2016年のドラフトでフィラデルフィア・76ersに全体1位で指名されたベン・シモンズが、退団から9か月を経て、ついにフィラデルフィアへと戻る。
2月の大型トレードでブルックリン・ネッツに加入したシモンズだが、ペンシルバニア州フィラデルフィアのウェルズ・ファーゴ・センターで古巣76ersと対戦するのは初めてだ。本人は、フィラデルフィアのファンから大きく騒がれることを想定している。
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シモンズは対戦を前に「どうなるかは分かっている。それもゲームの一部だ」と話した。
「フィリーのファンに関してひとつ言えるのは、彼らは素晴らしいということだ。とことんフィリーで、どんなことであれ、すべてフィリーなんだ。そういうところを尊敬する。スポーツの街だ」
フィラデルフィアでのシモンズの日々は、騒動のうちに終わった。プレイオフでアトランタ・ホークスに敗れ、トレードを要求し、長期にわたるチームからの離脱。フィラデルフィアでの4シーズンでやってきたことは台無しになった。
別れ方を思い出すのは簡単だ。ただ、シモンズは76ersで様々なハイライトシーンも披露しており、成果を残している。
ケガで1年目を欠場したシモンズだが、2017-18シーズンにリーグを席巻。平均15.8得点、8.2アシスト、8.1リバウンド、フィールドゴール成功率54.5%を記録した。
NBAデビュー戦では18得点、10リバウンド、5アシストをマーク。当時の76ersのヘッドコーチだったブレット・ブラウンは、ビッグなポイントガードをリーグに解き放ったのだ。
その試合後、シモンズは「正直、2Kをやっているみたいだった」と話している。
エリート級の守備能力を持った6フィート10インチ(約208センチ)のポイントガードなど、近年のリーグではなかなか見られなかった。かつてなかったことかもしれない。76ersが前年の28勝から52勝と飛躍し、2011-12シーズン以来となるプレイオフ進出を果たしたことで、シモンズはフィラデルフィアを新時代に導くかと思われた。
派手なビハインド・ザ・バックのアシストから、猛犬のような守備、トランジションで対戦相手を痛めつける力と、フィラデルフィアでシモンズは毎試合のようにハイライトシーンを生み出した。
シモンズは新人王に輝き、オーストリア人選手としては2006年のアンドリュー・ボーガット以来となるオールルーキー・ファーストチーム選出を果たす。何より、シモンズとジョエル・エンビードが一緒に台頭したことで、エリート級のタレント2人が長年負けていた球団の土台となり、向上の過程を信じるという「ザ・プロセス」の信念が開花するかに思われた。
シモンズは、「ザ・プロセス」が無駄でなかったという希望をもたらしたのだ。
忘れてはならないが、シモンズとエンビードのどちらを中心に球団は未来を築くべきかと議論されていたのだ。シモンズはエンビードがいない時にも何度か自身最高級のプレイを見せた。42得点を含むトリプルダブルを達成したユタ・ジャズ戦、34得点を含むトリプルダブルに加えて5スティールを記録したネッツ戦などだ。連勝で締めくくった2017-18シーズンのレギュラーシーズンの最後は、エンビードが欠場した8試合で平均15.6得点、9.5リバウンド、9.3アシスト、2.0スティールを記録している。
シモンズはオールスターに3回選ばれ、オールディフェンシブ・ファーストチームに2回、オールNBAサードーチームに1回選出された。スティール王にも輝き、年間最優秀守備選手賞の投票で2位にもなった。シモンズがプレイした4シーズン、76ersは常にイースタン・カンファレンスの3位以上でレギュラーシーズンを終えている。
しかし、76ersがプレイオフのセカンドラウンドに進出できないことで、ファンは不満を募らせていった。ルーキーシーズン以降、堅実だが停滞していたシモンズのショットや数字に対する不満の声も絶えなかった。
エンビードとのコンビネーションも、レギュラーシーズンでは生産的だったが、プレイオフでは物足りなかった。2人がコートで同じスペースを占め、コンビ解散は時間の問題と思われるようになった。
今のシモンズはゆっくりとネッツで地に足をつけており、以前よりもキャリア序盤のオールスター級の選手のように見える。
シモンズは、フィラデルフィアのファンの前に登場する準備を整えている。複雑な感情の夜となるだろう。シモンズがフィラデルフィアに来た時、チームは負け続けていた。彼が去るまでに、76ersはイーストの強豪となった。残念な別れ方で彼と76ersファンの関係がぼろぼろになったのは否定できない。だが、フィラデルフィアでのシモンズは確かにスターだった。
原文:Don't forget that Ben Simmons was awesome with 76ers before trade to Nets(抄訳)