2021-22年シーズンのNBAでは、日本人ダンサーが過去最多の5人になるなど、例年よりもチアリーダー/ダンスチームの存在が注目されるようにもなり、弊誌でも日本人ダンサーのインタビュー記事を掲載してきた。彼女たちのようなダンサーたちが、NBA全体のエンターテインメント性を彩る欠かせない存在として定着したのは、かつてのあるチームの試みと成功によるものだという。米国で3月から放送が始まった、あるスポーツドラマのなかで、その誕生劇が再現されている。
“ショータイム”時代再現ドラマ "Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty"
それは、米有料テレビ局HBOで2022年3月からスタートしたドラマシリーズ"Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty"(意訳:勝利のとき:レイカーズ王朝の始まり)という、『ショータイム』と呼ばれたロサンゼルス・レイカーズの黄金時代を描いた作品だ。同シリーズのシーズン1では、マジック・ジョンソンやカリーム・アブドゥル・ジャバーの活躍を中心に黄金時代へと突入する勃興の時期を再現している。現地時間5月8日放送の第10話で、シーズン1のフィナーレを迎える。(編注:日本での放送・配信は未定)
当のジョンソンやジャバーら関係者本人たちからは、ドラマは史実を正確に描写していないという批判を受けたが、シーズン1第5話放送後の4月7日にはシーズン2制作も正式に決まっている。
いずれにせよ同シリーズは、”ショータイム”と呼ばれていた1980年代のレイカーズが、バスケットボールのコート内に留まらず、のちにほかのチームも追随することになるものの先駆者であったことを、改めて我々に教えてくれる。
ジェリー・バス博士がレイカーズの経営権を手にしたのは1979-80年シーズンが始まる前のことだった。すると、ザ・フォーラム(ロサンゼルス郊外イングルウッドにあるレイカーズの本拠地)で行われるレイカーズの試合は大きく雰囲気を変えた。コートの中も、そして外でも、観客はエンターテインメントの興奮に包まれるようになったのだ。
なかでも最も大きく輝いたのがレイカー・ガールズだった。試合が休憩に入るたびに、このロサンゼルスのダンスチームが会場を沸かすようになったのだ。
"Winning Time"ではこのダンスチームの誕生とそこから生まれた最大のスターである、ポーラ・アブドゥルにスポットライトを当てている。(編注:ポーラ・アブドゥルとカリーム・アブドゥル・ジャバーに親族関係はない)
レイカー・ガールズの誕生
バスはチームのオーナーになって最初のシーズンを迎える前、試合を盛り上げるためにいくつかの新たな試みに着手した。そのなかで最も斬新であった試みこそ、初めてダンスチームをバスケットボールの試合に組み込んだことである。
バスは2010年のバスケットボール殿堂入りの表彰式を前に、レイカーズ公式サイトで「私は大学バスケットボールの雰囲気が好きでした。ですから、ライブ音楽とレイカー・ガールズを取り入れたかったのです。レイカー・ガールズはチアリーダーではありません。試合が休憩しているときにファンを盛り上げるエンターテイナーなのです」と言った。
レイカー・ガールズが誕生した経緯は同シリーズのシーズン1第5話に詳しく描かれている。
レイカー・ガールズの一員だったポーラ・アブドゥル
グラミー賞を受賞したアーティストであり、アイドルオーディション番組『アメリカン・アイドル』の審査員(2000~2009年)としても知られるポーラ・アブドゥルのキャリアはダンサーとして始まった。
ブレイクのきっかけになったのはレイカー・ガールズのメンバーになったことである。
アブドゥルは子供の頃から本格的なダンスを学び、1980年にロサンゼルスにあるバンナイズ高校を卒業した。
地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』によると、アブドゥルは大学1年生のときにレイカー・ガールズの一員として注目されるようになった。このダンスチームが誕生して2年目のことである。そして1年もかからないうちに、チームの主要な振付師を務めるようになった。
そして、ザ・フォーラムに来場した『ジャクソンズ』(マイケル・ジャクソンを輩出した兄弟ユニット)にその才能を見出されたアブドゥルは、彼らのミュージックビデオの振り付けを担当することになり、さらに彼らの妹ジャネット・ジャクソンの振付師として抜擢された。ほかのアーティストからも振り付けのオファーが続き、多忙になった1986年にレイカー・ガールズを脱退。1987年には歌手として英大手レコード会社"Virgin Records"と契約し、翌年にデビューアルバムを発表した。1989年、1990年には振付師としてエミー賞を2年連続受賞、1991年に自身の楽曲『甘い誘惑』(Opposites Attract)で第32回グラミー賞ベストミュージックビデオ部門を獲得した。
アブドゥルにとってレイカー・ガールズでの活躍は、エンターテインメントの世界へ飛躍するきっかけとなったのだった。
原文:Origins of Laker Girls takes center stage with Paula Abdul on HBO's 'Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty'
翻訳:角谷剛
※当記事は日本向けに一部、情報を補足・編集しています。