千葉ロッテマリーンズでプレーし、野球日本代表・侍ジャパンの一員として第5回ワールド・ベースボール・クラシック(2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™|以下WBC)に出場している佐々木朗希投手は、すでにMLB球団からも大いに注目を集めている。
MLBでのプレーを夢見る佐々木が、現実的に米国でプレーできるようになるタイミングはいつなのか。本誌『スポーティングニュース』のEdward Sutelan記者がNPBとMLBの間にある複雑な移籍に関するルール、フリーエージェント制度、ポスティングシステム、譲渡金、佐々木の海外移籍のタイムラインなどについて解説する。
NPBで記録的活躍を見せる佐々木朗希
佐々木朗希は、瞬く間に国際的な野球界の大スターの仲間入りを果たした。
WBCのメキシコ戦(日本時間3月21日)で大会2度目の登板となった侍ジャパン・日本代表の先発投手は、千葉ロッテマリーンズでプレーした日本プロ野球NPBの2年目のフルシーズンにおいて大活躍を見せた。
佐々木の2022年シーズンは、129.1イニングを投げて、防御率2.02、173個の三振とわずか23個の四球という素晴らしい成績だった。また、17イニング連続でパーフェクトゲームを達成し、52イニング連続アウトというNPB記録を樹立した。しかも彼は、昨年の時点でまだ20歳だったのだ。
佐々木は、国際舞台でも期待に違わぬ圧倒的な投球を続けている。WBCの1次ラウンドで先発したチェコ共和国戦では、3.2回を投げて8奪三振、2安打、2四球、1安打で無失点に抑えている。
日本球界の大物選手たちの多くは、いつかは米国に渡ることになる。山田哲人はNPBに残っているが、大谷翔平、ダルビッシュ有、松坂大輔、松井秀喜、イチローといったスター選手は、日本で注目された後、太平洋を渡ってMLBでプレーすることになった。
佐々木はいつMLB球団と契約できるのだろうか? 以下はそのタイムラインだ。
佐々木朗希のMLB行きのタイムライン
佐々木はMLB球団でプレーすることを望んでいる。AP通信によると、佐々木はMLBでのプレーについて聞かれたとき、「僕の夢です」と答えたという。
しかし、佐々木がメジャーリーグに到達することを夢見るのは簡単だが、実現するには少し時間がかかるかもしれない。2020年シーズンからNPBでプレーする佐々木は2028年シーズン終了まで待てば、NPBの海外フリーエージェント権を取得してMLBに出ることができ、ポスティングシステムの影響も受けない。
ただし、もっと早くやってくる可能性もある。彼が日本の所属球団である千葉ロッテマリーンズにポスティング(入札)を要請し、球団がそれを承諾すれば、MLB球団はまず彼との交渉権を獲得するべく球団と交渉することができるようになる。そうなれば、佐々木はもっと早くメジャーに行くことができる。
しかし、そのためにはポスティングの手続きをしなければならない。そのシステムは、はっきり言って非常に複雑だ。
日本のポスティングシステム(入札制度)とは?
MLBとNPBの間には、MLB球団が日本のプロ選手を見返りなしで連れ去ることを防ぎ、海を渡りたくない選手をNPBが北米に送り込むことを防ぐ制度がある。
この制度が正式に導入されたのは1998年のことだ。その方法でMLBに移籍した最初の選手は、広島東洋カープからシンシナティ・レッズに入団したアレハンドロ・ディアス(日本での登録名はケサダ)だった。
ポスティングシステムにはいくつかの段階がある。NPBで経験9年(1軍登録145日以上を1年として累計9年)に達していない選手が所属球団の承諾を得てMLB球団にポスティングされるようにする制度である。2019年に千葉ロッテと契約した佐々木は、順調にいけば2028年シーズン後にNPBの海外フリーエージェント権を取得する。
このシステムの最初のステップは、プレーヤーがポスティングによる海外移籍を希望することだ。このリクエストは、その選手が所属するNPB球団によって受け入れられるか、拒否されるかのどちらかである。拒否された場合、選手はそのまま待機することになり、その選手はそのままNPBでプレーすることになる。受け入れられた場合、その選手は正式にポスティングされ、譲渡金の設定と入札のプロセスが開始される。
譲渡金とは、MLB球団がその選手と交渉するためにNPB球団に支払わなければならない金額のことだ。MLBによると、それには様々な可能性があるという。
- MLBで2500万ドル以下の契約の場合、契約総額の20%。
- 2500万1ドルから5000万ドルまでのMLB契約の場合、最初の2500万ドルの20%+2500万ドルを超える残りの金額の17.5%。
- 5000万1ドル以上のMLB契約の場合、最初の2500万ドルの20%+次の2500万ドルの17.5%+5000万ドルを超える残りの金額の15%。
マイナーリーグ契約の場合、譲渡金は契約金の25%。また、契約にMLBの条件が含まれていて、選手がアクティブロスターに加えられた場合、補足的な手数料が支払われる。
また、ボーナス、昇給、オプションを含む契約を結んでいる選手については、選手が獲得したボーナスや昇給の15%、および行使されたオプションの15%を追加料金として徴収することがある。
MLBは、日本人選手がポスティングされ、保証額1億ドルのMLB契約にサインした場合、NPB球団は1687.5万ドルを受け取ることになるが、その内訳は以下の通りである。
- 最初の2500万ドルの20%=500万ドル
- 2500万ドルを超える部分の17.5%=437.5万ドル
- 5000万ドルを超える部分の15%=750万ドル
MLBチームは、大谷翔平のように安価な契約をしない限り、特に佐々木が海外FA権を取得する前に呼び寄せることは、さらなる困難に直面するだろう。佐々木が25歳でなく、NPBで6シーズン以上プレーしていない場合、彼との契約は国際ボーナスの制限にカウントされることになる。MLBの新労使協定(CBA)では、チームは少なくとも475万ドルを使うことができる。競争均衡ラウンドA(Competitive Balance Round A)を指名したチームは525万ドル、競争均衡ラウンドBを指名したチームは575万ドルだ。ボーナスプール金は、MLBによると、最大でおよそ1010万ドルまで取引することができるという。
選手は45日以内にMLB球団と交渉し、契約にこぎつけることができる。合意に至らない場合、その選手は次のオフシーズンまでポスティングすることができない。
日本のポスティングシステムは、何人ものスター選手をMLBに送り込んできた。イチロー、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太、大谷翔平、菊池雄星、鈴木誠也は、この制度でやってきたMLBの名選手たちである。
原文:Roki Sasaki posting timeline, explained: When can Japan baseball star come to MLB?
翻訳:スポーティングニュース日本版編集部