビスは2019年のオールスターウィークエンドで「ほかの全29チームが僕のリストにある」と話し、混乱を引き起こしたこともある。リストにあるのはミルウォーキー・バックス、クリッパーズ、ニューヨーク・ニックス、そしてレイカーズとする報道とは一致しない発言だった。

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一方、グッドウィンは戦略を完全に明確にしてきた。ウォジナロウスキー記者によると、ヒート以外の球団に「リラードをトレードするのは不幸な選手をトレードすることだ」と伝えたという。グッドウィンはジャクソン記者に、リラードが「ヒートでのプレイを望んでいる。以上」と話している。

また、グッドウィンは『The Oregonian』のアーロン・フェントレス記者に、「最終的に無駄になるかもしれない交渉」をチームに認めるのはフェアではないとも述べた。「デイム(リラード)をトレードするな」というネオンを掲げていたわけではないが、非常に明白なメッセージを送っていたのだ。

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NBAの処分

NBAは通達の中で、リラードやグッドウィンに面談し、グッドウィンが話をしたチームたちとも話したと説明している。リラードとグッドウィンが「どんなトレードになっても契約で求められる仕事をリラードは完全に遂行すると認めた」としつつ、非常に危険な状況にあると伝えている。

「我々はグッドウィンとリラードに対し、トレードの際に選手契約で求められる仕事をリラードが完全に遂行しないことを示唆する発言を今後チームに対して内々に、あるいは公にした場合、リラードがNBAから処分を科されると忠告した」

「また、選手会に対し、選手やエージェントによる同様のコメントは、今後処分の対象となることを忠告した」

デイビスの場合、通達はなかったが、NBAから5万ドル(約715万円)の罰金が科された。労使協定では、公にトレードを要求することが禁じられているからだ。リラードは最初にクローニンがトレード要求に関する声明を出したため、罰金を科されなかった。

結末は?

デイビスがロサンゼルスに到着したのは、ポールがトレード要求を明かしてから数か月後のことだった。2019年7月の入団会見で、デイビスはレイチェル・ニコルズ記者から何か違うように望んでいたか問われている。

デイビスは「いや、自分がやったように望んだ」と答えた。

「僕はとても正直で率直な人間なんだ。実際どうなのかを言いたい。僕はニューオーリンズの街を愛している。でも、バスケットボールのプロとして、仕事として、進むタイミングだと感じたんだ」

2019-2020シーズン、デイビスはレイカーズで自身初の優勝を飾り、オフシーズンに5年1億9000万ドル(約271億7000万円)の契約を結んだ。

リラードはヒートに移籍し、自分だけのおとぎ話のようなエンディングを迎えることができるのだろうか。どれくらい待つことになるのだろうか。

時はどんどん迫っている。まだ、マイアミは「デイム・タイム」になっていない。

原文:Anthony Davis vs. Damian Lillard trade request: Breaking down differences between Lakers, Trail Blazers stars(抄訳)

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