6月13日に行われたNBAファイナル2022のボストン・セルティックス対ゴールデンステイト・ウォリアーズ第5戦で、信じられないことが起きた。ウォリアーズのステフィン・カリーが、1本も3ポイントショットを決めなかったのだ。
歴代有数のシューターで、3Pに関する様々な記録を更新し、セルティックスとの第4戦でも7本の3Pを沈めていたカリーが、ウォリアーズが104-94で勝利した第5戦では、9本の3P試投で1本も成功させられなかったのである。
カリーはフィールドゴール22本中7本成功(31.8%)、フリースロー3本中2本成功で16得点にとどまった。だが、一方で8アシストをマークし、ターンオーバーは1だった。
試合後、カリーは「ロサンゼルス・レイカーズとの初戦でも、ショットが非常に似た感じだったが、違うかたちで試合に影響することができたのを覚えている」と話している。
「そしてその時に、自分のプレイはひどかったけど、正しいプレイでシンプルにやっていくことについて見直さなければいけないと言ったことも覚えているよ」
カリーの存在感、そして彼が止まることなく動くことで、ウォリアーズのチームメイトたちは攻撃面で活躍することができた。セルティックスが守備でカリーに対する警戒を強めたことで、アンドリュー・ウィギンズやクレイ・トンプソンといったシューターたちのスペースやドライビングレーンが空いたのだ。ウィギンズとトンプソンは合計47得点をあげている。
カリーは「僕がとにかくショットを狙おうとしなくても、僕らには様々な攻撃の仕方がある」と述べた。
「重力やボールを動かすことを駆使して、ウォリアーズのバスケットボールをするんだ。感覚的なことだよ。もちろん、アグレッシブさを失ってはいけない」
驚異的な記録に終止符
カリーは233試合連続で3Pを成功させていた。プレイオフだけでも133試合連続で最低1本の3Pを沈めていたのだ。プレイオフでは38試合連続で複数本数の3P成功を達成していた。
それらのカリーの3Pの最長記録が、突然終わりを迎えた。だが、本人はそれらをすべて冷静に受け止め、さらに優勝リングを勝ち取ることだけに集中している。
カリーは「あと1勝で任務を達成できるのはエキサイティングだ」と話した。
「簡単なことじゃないと分かっているよ」
「でも、特にここ2試合の僕らの攻守両面におけるエネルギーは素晴らしかったと思う。望むのは、できればシーズン最高の試合にしたいということだけだ。完璧である必要はない。でも、あと1勝することの意味を理解し、インテンシティーや集中力、実行力という点で最高の試合をしたい」
約3年半ぶりの3P成功ゼロ
カリーが1本も3Pを沈めなかったのは、2018年11月8日(同9日)のミルウォーキー・バックス戦以来だ。この試合でカリーは3P4本試投も成功なく、10得点にとどまったが、第3クォーターに負傷して途中退場している。
状況は大きく異なるが、ウォリアーズは第5戦でカリーが3P9本中0本成功だったことに少し期待しているかもしれない。優勝が決まる可能性のある第6戦に向け、カリーをさらに燃えさせると考えているからだ。
第5戦の試合後、スティーブ・カー・ヘッドコーチは「世界最高のシューターでもこういう試合はある」と述べた。
「そして幸いなことに、そういうことは多くない。ステフ(カリー)がこういう試合から巻き返すのが好きなんだ。彼の挽回力が好きなんだよ」
チームメイトのドレイモンド・グリーンも、指揮官と同じ気持ちのようだ。怒るカリーがウォリアーズにとって非常に有益だと考えている。
グリーンは「僕たちにとっては良いことだ」と話した。
「第6戦に向けて、彼は怒り狂っているだろう。まさに僕たちに必要なことだ」
3P成功なしの次の試合でのカリー
2016年、カリーは3P成功なしに終わった次の試合で、ニューオーリンズ・ペリカンズを相手に13本の3Pを沈めている。
カリーは「次の試合でよりうまくシュートできるのは記録が示している」と話した。
「その挽回力を楽しみにしているよ」
『ESPN Stats & Info』によると、2013年以降でカリーが3P成功なしだったのは9試合。そして次の試合で、カリーは平均4.4本の3Pを成功させている。
第6戦に向けたカリーの心境について、トンプソンは「挽回してくれると分かっている」と述べた。
「僕の周囲で最も競争的な選手のひとりだ。それに彼は僕と同じで完璧主義者なんだよ」
「彼は失敗したショットについて考えるはずだ。それは良いことだよ。ほとんどの場合、(次の試合で)平均的な数字を取り戻すからね。そして彼がそういう時は怖いんだ」