「13日の金曜日」に最後まで出会いたくない人物といえば、ジェイソンだ。
ホラー映画に出てくる「ジェイソン・ボーヒーズ」ではない。ボストン・セルティックスに所属する冷静な“殺人者”、ジェイソン・テイタムのことだ。
5月13日(日本時間14日)、負ければ敗退というイースタン・カンファレンス・セミファイナル第6戦を、テイタムはミルウォーキー・バックスにとっての悪夢とした。ファイサーブ・フォーラム(ウィスコンシン州ミルウォーキー)で46得点をあげ、チームを108-95の勝利と、15日(同16日)にTDガーデン(マサチューセッツ州ボストン)で行われる第7戦へと導いたのだ。
第5戦で落胆の黒星を喫したことが頭に残っていた中で、テイタムは雪辱しようと再戦に臨んだ。彼なりの「ジェイソンの復讐」だったのだ。
第4クォーターに一時14点をリードしながら逆転負けした第5戦について、テイタムは「ああいう負け方は悔しいものだ」と振り返った。
「みんな嫌な後味だった。でも映像を見て、そこから学び、僕たちは前向きになったんだと思う。まだシーズンを救う機会はあるのだと理解し、ここに来て勝利を収めることができた」。
テイタムは15本の3ポイントショットのうち7本を沈めた。セルティックが決めた17本の約半数だ。さらに9リバウンド、4アシストもマークした。万能の武器があれば、セルティックスが「鹿を恐れる」ことはなかったのだ。
21得点、5リバウンド、7アシストを記録したマーカス・スマートは、「恐れはなかった。僕らにはスイス・アーミーナイフがあるんだ。だから心配していない」と話している。
「とにかく正しいポジションにして、僕らのアーミーナイフが本領を発揮できるようにしなければいけないのさ」。
テイタムのパフォーマンスは歴史的だった。負ければ敗退というエリミネーションゲームにおける得点としては、サム・ジョーンズの球団最多記録まであと1点だったのだ。また、プレイオフでキャリア通算2回以上の45得点超も、ジョーンズに続く球団史上2人目だった。
第1Qと第2Qに各9得点をあげたテイタムは、第3Qに12得点をマークし、第4Qに16得点を記録して勝負を決めた。テイタムは「調子が良い時は分かるんだ。リズムを感じるんだよ」と話している。
「自分のスポットを見つけ、時間とスコア、その時の試合状況を理解し、アグレッシブになる。ただ、正しいプレイ、必要なことをしようとしなければいけない」。
テイタムは負ければ終わりという敵地での一戦で、自身のプレイオフキャリアで最もインパクトのあるパフォーマンスを披露し、44得点、20リバウンド、6アシストを記録したバックスのヤニス・アデトクンボとの勝負に打ち勝った。
第6戦は、「13日の金曜日」のパート6のようだった。「ジェイソンは生きていた」だ。バックスはジェイソンとセルティックスを水中に沈める機会を手にしていた。だが、彼と彼のチームは沈まずにとどまり、生き延びてまた次の日を迎えたのだ。