ここ6年で5度目のカンファレンス・セミファイナルに勝ち進んだイースタン・カンファレンスのボストン・セルティックスは、昨季王者ミルウォーキー・バックスという強敵と対戦する。バックスはトップ選手のひとり、オールスター選出3回のクリス・ミドルトンを第1戦で欠くとみられている。
チームで2位の得点をあげているミドルトンは、4月20日(日本時間21日)に行われたシカゴ・ブルズとのファーストラウンド第2戦の第4クォーターに内側側副靱帯を負傷した。球団は約2週間でミドルトンの状態を再度発表する予定としており、第1戦への出場は疑問視されている。ミドルトンは2017-18シーズン以降に2度のプレイオフシリーズでセルティックスと対戦しており、フィールドゴール成功率51.6%、平均22.4得点を記録している選手だ。
一方、セルティックスは今季のプレイオフ・ファーストラウンドで唯一となるスウィープ(4連勝)でブルックリン・ネッツを沈めており、休養十分。比較的健康な状態でバックスとのシリーズを迎える。
『NBA.com』のジョン・シューマン記者が指摘したように、セルティックスはここ3か月でNBAのベストチームだった。レギュラーシーズン最後の32試合で26勝をあげている。3月にひざを手術したロバート・ウィリアムズ三世も、ネッツとの第3戦で復帰した。
ケビン・デュラントとカイリー・アービングに対する厳しい守備や、フィジカルの強さでネッツを沈めたセルティックスだが、次は昨季ファイナルMVPのヤニス・アデトクンボを抑えるという、さらに大変なタスクが待っている。
アデトクンボはポストシーズンのセルティックス戦で平均26.8得点、10.1リバウンド、1.5スティールを記録しており、7勝5敗という成績だ。ただ、ミドルトンの欠場が予想されるなか、ドリュー・ホリデーやボビー・ポーティス、グレイソン・アレンといった選手たちの活躍が必要となる。
3つの注目ポイント
1. アデトクンボ対策
セルティックスはプレイオフの最初からデュラント相手にありとあらゆることをした。それがリズムに影響を及ぼしたのは確かだ。第1戦の前半、セルティックスは今季の最優秀守備選手賞を受賞したマーカス・スマートや、ジェイレン・ブラウン、ジェイソン・テイタム、アル・ホーフォード、グラント・ウィリアムズがデュラントを守り、歴代有数のスコアラーである彼をFG10本中2本成功の7得点にとどめている。
アデトクンボに対しても同様の守備プランが予想されるが、彼はデュラントほどセルティックスのフィジカルの影響を受けないだろう。ファーストラウンドでは主にテイタムがデュラントとマッチアップしていたが、アデトクンボはテイタムより30ポンド(約13kg)も重い。いずれにしても、セルティックスはアデトクンボに対する早いダブルチームを何度も行うだろう。アデトクンボはオープンな味方を見つけなければならない。プレイオフ平均2.5スティールのブラウンに気をつける必要もある。
2. ポーティスの貢献
ミドルトンの負傷でスターティングラインナップに入ったポーティスは、先発出場した最初の2試合で平均16得点、13リバウンドを記録。FG成功率は50%、3ポイントショット成功率は42%に達した。一方で、バックスは想定される得点力の低下を補うために守備を強めている。マイク・ブーデンホルザー・ヘッドコーチは「守備が良い時は攻撃にも影響する」と話しており、ミドルトン負傷でチームが「かなりハードに(守備に)傾いている」と述べた。
テイタムとブラウンを筆頭に、多くの得点オプションを持つセルティックスとの対戦でも、それを続けなければいけないのは確かだ。セルティックスのスターターのうち4選手は平均二桁得点をあげている。
3. 攻守両面でエリート級のテイタム
デュラントというスーパースターと対戦したファーストラウンドでのパフォーマンスで、テイタムは自信を深めているに違いない。ネッツとのシリーズでは平均29.5得点、7.3アシスト、1.8スティールを記録した。ただ、カンファレンス・セミファイナルでは、アデトクンボとホリデー、そしてブルック・ロペスというさらに堅固な守備と対戦する。
テイタムにとって良いのは、今季の彼がプレイメーカーとして大きく成長したことだ。セルティックスにはショットに関する強力なサポーティングキャストがいるだけに、バックスが自分を封じようとした場合、テイタムは自信をもって味方のためのプレイをすることができる。テイタムとブラウンはすでに抑えるのが大変な選手たちだが、スマートやホーフォード、ウィリアムズ、ペイトン・プリチャードはポストシーズンでロングショットが非常に正確だった。
興味深い数字
-18.2
バックスはファーストラウンドでブルズを100ポゼッションあたり96.5得点にとどめた。ブルズにとってこれはレギュラーシーズンより18.2も下回る。プレイ・バイ・プレイのデータがある過去26年(416チーム)で最多の数字となる落ち込みだ。第1戦と第3戦のブルズの得点は、今季2番目と3番目に少ない数字だった。
バックスは昨季もマイアミ・ヒートを100ポゼッションあたりの得点でレギュラーシーズンから15.2点少なく抑えており、これは過去5番目に大きな数字だ。
一方で、セルティックスも今季のレギュラーシーズンでリーグトップとなる守備を誇り、ネッツとのシリーズではデュラントをFG成功率わずか39%に抑えた。ただ、ネッツはシリーズ4試合で100ポゼッションあたり115.0得点をあげており、レギュラーシーズン(113.2)の数字を上回っている。
セルティックスのシリーズ突破で注目すべきは、むしろ攻撃だ。ネッツとのシリーズでは100ポゼッションあたり119.2得点と、今プレイオフで2番目の数字だった。レギュラーシーズンも守備がリーグトップだったが、攻撃も最後の32試合で26勝をあげるなか、リーグトップ(120.7)の数字を残している。
なお、レギュラーシーズンでの両チームの対戦は攻撃的な展開となり、4試合で両軍が100ポゼッションあたり約116得点をあげている。
— John Schuhmann
予想
完全に健康な状態なら、レギュラーシーズンの対戦成績は2勝2敗と五分だった。だが、バックスはミドルトンがシリーズ序盤に起用できるか疑問視されている。完全に健康になるころには遅すぎる、ということもあるかもしれない。
セルティックスは適切なタイミングで調子がピークに近づいている。ハングリーで、経験を積んだ若手たちがそろい、1年目のイメイ・ユドカ・ヘッドコーチは、攻守両面でチーム全体の粘り強さを高めてきた。
王者バックスはブルズとのホームでの第2戦を落とすなど、ファーストラウンドでやや脆さも見せている。今回のシリーズは接戦になるはずだが、ミドルトンのケガはバックスが乗り越えるにはあまりに大きいものとなるかもしれない。第7戦でセルティックスが勝利と予想する。
原文:Series preview: Surging Celtics take on Giannis, defending champion Bucks(抄訳)