リオネル・メッシが2022年スポーティングニュース年間最優秀アスリート賞に輝いた理由

2023-01-08
読了時間 約3分
(SN/Getty Images)

FIFAワールドカップ・カタール2022において歴史的なパフォーマンスを見せたリオネル・メッシが、『スポーティングニュース』の2022年の年間最優秀アスリート賞を受賞した。本誌のマイク・デコーシー記者が、その理由を解説する。


1968年の創設以来サッカー選手が初受賞

2022年を通じてリオネル・メッシ(アルゼンチン代表/パリ・サンジェルマン所属)が地球上で最も偉大なサッカー選手だったのは、1か月間だけだったかもしれない。だがそれは、理想的な1か月だった。どちらがより重要だったかは分からないが、一生の夢をかなえるため、そしてキャリアにつきまとった呪いを払しょくするために、最高の存在とならなければいけない1か月だった。

FIFAワールドカップは4年ごとに開催される。5大会に出場した選手はごくわずかだ。メッシは優勝するためにそれだけの挑戦を必要とした。初出場だった2006年と違い、自分よりも地位が確立されたベテランのビッグスターたちはいなかった。2010年と違い、アルゼンチン代表を率いていたのは、マラドーナという現役時代の天才的キャリア以外の経歴がなく、その仕事にふさわしい才能もないと思われた「名前」重視の監督ではなかった。そして2014年や2018年と違い、アルゼンチンは刺激に満ちた、若く団結したチームだった。

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彼らはレオにワールドカップで優勝させようと、全員が唯一の目標に向けて意気込んでいたのかもしれない。結果、彼はその優勝を成し遂げることができた。

非常に魅力的だったワールドカップ決勝の余韻が残るなか、『スポーティングニュース』は年間最優秀アスリート賞にメッシを選出した。1968年に始まったこの賞がサッカー選手に贈られたのは初めてだ。

メッシはUEFAチャンピオンズリーグで4回、国内リーグで11回、そしてコパ・アメリカで優勝を果たしている。これらのタイトルを目指すなかで見せたサッカーのほうが、今回のワールドカップ以上だったかもしれない。実際、2011年にバルセロナでチャンピオンズリーグを制覇した際、メッシは13試合で12ゴールをあげている。2013年にバルサがラ・リーガで優勝したときは、46得点11アシストという成績を残した。リーグ王者となったチームの総得点の51%に関与したのだ。

しかし、FIFAワールドカップ・カタール2022におけるメッシの支配ぶりには、より多くの意味があった。しかも、彼は極めて重圧のかかるなかでそれを成し遂げたのである。

かつてペレやマラドーナが成し遂げたことを達成する上で、今回はメッシにとって最後のチャンスだった。ペレやマラドーナは、メッシより若くして優勝を経験している。メッシは昨年6月に35歳となったが、ペレがブラジル代表で最後の試合に出場したのは31歳のときだった。マラドーナは30歳で1990年のワールドカップ決勝を戦い、以降の公式戦出場は5試合だ。

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しかしメッシは、サッカーにおいては老いたとされる時期に、これまで成し遂げていなかったことを達成した。そしてそれは、誰も成し遂げたことのないものだった。アルゼンチンの7試合のうち5試合でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれており、これはFIFAワールドカップの新記録だ。異なる2大会で大会最優秀選手を意味するゴールデンボールを受賞した唯一の選手にもなった。また、グループステージ、ラウンドオブ16、準々決勝、準決勝、決勝と、大会のすべてのラウンドで得点をあげている。これも、史上初のことだ。

おそらくは史上最高のワールドカップ決勝となった白熱のフランス戦で、メッシは前半に先制点となるゴールを決めた。望んだようにそのリードを保つには至らなかったが、延長後半には優勝に迫る追加点をあげている。それでもフランスの粘りでPK戦に持ち込まれたが、メッシはそのPK戦で1人目のキッカーを担当し、成功させてみせた。マラドーナの傑作だった1986年以来となる優勝にアルゼンチンを導くべく、メッシはできる限りのすべてをやってのけたのだ。

クラブでの快挙も欠かせない。2021-2022シーズンのフランスのリーグアンで2位マルセイユに15ポイント差をつけて優勝したパリ・サンジェルマンで、メッシは15アシストを記録した。そのうち10アシストは2022年にマークしている。2022-23シーズン前半戦は、リーグ戦の13試合で7得点10アシストを記録し、チャンピオンズリーグのグループステージ5試合で4得点4アシストをマークした。すべて、35歳の選手としては驚異的だ。ただやはり、メッシの2022年といえばワールドカップだろう。

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MLBニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジは、アメリカン・リーグの新記録となる62本のホームランを放った。ヤンキースは99勝をあげ、ヒューストン・アストロズに敗れたが、アメリカン・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズまで勝ち進んだ。

NBAゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーは、自身にとって4つ目の優勝リングを手にした。得点ランクでリーグ10位、プレイオフでは5位の成績を残し、NBAファイナルでは最多の平均31.2得点をあげている。

しかし、2022年のスポーツ界において、メッシ以上に多くのことを要求されたアスリートはいない。そして彼はその要求を満たしただけでなく、支配したのだ。数年おきにしか用意されない舞台で、サッカーにおいて稀有なやり方で、それを達成したのである。

年間最優秀アスリート賞の候補選手は、ほかにもいる。だが、受賞者として理想的なのは、ひとりしかいない。

原文:Why Lionel Messi as The Sporting News Athlete of the Year? No one else conquered the entire world
翻訳・編集:スポーティングニュース日本版編集部

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