復帰タイミングが二転三転しているコナー・マクレガーだが、やはり来年がカムバックイヤーとなりそうだ。
『UFC 303』のマイケル・チャンドラー戦キャンセル後、仕切り直しの復帰戦の焦点は「年内にやるのか」だった。そうした中で、最大の当事者であるマクレガー本人がXへの投稿で12月復帰を打ち上げた。
米ケーブル局のリアリティショー『ダナ・ホワイト・コンテンダー・シリーズ』の大会後、UFCのCEOダナ・ホワイトは、記者の質問に答える形で「コナー(マクレガー)は今年はもう試合をしない」とコメントすると、その映像を引用ツイートする形でマクレガー当人が口を開いた。
「ダナ! 12月だ! 一年を最高のイベントで締めくくるんだ! なのになんだ、この状況は! 俺は来月、準備のために高地に向かう。12月! ダナとUFCに12月だと伝えてくれ! 12月の試合は俺たちのものだ!」
12月14日に米ネバダ州ラスベガスで開催される『UFC 310』でマクレガーは復活を果たすのか。マクレガーの希望に対してダナ・ホワイトCEOがどう動くのか注目されていたが、ホワイト氏は9月10日になって、改めて年内のマクレガー復帰戦がないことを明言。その代わり、2025年初頭に試合を行うだろうと米紙『New York Post』に答えた。
「年内復帰プラン」のはしごを外されたマクレガーだが、9月14日にエドガー・ベルランガ戦を控えるボクシングのスーパーミドル級3団体統一王者サウル『カネロ』アルバレスを挑発するようなコメントをSNSに投稿。カネロ側もマクレガーとの対決に「簡単に金が稼げるな(Easy Money)」と揶揄したと、英専門誌『Boxing Scene』などが一斉に報じた。
かつてフロイド・メイウェザーとマクレガーの世紀のボクシングマッチに関与したホワイト氏だが、「マクレガーvsカネロ」にはいい顔をしなかった。いずれにせよ来年初めの復帰戦のカードについては明かされておらず、チャンドラーとなるのか、それとも別の誰となるのか、続報が待たれる形となった。
関連記事:コナー・マクレガーが人気ビデオゲームで暗殺対象に(外部配信)
マクレガーの復帰戦をめぐるこれまでの紆余曲折
コナー・マクレガーは2021年以来、オクタゴンで戦っていない。UFCで2階級を制覇した『ザ・ノートリアス』マクレガーが再び戦う日が来るかは誰にもわからない。それでも、マクレガーの復帰を待ち続けてきたファンはついに、現地時間6月29日開催の『UFC 303』でマクレガーがマイケル・チャンドラーと対戦するというニュースに報われたはずだった。
もともと『UFC 303』の記者会見は6月3日に(マクレガーの母国)アイルランドのダブリンで開催される予定だったが、当日にキャンセル。UFCはその日に声明を発表し、「自分たちにはどうしようもない事象が次々と起こったため」キャンセルすることになったと発表し、マクレガー当人も謝罪した。
UFCのCEOダナ・ホワイトは6月2日の『UFC 302』開催から48時間後、ダブリンへ向かい、マクレガーと面会すると話していた。
「UFCと協議し、自分たちにはどうしようもない事象が次々と起こったため、今日の記者会見はキャンセルされました。自分を応援してくれるアイルランドのファン、世界中のファンにご迷惑をおかけしたことを謝罪するとともに。皆さんの情熱、サポートに感謝します。オクタゴン史上最高のショーを披露する日が待ちきれません」
昨年放送されたリアリティショー『ジ・アルティメット・ファイター31』(UFC正式デビュー前の若手選手登竜門企画のひとつ)でコーチを務めた時から、マクレガーとチャンドラーの対戦する流れはできあがっていた。2人が番組の中で指導したファイターたちの対戦はチーム・チャンドラーの圧勝で終了したものの、恒例のコーチ対決があると囁かれていた。だが、その後は何の発表もないまま、ただ時間が過ぎてしまった。
マクレガーは『UFC 264』(2021年1月24日)で行われたダスティン・ポイエー戦で負った頸骨骨折からの復帰を目指している。その一方で、自身のビジネスに加え、新作映画『ロードハウス/孤独の街』のプロモーションも行っていた。さらにその間には、2件の危険運転、法廷での審理、(各方面との)SNSでのバトルといったトラブルもあった。
USADA(全米反ドーピング機関)とUFCの組織間での衝突から、結局マクレガーの検査対象入りで決着するなどのいざこざもあった。
そうした紆余曲折を経て、対戦決定まで進んだはずだったが、会見ドタキャンを機に不穏な展開を迎え、試合中止となった。
6月15日、マクレガー本人が沈黙を破り、自身のInstagramに謝罪文を投稿した。
「予定されていた復帰戦がなくなったことは本当に悔しい。記者会見の前に怪我を負い、回復には長い時間が必要だった。この試合を延期するという決断は軽々しく下したものではなく、医師、UFC、そしてチームと相談して下したものだ。この試合を待っている私のファンと対戦相手に報いるためにも、最善を尽くしたい。そして私たちはそこ(試合に)にたどり着く! 応援のメッセージをありがとう。私は健康になって、また戻ってくることを確信しています!☘️」
対するチャンドラーはといえば、『UFC 281』(2022年11月12日)でのポイエー戦の敗戦以降、こちらも2年を超えるブランク後の試合となるこのマクレガー戦をずっと待ち続けている。
果たしてマクレガーvsチャンドラー戦はこの先、実現するのだろうか?
本記事は今後進展があり次第、随時アップデートしていく。
『UFC 303』のマクレガーvsチャンドラー消滅の経緯
『UFC 303』の記者会見がキャンセルされて以来、マクレガーvsチャンドラーに関するアップデートは一切なかった。
6月13日時点で両者の対戦はまだUFCのスケジュールページには掲載されていた。チャンドラーも6月4日に自身のSNSで、今回の対戦は「#UFC303 に疑念の種が生まれているが、前に進もう。頂点で会おう!」と、この試合の可能性はまだなくなっていないことを書き込んでいた。
Planting seeds of doubt. #UFC303
— Michael Chandler (@MikeChandlerMMA) June 4, 2024
-
Walk On.
-
See you at the top! pic.twitter.com/9BrPLVsqyO
ネットでは、試合中止の正式発表前、格闘技ファンがメディアが、『UFC 303』へのマクレガー参戦をプロモートするハイライト映像が削除されたと指摘していた。
マクレガーの投稿の翌日(6月17日)、UFCのCEOダナ・ホワイトがラジオのスポーツ・トークショー『ザ・ジム・ローム・ショー』に出演し、マクレガーの復帰の可能性は(責任者である)ホワイト自身も分からないと語った。
「コナーは7月には36歳になる。金はたくさん持っている。(UFCレジェンドのひとり)ジョン・ジョーンズもそうだが、そういう選手たちのことは誰にも分からない。またファイトするかもしれないし、しないかもしれない。コナー・マクレガーもまたファイトするかもしれないし、しないかもしれない。あのレベルの選手たちを理解するのは難しいし、いつまた見られるかは誰にも分からない」
ちなみに、ホワイトはこのラジオ番組の中で、マクレガー戦を待ち続け2年近いブランクとなっているチャンドラーに対して、もし望むのであればマクレガー以外の選手との試合を組む意向があることを語っていた。
しかし、結果として『UFC 303』での両者のマッチアップは消滅し、チャンドラーも代替えの選手相手の復帰戦は行っていない。
マクレガーvsチャンドラーはこの先実現するのか?
暗礁に乗り上げていたかに見えたマクレガーの復帰戦だが、一躍12月14日(土)に米ネバダ州ラスベガスで開催される『UFC 310』での実現がクローズアップされた。『MMA Fighting』のアリエル・ヘルワニ記者がUFC側の意向として12月14日を模索していると報じたのに続き、マクレガー自身もその日程に前向きな姿勢を見せたからだ。
7月18日(木)にスペイン・マルベーリャで行われたベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンシップ(BKFC)の記者会見の場で、『サン・スポート』のチサンガ・マラタ記者から『UFC 310』への参戦に関心を問われたマクレガーは肩をすくめながら「悪くないね」と答えた。
また、その会見の場で、マクレガーはUFCとの契約があと2試合残っていることを明かし、その後にBKFCに参戦する可能性があることも示唆した。
「UFCとの間にはまだちょっとビジネスが残っていてね、契約はあと2試合ある。でも、この壇上の軽量級の選手たち3人にもしっかりと目を光らせているよ。自分は単に(BKFCの)オーナーとしてここに来たわけじゃない」
しかし、UFCのホワイトCEOは、公式な立場として、2024年内のマクレガー復帰戦を再三にわたり否定。2025年初頭の試合出場を明言したが、これがチャンドラー戦になるのか現時点では定かではない。
マクレガーvsチャンドラーのこれまでの経緯
- 2021年6月:マクレガー、骨折した頸骨のための手術を受ける。
- 2022年5月7日:チャンドラー、『UFC 274』でマイケル・ファーガソンを強烈な前蹴りでノックアウトしたあと、マクレガーに対戦を呼びかけ。マクレガーもSNSで反応、チャンドラーとの対戦について投稿。
- 2022年8月:マクレガー、映画『ロードハウス/孤独の街』出演へ。
- 2023年2月4日:UFC、リアリティショー『ジ・アルティメット・ファイター31』でマクレガーとチャンドラーがコーチ役になることを発表
- 2023年8月15日:『ジ・アルティメット・ファイター31』の最終回がオンエア、マクレガーとチャンドラーが対戦をほのめかす。
- 2023年10月11日:マクレガーがUSADA(全米反ドーピング機関)の検査対象者リストに復帰。その一方で、UFCはUSADAとのパートナーシップを2023年で終了することを発表。格闘技ニュースサイト『MMA Fighting』によると、 USADAのCEOトラビス・タイガート氏は、「USADAの検査対象者リストに最低6か月登録されなければマクレガーは試合を行えないとするUSADAの原則的な立場に疑念を抱くUFCのリーダー(ホワイトCEO)、そのほかの声明によってパートナーシップが維持できなくなった」としている。
- 2023年10月12日:UFCがトラビス・タイガート氏に反論。タイガート氏の発言は「不快なもの」で、法的措置も辞さないと発表。
- 2023年10月28日:USADAの検査対象者リストに復帰したマクレガーが2年ぶりにドラッグ検査用のサンプルを提出。
- 2023年10月29日:マクレガーが格闘技ニュースサイト『MMA Junkie』にて2024年4月のUFC復帰を目指していることを公表。
- 2023年12月4日:チャンドラーが格闘技ニュースサイト『The MMA Hour』にて待たされていることの不満を表明。 マクレガーがもっと早く試合に応じることを期待していたとした上で、それでも待ち続けるつもりであるとし、「最終的にいつになろうと、コナーとの試合実現に向けてドアは空けて待っているし、実現させる。待ち続けている間も自分は落ち着いているよ」とコメント。
- 2024年2月17日:ホワイトCEOがマクレガーの現状について質問を受け、秋口の復帰を想定しているとコメント。理由としてはマクレガーの手術からの回復状況、そして金銭の問題だと説明。「コナーが出場するとなれば、いつだって喜ばしいものだ。だが、金銭の問題は物事を複雑にする。彼は映画撮影を終えたばかりで、その映画のプロモーションという制約がある。彼自身は今年は試合をしたいと考えているが、どうなるかは様子をみないとわからない」と米スポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』の取材で答えた。
- 2024年2月19日:チャンドラーがWWE(UFCと親会社が同じ)の看板テレビ番組『Monday Night Raw』の中でマクレガーに対戦を呼びかけ。
- 2024年3月19日:マクレガーが格闘技ニュースサイト『MMA Junkie』の取材を通じて米ケーブル局『ESPN』で「数日前に全てが整った。『ザ・マック』と『ザ・ノートリアス』はこの夏、UFCのオクタゴンに戻ってくる」とコメント。マクレガーはUFCとの契約にも触れ、まだ2試合の契約が残っていることも明かした。
- 2024年3月21日:映画『ロードハウス/孤独の街』がアメリカで公開、マクレガーはプロモーションのための大規模なプレスツアーに参加。
- 2024年4月14日:ホワイトCEOが、マクレガーvsチャンドラー戦が6月29日の『UFC 303』で行われると発表。
- 2024年5月24日:マクレガーとチャンドラーが出席する記者会見が6月3日、ダブリンの3アリーナで開かれると発表。
- 2024年6月3日:マクレガーvsチャンドラー戦の記者会見が延期に。『MMA Fighting』のアリエル・ヘルワニ記者は、故障などの理由はないと報じた。
- 2024年6月5日:アリエル・ヘルワニ記者は今回の試合について「全て順調」と報じた。『MMA Hour』に出演したヘルワニ記者は『UFC 303』でのマクレガーvsチャンドラー戦の実現については「大いにポジティブ」に感じているとコメント。
- 2024年6月11日:ヘルワニ記者は一転して、『UFC 303』について「交代出場選手もしくは代替のメインイベントについての可能性が模索されている」とXに投稿。その答えは近々に出るだろうとしている。
- 2024年6月13日:ホワイトCEOがマクレガーの『UFC 303』負傷欠場と、メインイベントをペレイラvsプロハースカに変更すると発表。
- 2024年6月16日:マクレガー本人がSNS上で怪我の発覚とその治療に長時間かかることを謝罪。改めて再起を約束した。
- 2024年6月17日:ホワイトCEOがラジオ番組『ザ・ジム・ローム・ショー』に出演し、マクレガー復帰の可能性について「わからない」と発言。36歳という年齢やエグゼクティブになった今、怪我を恐れずに戦うハングリーさがないのではないかと示唆した。
- 2024年6月19日:チャンドラーが『UFC 303』の会場を訪れることを自身のInstagramで表明。当日、試合はしないものの、サインしたのだから自分の言葉には責任を持つとしている。
- 2024年7月2日:チャンドラーがUFCから10月にイスラム・マカチェフ戦を行うオファーを受けたと自らのXに投稿。その上で、マクレガーの故障が回復するのであれば9月にラスベガスでマクレガー戦を行いたいと書き込んでいる。
- 2024年7月19日:スペインのマルベーリャで行われたベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンシップ(BKFC)の記者会見の場でマクレガーが取材に応え、12月14日に米ラスベガスで開催される『UFC 310』への出場に前向きな姿勢をみせた。それ以前にヘルワニ記者が報じていた『UFC 310』でのマクレガー復帰の可能性とも合致している。なお、マクレガーはBKFC参戦の可能性を問われ、UFCとの契約があと2試合残っていることも明かしてみせた。
- 2024年8月14日:『ダナ・ホワイト・コンテンダー・シリーズ』の大会後、UFCのホワイトCEOがメディアの質問に応え、「会ってはいないけど、話はした。彼(マクレガー)は試合をしたがっている。でも今年はない。彼は今年は試合をしないよ」と返答。これに対してマクレガー本人が自身のX上で、「12月に試合をする。そのために来月から高地トレーニングに入る」という旨の引用リポストし、年内12月復帰への強い意志を表明した。
- 2024年8月26日:ポッドキャストの『Beat the Heat』の取材を受けたチャンドラーが、「自分には妻と2人の子供がいるし、ビジネスもある。だからもうお前(マクレガー)とのことは終わりにしたいんだ。どこでもいい、ラスベガス(UFC 310)なら最高だ。オクタゴンの真ん中でお前を大の字にしてオクタゴンを後にしたら、もう2度とお前のことは考えなくていいからね」とコメント、改めてマクレガー戦への意欲を語り、マクレガー同様に12月の『UFC 310』で試合をしたい意向をみせた。
- 2024年9月10日:ホワイトCEOが米紙『New York Post』にマクレガーの年内復帰はないと改めて語り、2025年初頭の復帰戦を示唆した。
- 2024年9月12日:『Boxing Scene』などが、マクレガーがカネロ・アルバレスについて挑発的なコメントをSNSに投稿した流れから、カネロ当人が「(マクレガーとやるなら)簡単に稼げるな」と反応し、対戦に興味を持っていることを報じた。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 石山修二(スポーティングニュース日本版)、編集:神宮泰暁(スポーティングニュース日本版)