山本由伸だけじゃない、日本・韓国からメジャー入りを目指す5人のフリーエージェント投手

2023-12-24
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時事通信

本気でワールドシリーズを目指すのであれば、先発ローテーション、ブルペンとも実力あるピッチャーは何人いてもいい。これは野球界では変わることのない真実だ。

来たる2024年にワールドシリーズを狙うチームはどこも、このオフに投手力を補強しようと躍起になっている。というのも、このオフには多くの実力ある投手がアジアからメジャーリーグを目指しているからだ。その一人が山本由伸で、山本はすでに投手として史上二番目の大型契約を手にするだろうと目されている。 

そのリストのトップにいるのはゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)。コールの契約は9年間3億2400万ドル(約460億800万円、1ドル=142円換算、以下同)だ。それに続くのがデビッド・プライス(ボストン・レッドソックス)が2015年にサインした2億1700万ドル(約303億8800万円)となっている。プライスはボストンとサインした7年契約のうち4年しかプレーしなかったものの、2018年のワールドシリーズ制覇に貢献した。山本を獲得しようとしているチームが同様の成功を狙っているのは間違いない。

山本の契約はプライスの2億1700万ドルを超えることはまず間違いなく、コールの契約に迫るものとなるだろう。ただ、2024年のペナントレースを左右する実力派投手は山本だけではない。

ここでは、このオフにアジアからMLB挑戦を目指す5人の投手をピックアップした。

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今永昇太 投手(左)

2024年シーズン開幕時の年齢:30歳

2023年のスタッツ(日本):先発24試合、防御率2.66、WHIP 1.019、投球回数159回、奪三振数188個、奪三振/与四球率 7.83

寸評:このオフの多くのフリーエージェント投手同様、今永の想定契約額も数ヶ月前と比べて高騰している。当初は昨オフにメッツとサインした千賀滉大の契約(5年7500万ドル=約10億7210万円)程度が想定されていたが、今では1億ドル(約142億円)を超えるだろうと考えられている。実力、年齢をみても、今永が山本に匹敵するとは言えないが、それでも今永の数字を見れば見るほどローテーションの一角を任せる投手としては魅力的に思えてくる。特に目を引くのはそのコントロールだ。与四球率1.4/9回は抜群の数字と言っていい。昨季のMLBで140イニング以上を投げ、これを超える数字を残している投手はジョージ・カービー(0.9、シアトル・マリナーズ)、ザック・エフリン(1.2、タンパベイ・レイズ)、ローガン・ウェブ(1.3、サンフランシスコ・ジャイアンツ)の3人しかいない。その上、山本は奪三振率でも10.6を記録している。新しい環境に適応する必要はあるだろうが、ストライクが投げられて、バットに当てさせない投手となれば良い投手であることはまず間違いない。

スポーティングニュース日本版の寸評:駒沢大時代には大学球界No.1のサウスポーとして評価され、2015年のドラフト1位指名でDeNAベイスターズ入り。NPBでは8年間で165試合に登板した(うち先発が158試合)。2023年にはノーヒットノーランを達成し、リーグトップのWHIP 0.94、174奪三振をマークしている。ストレートの球速は約152キロ、5種のブレーキングボールを投げ分ける。両親は中学校の先生で、兄は小学校の先生をしている。

可能性のあるチーム:山本獲得競争に敗れたチームはおそらくどこも今永を狙うだろう。中でもいくつかのチーム、特にメッツとレッドソックスは山本と今永を二人揃って2024年シーズンのローテーションに加えたいというシナリオを思い描いている。賢明なチームは早々に今永一人に狙いを絞って、獲得競争が激化する前に話をまとめようとするはずだ。ただ、今永サイドもブレイク・スネル(サンディエゴ・パドレス)やジョーダン・モンゴメリー(テキサス・レンジャーズ)といった先発投手が契約するまでは慎重に待っているのが賢明なことは重々承知だ。今永のポスティング申請期間終了は1月9日となっている。

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松井裕樹 投手(左)

2024年シーズン開幕時の年齢:28歳

2023年のスタッツ(日本):59試合登板、防御率1.57、39セーブ、WHIP 0.890、奪三振率11.3/9回、与四球率 2.0/9回

寸評:松井は174センチ74キロと決して大柄ではないが、過去3シーズンにわたってNPBの打者を圧倒してきた。その間の通算防御率は1.42、152回を投げて214個の三振を奪っている。またコントロールも年々良くなっており、2021年には4.4だった与四球率が2022年には3.3、2023年には2.0と改善してきている。松井クラスの体格で数字もアベレージであれば、さほどの注目は集まらないだろう。しかし優勝を狙うチームの多くがブルペンを充実させたいと考えているこのオフは、これだけの実績を持つ松井がメジャー入りを狙うには絶好のタイミングと言っていいだろう。

スポーティングニュース日本版の寸評:高校2年時に10者連続三振、夏の甲子園では1試合22奪三振を記録し、2013年のNPBドラフト1位指名で楽天ゴールデンイーグルス入り。プロ2年目でクローザーに転向すると、9シーズンで6度にわたり30セーブ以上をマークしている。通算成績は501試合登板中リリーフが472試合、236セーブ、76ホールド、25勝。2023年は自己ベストの39セーブを挙げた。そのピッチングは安定していてノックアウトされることはまずない。決め球は「消える」と表現される切れ味鋭いスライダー。通算の奪三振率は11.73/9回で、2022年に記録した14.73/9回が自己ベストだ。

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可能性のあるチーム:カージナルスはこのオフ早々からローテーションの拡充へ向けて実績のある投手を獲得すべく動いていたが、ブルペンの駒も必要としている。セントルイスに松井を招いたとも報じられていて、関心があることは間違いない。パドレスもまた名乗りを挙げるだろう。ただ、ブルペンの投手を取り巻く交渉の状況は先発投手とは少し違う。優勝を狙うチームはどこも、ブルペンを充実させる必要があるので、フリーエージェント投手の契約がドミノ倒しに決まっていく中で当初は関心を持っていなかった投手に対して急に関心を示し始めることがある。当初の想定では松井の契約期間は2年だろうとみられていたが、オプション付きの3年契約といった話になる可能性もあるだろう。

注:12月20日、サンディエゴ・パドレスとの基本合意に達したと報じられている。

上沢直之 投手(右)

2024年シーズン開幕時の年齢:30歳

2023年のスタッツ(日本):先発24試合登板、防御率2.96、WHIP 1.135、投球回数170回、奪三振率 6.6/9回、与四球率 2.2/9回

寸評:このオフにメジャー挑戦を狙う他の日本人投手と比較すると、上沢には打者を空振りさせるような球はない。だが、登板した試合でしっかりとイニングを稼げるので。MLBでも貴重な存在となりうる。ただ、獲得しようとするチームにとっては頭の悩ませどころでもある。というのは、ローテーションの厚みを増す、5人目の先発投手の獲得といった意味では貴重な戦力になるだろうが、優勝を狙うコンテンダーがローテーションの2番手、3番手としてサインする投手とは考えにくいからだ。

スポーティングニュース日本版の寸評:年齢的には大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)の1つ上、2011年のNPBドラフト6巡指名で日本ハムファイターズに入団。当初の2年間をファームで過ごし、3年目の2104年に先発として起用されたが、肘の故障で年間を通じてプレーできなかった。真価を発揮したのは2018年、この年11勝をあげてこれ以降先発ローテーションに定着した。自己ベストは2021年の12勝、2023年は投球回数170イニングはリーグトップの数字を残した。通算成績は70勝62敗、187センチ88キロ、パワーで押すタイプのピッチャーではなく、速球と様々なブレーキングボールを持つ。

可能性のあるチーム:驚いたことに多くのチームが上沢に関心を持っている。このオフは実力のある先発投手のエリーエージェントが少ないことも要因だろう。すでにタンパベイと接触していると報じられており、ウェブサイトの「MLB Trade Rumors」ではエンゼルス、カブス、ダイヤモンドバックス、レンジャーズ、レッズ、ロイヤルズの6チームが獲得に興味を示しているという。ただ、マイケル・ワッカ、セス・ルーゴを獲得したロイヤルズはこのレースから離脱したと考えていいはずだ。

ジャリエル・ロドリゲス

2024年シーズン開幕時の年齢:27歳

2022年のスタッツ(日本):55試合登板、防御率1.15、投球回数 54回2/3、WHIP 0.915、奪三振率 9.9/9回、与四球率 3.0/9回

寸評:紹介しているスタッツが2023年ではなく2022年ということからも気付く通り、ロドリゲスは2023年シーズン、日本でプレーしていない。WBC(ワールドベースボールクラシック)でキューバ代表の先発として2試合に登板、7回1/3を投げて防御率2.45、10奪三振を記録すると、2023年シーズンは日本には戻らずにメジャー挑戦の機会を得ようと働きかけていたためだ。結局、11月に契約解除となり、現在は日本からメジャー入りを目指す際に必要となるポスティング・フィー不要で契約が可能となっている。

2022年の成績からも分かるように、リリーフ投手として相手打者を圧倒している。これを各チームがどう捉えるかは興味深いところだ。日本での成功をベースにリリーフ投手として起用するのか、それとも先発投手として成長の機会を与えるのか。「MLb Trade Roumors」でによると、約半数のチームは彼をこれまで通りのリリーフ役として考えているようだ。

可能性のあるチーム:どのチームもおそらく彼に興味を持っていると思われる。一方でロドリゲス自身は、チームから与えられる役割でチームを選ぶだろう。2024年にワールドシリーズを狙うレベルのチームが、彼にローテーションの一角を任せるとは考えにくいが、それより下のレベルであれば、先発投手としての成長のチャンスを与えることもあるだろう。例外と思われるのはタンパベイ、ここだけは「先発投手」の意味が他のチームとはちょっと違って、「オープナー(リリーフ投手を先発に起用し、本来の先発投手をロングリリーフとして登板させる起用法)」を採用しているからだ。

高佑錫 投手(右)

2024年シーズン開幕時の年齢:25歳

2023年のスタッツ(韓国):44試合登板、防御率3.68、15セーブ、投球回数 44回、WHIP 1.364、奪三振率 12./9回、与四球率 4.5/9回

寸評:防御率1.48、WHIP 0.956をマークした2022シーズンと比較して、高のスタッツは2023年に大きく落ち込んでいるのが不安の種だ。ただ、まだ25歳と若く、奪三振については12.1/9回と自己ベストを記録した通り、三振が取れるのは魅力的だ。KBOリーグのLGツインズでプレーしてきた高は20歳だった2019年以来クローザーを務めている。もともとコントロールの良いタイプではないが、2022年に3.1/9回だった与四球率が4.5/9回と跳ね上がったのも気にかかる。それでも被本塁打は2本だけと力のあるところは見せている。

可能性のあるチーム:カージナルスが興味を示していると報じられているが、優勝を狙うチームであれば、クローザー経験のある三振が取れるピッチャーをブルペンに欲しいのは山々だ。高のポスティング申請期間終了は1月3日となっている。

この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。
翻訳:石山修二(スポーティングニュース日本版)