大谷翔平がもたらした日本選手の「100億円時代」

2022-03-29
読了時間 約2分

日本人メジャーリーガーの契約がとうとう「100億円時代」に。カブス入りした鈴木誠也の年俸数字にビックリである。これで渡米目標の選手がさらに増えることだろう。

夢のような「5年、8500万ドル(約101億円)」

鈴木の契約は単純にいえば「1年、20億円」。

2021年の広島では打率3割1分7厘、38本塁打、88打点、長打率6割3分9厘。その年俸は「3億1000万円」だったから、なんと7倍近い契約を勝ち取ったことになる。

しかも付帯条件の一つに「全球団へのトレード拒否」があるというのだ。なんの憂いもなくプレーに専念できるわけで、日本選手にとっては申し分のない内容といえる。

カブスが入団を正式に発表され、契約額が明らかになると、オープン戦中の日本チームから「おーっ!」と驚きの声が上がった。「すげえ!」「信じられない!」とも。

ただし、8500万ドルというのは、あらゆる条件をクリアしたときの総額である。試合出場数、打率や本塁打、さらにタイトル獲得、ワールドシリーズなどポストシーズンでの出場やシーズン表彰など。

同時期に菊地雄星もブルージェイズと「3年 3600万ドル(約42億円)」で契約した。年俸14億円である。マリナーズ時代の3年間とほぼ同じ内容といわれる。西武時代の最後の18年は年俸2億4000万円だったから、やはり7倍の収入となっている。

柳田、山本らにもメジャーから「高値の手」

日本球界で高額契約の選手たちに、さらに上の目標を鈴木や菊地はもたらしたと思う。

たとえばソフトバンクの柳田悠岐(昨年=打率3割、28本塁打、80打点)。「ナンバーワン打者」と最大の評価を受けている。今年の年俸は6億2000万円。昨年まで鈴木の2倍の年俸だったが、今年は逆に3倍以上の差を付けられた。打撃、守備、走力などすべて一級品である。「鈴木以上」と評価する声は多い。

投手ではオリックスの山本由伸(18勝5敗、防御率1.98、206奪三振)が注目される。数少ない「勝てる投手」で、メジャーが獲得リストに載せている。今年の年俸は3億7000万円。菊地とは10億円以上の差がある。

「二人とも今なら100億円の契約を取れる」

こんな声がメジャーリーグ関係者から聞こえてくる。柳田も山本も新たな闘志をかきたててシーズンに臨むことだろう。

各チームの主力選手は、打者も投手も「もっと大きな目標」を立てているはずで、そういう意味では今季のプレーが楽しみになってくる。

なかでもヤクルトの村上宗隆(打率2割7分8厘、39本塁打、112打点、長打率5割6分6厘)は魅力十分である。長打力と勝負強さは文句ないし、確実性も高い。
「メジャーリーグでは王貞治のイメージ」
「理想の指名打者」
 メジャーリーグではそのように見ているという。つまりホームラン打者としての期待の声である。明るいキャラクターも米国向きに思える。

大谷が変えた日本選手のイメージ

鈴木の100億円契約は、大谷翔平の活躍がもたらしたといえるのではないか。二刀流の力を駆使したことで、日本選手のイメージを変えたということである

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 「メジャーリーガー以上のスピードボールを投げる」
 「メジャーリーガーとホームラン争いができる」

昨年の大谷の成績はメジャーリーグに対してそう見せつけた。これまでイチローに代表されるように、プレーに確実性が高いというのが日本選手だった。それにパワーを乗せたのが大谷だった。

鈴木も攻守に優れているが、長打力がプラスされている。またヤンキースの4番を打った松井秀喜と比べ守備力が素晴らしい。

投手の球威でもロッテの佐々木朗希ら160キロ前後を投げる若手にメジャーリーグは関心を持っている。

いずれも大谷効果といっていい。

その大谷の年俸は高くない。昨年は300万ドル(約3億5000万円)で、今季は500万ドル以上とか。これは年齢やプロ経験年数などの特殊ルールに縛られているからである。シーズン終了後にFAの可能性があり、壮絶な争奪戦が繰り広げられるだろう。

鈴木が活躍すれば、日本の打者は次々と狙われるに違いない。

「日本人はメジャーリーガーにパワーとスピードはかなわない」という決まり文句は完全に死語になっている。大谷の存在、それを鈴木が後継すれば、ますます太平洋を渡る打者が増す。下世話に言えば、日本の年俸の5年分を1年で稼げるのだから。


「略歴」
菅谷 齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、メジャーリーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初のメジャーリーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。