毎シーズン、NBAでは「ターンオーバー」がある。プレイオフに進出するチームが毎年移り変わっていくということだ。
その点で2022-23シーズンを見ると興味深い。2021-22シーズンにプレイオフに進出できなかったチームの中で、より健康になったチームや、シンプルにより良くなったチームが多くあるからだ。
決して簡単にはいかないだろう。東西どちらのカンファレンスも競争は激しく、昨季のプレイオフに進出した16チームのほとんどが、いまだ全盛期にある選手たちを擁している。
では新シーズンで、より長く戦うことができるようになるのはどのチームなのか。ロサンゼルス・クリッパーズ、ロサンゼルス・レイカーズ、シャーロット・ホーネッツ、ワシントン・ウィザーズ…ほかにもあるだろうか。
昨季プレイオフを逃したチームのうち、新シーズンにその舞台に進めるとみられる4チームを取り上げる。
ロサンゼルス・クリッパーズ
とにかく鍵となる選手が健康になり、その健康を保てることが願われるが、それを前提とすれば、クリッパーズはポストシーズン進出が運命づけられているチームだと言える。そして「鍵となる選手」は、言うまでもなくカワイ・レナードとポール・ジョージの両スターである。
実際に彼らが一緒にコートに立った時間は、ぼんやりと記憶している程度でしかないだろう。そう、彼らは私服を脱ぐ必要があるのだ。
レナードが最後にプレイしたのは2021年春のことだ。ウェスタン・カンファレンス・セミファイナルでひざを痛め、手術を受けて2021-22シーズンを全休した。一方、ジョージは昨季ひじのケガで1か月離脱し、出場31試合にとどまっている(安全衛生プロトコル入りのため、ニューオーリンズ・ペリカンズに敗れたプレイイン・トーナメントも欠場した)。複雑なことではない。クリッパーズにおいて、健康は財産に等しいのだ。
財産といえば、クリッパーズのオーナーであるスティーブ・バルマーは、必要ならばどんな手段を使ってでもタイトルを競うチームにしようと全力を注いできた。ラグジュアリータックス(ぜいたく税)のことも笑い飛ばしている。余裕をもって独自のアリーナを建設できるほどの、約750億ドル(約10兆2750億万円/1ドル=137円換算)に及ぶ莫大な資産を持っているからだ。
だからこそ、クリッパーズはレナードとジョージを中心に必要な駒をすべてそろえるべく、サラリーキャップの制限の中でできる限りのことをしてきた。
例えば、ニコラ・バトゥームが330万ドル(約4億5210万円)のオプションを破棄したのは、クリッパーズが昇給の上で2年の延長契約を結ぶと分かっていたからだ。ほとんどのチームなら、おそらくは毎試合で出場10分に満たない、ピークを過ぎた33歳を手放していたことだろう。彼はロールプレイヤーで、おそらくは今のクリッパーズが是が非でも必要とする選手ではない。
ジョン・ウォールと2年1300万ドル(約17億8100万円)で合意したのは、一種の割引だった。昨季、ウォールのサラリーは4400万ドル(約60億2800万円)だったのだ。ただ、ヒューストン・ロケッツと契約解消してから、彼の市場価値は下がっていた。最後に健康だった2020-21シーズン、ウォールはロケッツで40試合に出場し、平均20.6得点、6.9アシストを記録している。それ以前はウィザーズでオールスターやオールNBAチームに選出されていた選手だ。新シーズンを32歳で迎え、以前にアキレス腱とひざの問題を抱えている。だが、あらゆる点から、彼はその活力を全部とは言わずとも一部取り戻しており、意気込んでいることは確実だ。
レナード、ジョージ、バトゥーム、ウォールに加えて、レジー・ジャクソン、ルーク・ケナード、マーカス・モリス、ノーマン・パウエル、ロバート・コビントン、そしてテレンス・マン。新シーズンのクリッパーズにはスターの力、成熟度、層の厚みがある。そして、タロン・ルー・ヘッドコーチは優勝実績のある指導者だ。彼らは飛躍に向かっている。
クリーブランド・キャバリアーズ
地元で開催された2021-22シーズンのオールスターを迎えた時、クリーブランド・キャバリアーズはようやくレブロン・ジェームズ退団後の悲観的な状況を抜け出し、立派なグループとして、リーグ有数の上昇チームとなっていた。エバン・モーブリーは新人王の有力候補に挙げられ、オールスター選手となったジャレット・アレンとのコンビはサイズ面で利点となっていた。加えてケビン・ラブが以前のように活躍し、コリン・セクストンはポイントガードとして成熟し始めていた。
だがその後、アレンが負傷し、セクストンも負傷離脱。リッキー・ルビオも故障し、その後インディアナ・ペイサーズにトレードされた。モーブリーは新人の壁にぶつかり、オールスターブレイク後のキャバリアーズは9勝15敗にとどまった。
唯一の明るい材料は、ダリアス・ガーランドが頭角を現し、セクストンに代わってオールスター選手になったことだ。最終的に、キャバリアーズはプレイイン・トーナメントでアトランタ・ホークスに敗れた。
2022-23シーズンは、ローテーションの主なメンバーが全員戻ってくるはずだ。セクストンは制限付きフリーエージェントだがこれまでのところ良いオファーがなく、キャバリアーズとの再契約には至っていない。最終的にクオリファイング・オファー(単年契約)で落ち着くと考えられる。いずれにしても、ガーランドは延長契約を勝ち取っており、彼に追い抜かれたセクストンは、リハビリが終わってから出場時間を競うことになる。
プレイイン・トーナメントを経験したことや、若手選手たちがさらに成長すると仮定すれば、キャバリアーズはプレイオフ進出の最後の数枠を争うようになるはずだ(再びプレイイン・トーナメントを勝ち抜くことが必要となるかもしれないが)。
ポートランド・トレイルブレイザーズ
これまた興味深いチームだ。ポートランド・トレイルブレイザーズは必要としていたいくつかのピースを加えた。27勝だった昨季から改善するのは確かだろう。だが、十分なのだろうか。
ブレイザーズにとって好都合なのは、デイミアン・リラードが再び健康を取り戻すことだ(そしてユスフ・ヌルキッチも)。さらに新加入のジェレミー・グラントは得点力と守備力をもたらす。アンファニー・サイモンズは明らかに向上し、新加入のギャリー・ペイトン二世はバックコートの守備力を高め、ジョシュ・ハートは全盛期。少なくとも、リラードを安心させられるだけの非常に良いローテーションだ。
一方で問題は、ウェスタン・カンファレンスの過酷さだ。昨季のプレイオフに進出した8チームのうち、ルディ・ゴベアをトレードし、ドノバン・ミッチェルを巡る疑問が残っているユタ・ジャズがその座を失うとしても、そこに入るのはクリッパーズだろう。ブレイザーズは、健康なザイオン・ウィリアムソンを擁するペリカンズや、ゴベアを手に入れたミネソタ・ティンバーウルブズを上回らなければいけないのだ。ペリカンズとウルブズは昨季の西地区でプレイオフ最後の2枠を手にした。ウィリアムソンやゴベアがインパクトを残せば、さらに良いチームとなるはずだ。
しかも、昨季はプレイオフを逃したものの、アンソニー・デイビスが健康になったレイカーズとの競争もある。
ただ、昨季西地区でポストシーズンに進めなかったチームの中で、最も改善されたのはブレイザーズだ(クリッパーズは『より健康になったチーム』だ)。競合する西地区のチームの中に、予想に反して躓くチームが出てくれば、ブレイザーズが有利になるだろう。
ニューヨーク・ニックス
苦しむファンを安心させるためにも、このリストにニューヨーク・ニックスを含めなければいけないだろう。
少なくとも彼らは、フリーエージェントでダラス・マーベリックスからジェイレン・ブランソンを獲得し、プレイイン・トーナメントに進めるだけのチームとなったはずだ。さらに、RJ・バレット、ミッチェル・ロビンソン、オビ・トッピン、クエンティン・グライムズといった若手スターたちが、昨季終盤の数か月で見せたように向上していくことも期待される。
ブランソンに関しては、わずかながら不安があるかもしれない。彼はチームをけん引したことがなく(マーベリックスでその仕事はルカ・ドンチッチが務めていた)、大都市のファンの期待を考えれば、難しい状況に陥る可能性がある。
しかし、ブランソンはタフな選手だ。気持ちが強く、競争心があり、誇り高く、ドンチッチがケガをしていた昨季プレイオフで活躍した。スターダムへの準備はできていないかもしれない。しかし、彼を指導した者や彼とプレイした者は、彼がうまくやれなければ驚くはずだ。
ニックスが昨季苦しんだのは、デリック・ローズが負傷し、必要なリーダーシップをとることができなかったからだ。そしてなにより、ジュリアス・ランドルが不調だった。ブランソンが加わったことで、ランドルはあまりボールを扱う必要がなくなる。それにより、ランドルはよりフィニッシャーとなることができるだろう。その役割で彼は不振から巻き返せるかもしれない。
もちろん、サスペンスには満ちているだろう。ニックスはいつもそうだ。だが、ブランソンを獲得したことで、彼らはチャンスを手にした。
原文:4 non-playoff teams that could be playoff-bound in 2022-23(抄訳)