【開幕展望】西地区パシフィック・ディビジョン|NBA 2022-23シーズン

2022-10-16
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(NBAE via Getty Images)

ようやくNBAの2022-23シーズンが到来した。

新たな王者の誕生から4か月。その間、選手やコーチの移籍があっただけでなく、トレードの噂(ラッセル・ウェストブルック)は絶えなかった。元ドラフト全体1位指名選手(ディアンドレ・エイトン)がフリーエージェントで移籍しようとし、選手とコーチ(フェニックス・サンズ)、あるいは選手同士の確執(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)も騒がれた。すべて、パシフィック・ディビジョンの出来事だ。

レギュラーシーズン開幕が迫るこのタイミングで、ディビジョンの各チームの立ち位置を見ていこう。

連覇への挑戦が正式に始まる前から、ウォリアーズは痛手を受けたのか。サンズはすでにピークを過ぎたのか。万全のロサンゼルス・クリッパーズはどれほどやれるのか。ロサンゼルス・レイカーズは問題を解決できたのか。サクラメント・キングスは今年こそ問題を把握できるのだろうか。

ベストチーム:ロサンゼルス・クリッパーズ

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現実的に、パシフィック・ディビジョンにはベストチームにふさわしいチームが3つある。普段は王者がその名誉を手にするものだが、ウォリアーズにケミストリーの懸念があるだけに、目が向けられるのはクリッパーズだ。彼らは、無視するにはあまりに優れている。

カワイ・レナード不在の昨季、42勝40敗という成績だったクリッパーズは今季、スターティングラインナップにスーパースターが戻ってくる。彼は再び以前のような調子に戻っているようだ。レナードがプレイするのは、攻守両面でリーグ史上有数の選手らしい力を見せつけていたポストシーズン以来のこととなる。

そのレナードの存在によってクリッパーズのナンバー2となるのが、ポール・ジョージだ。リーグの多くのチームのナンバーワンより優れた選手である。一歩退くことができ、プレッシャーが減る今季、ジョージは素晴らしいシーズンにできるはずだ。

多くのチーム同様、クリッパーズの成功は健康にかかっている。健康であれば、彼らがNBAで最も層の厚いチームであることは間違いない。タロン・ルー・ヘッドコーチは、ロスターにタレントが多すぎるというぜいたくな悩みに直面している。センターを除き、各ポジションでスターター級の選手を少なくとも2人ずつ擁しているのだ。特に大きかったのが、オフシーズンのジョン・ウォール獲得。彼はレジー・ジャクソンとリードガードの座を分かち合うはずだ。

クリッパーズはジョージやレナード、ウォールといったベテランたちを休ませることが避けられないが、層が厚くなったことで、そういう時でも活躍できるはずだ。素晴らしいレギュラーシーズンとし、上位シードを手にして、プレイオフでも勝ち進んでいけるだけの位置につけている。

ベストプレイヤー:ステフィン・カリー(ウォリアーズ)

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昨季王者ながらディビジョンのベストチームと認められないかもしれない。だが、彼らはディビジョン最高の選手を擁している。レブロン・ジェームズやレナード、デビン・ブッカーといった選手たちがいるディビジョンだけに、その意味は大きい。

単体のアスリートとして歴代有数の1年を過ごしたばかりのカリーだが、直近で成し遂げたことを土台にさらに築いていこうというモチベーションがある。主にシュート力、ボールを持っていない時の動きなど、ゲームを統率する力で、34歳にして優雅に年をとっていると思い出させているのだ。

2021-22シーズンのレギュラーシーズンで平均25.5得点、6.3アシスト、5.2リバウンドを記録したカリーは、ケガを乗り越え、ポストシーズンで自己最高のパフォーマンスを披露した。NBAファイナル第4戦の43得点という大活躍はそのひとつだろう。

昨季のファイナルMVPを受賞したカリーは、オフシーズンに休養と回復に努めた。つまり再びフレッシュになり、シーズンが進むにつれてエリート級のレベルに達する準備を整えているということだ。

ベストルーキー:キーガン・マレー(キングス)

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1985年にキングスがサクラメントに移転して以降、オールルーキーチームに選ばれたキングスの選手は9人だけだ。新人王を受賞したのは、タイリーク・エバンスしかいない。

だが、今季のマレーには、その双方の候補リストに名を連ねるだけの十分な可能性がある。リーグ最高のルーキーのひとりが、ディビジョン最高のルーキーとなることは間違いないだろう。

2022年のNBAドラフトで全体4位指名されたマレーは、典型的なルーキーよりもはるかに洗練されている。そのスキルを存分に発揮したのが、ラスベガスでのサマーリーグだ。マレーは4試合に出場し、平均23.3得点、7.3リバウンドを記録してMVPに選ばれた。

キングスでの1年目は、派手な数字を残せないかもしれない。だが、ディアロン・フォックス、ドマンタス・サボニス、デイビオン・ミッチェル、ケビン・ハーターといった才能ある主軸とともに活躍していくはずだ。

ベスト補強:ジョン・ウォール(クリッパーズ)

今オフシーズンのパシフィック・ディビジョンではいくつか動きがあったが、最も目を引いたのは、クリッパーズがオールスター選出5回のウォールを獲得したことだ。

ウォールが最後にオールスターに出場してから5年が経つ。2018-19シーズンの開幕以降、通算出場は72試合だ。それでも、彼の加入はクリッパーズを本当に恐ろしいチームとする大きな一因となる。2020-21シーズンのウォールは、ヒューストン・ロケッツで平均20.6得点、6.9アシストを記録した。

2021-22シーズン、ウォールはケガのためではなく、ロケッツとの合意の一環として全休した。現在32歳の彼は昨季、実質的にシャープな状態を保ちながらも肉体を休ませている。それだけに、クリッパーズでは大きなインパクトを残せるだろう。

オールスターに出場していたころのウォールではないかもしれない。だが、カリーやクリス・ポール、フォックス、ウェストブルックがいるディビジョンでウォールが先発ポイントガードを務めることは、クリッパーズをさらに有利にさせる。

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未知の要素:ウェストブルック

壊れたレコードのように聞こえるかもしれないが、ウェストブルックのレイカーズでの1年目が計画どおりにいかなったということは先に書いておこう。

オフシーズンにトレードを噂されたウェストブルックは、今のところまだレイカーズにいるが、シーズンを通じてその不確実さは大きくなるだろう。それでも、ダービン・ハム新HCは彼を称賛し続けてばかりだ。シーズンに向け、元MVPのウェストブルックが正しいことを言い、正しいことをやっているとまで話した。

ウェストブルックが守備やカッティング、トランジション、コーナーからのショットなど、レイカーズが思い描いていることに本当に取り組むなら、チームの様相は大きく変わる。

現状、レイカーズは優勝候補どころかプレイオフ進出を競うのもやっとだ。だが、ウェストブルックが納得して取り組むなら、魔法のように優勝候補になるわけではなくとも、はるかにもっと厄介な存在となり、そのタレントと経験を生かして持続的に戦いきることができるようになるだろう。

もしもウェストブルックがそのようにならなければ、おそらく再びトレードが激しく噂されるようになり、レイカーズの実験は終わりとなるはずだ。

もしかしたら、それすらも関係なく、ウェストブルックは放出される予定なのかもしれない。もし彼が純粋に納得してプレイした場合、逆に放出するという決断が難しくなる可能性もある。

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各チームにまつわる疑問

ウォリアーズ

クレイ・トンプソンを心配すべきだろうか。2シーズン半の離脱を経て、2022年に復帰を果たした彼は、昨季のウォリアーズの優勝において重要な役割を担った。だが、このプレシーズンもチームは慎重なアプローチで管理している。今季の彼がどれほど起用可能か、その傾向に注目したい。

優勝したことの影響はあるのか。昨季は優勝候補から外されながら優勝を果たした。その感動は、今季のウォリアーズのハングリー精神にどう影響するだろうか。

ドレイモンド・グリーンの件をチームは乗り越えられるのか。考えられないことではなかったが、グリーンはチームの信頼を取り戻さなければならないとケボン・ルーニーが話したことは懸念だ。それはどれくらいかかるのか。そして信頼の欠如があるなら、それでも勝つことができるのだろうか。

クリッパーズ

期待と同時に押し寄せる重圧に対処できるのか。理論上、クリッパーズは優勝候補だ。だが、まだこれからシーズンを戦い抜かなければならない。歴史的にこの球団は大きな期待に応えることができなかった。今季はそれが試される。

レナードは完全に以前の調子を取り戻したのか。開幕戦からコートに立つとして、それは最後に重要な試合に出てから16か月ぶりのこととなる。さびを落とすためには時間が必要かもしれない。それはどれくらいになるのだろうか。

選手層が厚すぎるということはあるか。現状のままなら、クリッパーズは、優れた選手たちがまったくとは言わずともかなりの時間出場できなくなる。ローテーションに入れない時に、そういう選手たちはチームに関わっていこうとし続けられるのか。ルーHCはぜいたくな悩みにどう対処していくのか。それぞれの役割がケミストリーに影響することはあるだろうか。

レイカーズ

ジェームズはまったく衰えないのか。唯一無二の存在だが、年齢には勝てない。38歳になるシーズンなのだ。どういった点で衰えがあると予想されるだろうか。昨季は平均30得点超をあげたが、出場可能な試合の数が問題となった。何か大きなことを成し遂げるためには、今のレイカーズでジェームズがベストの状態でなければならない。

アンソニー・デイビスは健康を保てるか。レイカーズに加入して以降、彼は225試合のうち138試合にしか出場していない。レイカーズはスター選手たちがけん引しながら競うチームづくりだ。そのため、デイビスがどれだけ起用可能かは、ジェームズがどれほどスーパースターとして活躍できるかと同じように重要となる。

新戦力はうまくフィットするのか。今季のレイカーズは、パトリック・ベバリーを筆頭とする新たなベテランたちや若手が加わりロスターを入れ替えた。そのポテンシャルを最大限に発揮するためには、複数の新戦力の活躍が必要だ。

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サンズ

ピークは過ぎたのか。昨季のレギュラーシーズンで球団記録を更新したのは素晴らしかった。だが、我々がずっと覚えているのは、ホームのファンの前で手痛く敗れたプレイオフ第7戦だ。2021年のNBAファイナルでの敗北がピークで、そこからは下り坂ということもあるかもしれない。ウェスタン・カンファレンスは非常に競争が厳しいのだ。

ロッカールーム内はすべてOKなのか。エイトンは夏を通じてモンティ・ウィリアムズHCと話さなかったという。ジェイ・クラウダーは退団を望んでいる。目に見えること以上の何かはあるのか。チームのケミストリーは大きな打撃を受けているのか。

ポールとブッカーは再びリーグ最高のバックコートコンビとなれるのか。昨季の記録が物語るように、サンズがリーグ有数だったのは、ガードのスターたちによるところが大きい。ポールは今季18年目を迎える。一方のブッカーはさらに飛躍し、また新たなレベルのスターとなるかもしれない。

キングス

今季こそ苦悩は終わるのか。キングスが最後にプレイオフに進出したのは2006年。ポストシーズン出場を逸している期間は、現在の北米メジャープロスポーツにおいて最長だ。昨季は全力を尽くしたが、無駄だった。今季はようやく逆境が終わるシーズンとなるのか。

マイク・ブラウンは適任なのか。暫定指揮官を含め、彼はキングスにとってここ10年で8人目のヘッドコーチだ。昨季、ウォリアーズでアシスタントコーチとして優勝したブラウンは、キングスの運命を好転させようとしている。最後にNBAでヘッドコーチを務めてから8年だが、キングスで安定して指揮を執ることができるだろうか。

フォックスは飛躍できるか。NBA入りして以降、フォックスは常にとても良い選手だった。だが、良い選手から偉大な選手になろうとするなかで頭打ちしているようだ。今季で25歳とフォックスはまだ若い。だが、キングスが飛躍するには、彼が以前から言われていたようなオールスター選出レベルに成長することが必要だろう。

原文:2022 Pacific Division Preview: Can Clippers or Suns dethrone the defending champion Warriors?(抄訳)

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