MLBのオールスター選手たちがキャンプ前にソフトボールのチャリティー試合を行っていたあの良き日【MLBの歴史シリーズ】

2020-04-22
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過去30年か40年の間に野球がどのように変わっていったかを語るとき、多くの人は選手たちの体がより大きく、より強くなっていること、そしてよりアスリートになったことを引き合いに出す。そして、より多くのホームランやより速い投球を求めるばかりに、野球が失っていったものを惜しむ声もあるだろう。だが、あまり注目を浴びることはないが、それ以外にも変わってしまったものがある。

Youtubeで過去の野球の動画を探して回っていると、「1984年ピザ・ハット オールスター ソフトボール・ゲーム」というNBCのテレビ録画が目に止まった。最初、私はこれが何なのか想像もつかなかった。この30年ほどの間、そのようなイベントは見たことも聞いたこともなかったからだ。タイトルを読めばイベントの内容は一目瞭然ではあるものの、そのコンセプトは2020年の今では異様なものに思える。現役のMLB選手たちが春季トレーニングの前にチャリティーでソフトボールの試合を行うというのだ。

80年代の頃はこのようなことはよく行われていた。ピザ・ハット、後にはペプシにイベント名が変わったが、1982年から少なくとも1991年までの間、メジャーリーグのトップ選手たちが集まり、学童クラブや医療研究基金、その他さまざまな目的のために寄付金を募る目的でソフトボールの試合をやっていたのだ。1年に1回、ある週末の1時間、アンドレ・ドーソン、マイク・シュミット、ウェイド・ボッグス、カル・リプケン・ジュニアといった後に野球殿堂入りをはたすスター選手たちが「アメリカン・リーグ」か「ナショナル・リーグ」と書かれたユニフォームに身を包み、ソフトボール用の金属バットを振り回して、全米の人々を楽しませていた。それはすべて、ごく普通のソフトボール・フィールドでわずか数千人ほどの観客を前にして行われ、ファンと選手との間を隔てるものは芝生か僅かな金網フェンスだけだった。

その後もこれに似たイベントは不定期に行われることはあったが、年間行事として行われることはなくなってからしばらくたつ。そのことに特に大きな理由はないのかもしれない。だが、もし今これと同じことをやろうとしたら、多分そこに参加するのは先発メンバーに入れない控えレベルの選手達になるだろうことは、現在の野球に関する思想や手法から容易に推測できる。例えば、こういうことだ。

― 代理人たちとチーム首脳陣らはトップ選手たちが春季キャンプの直前にどのような形であっても競技の要素がある活動をすることに難色を示すだろう。本番の野球ではない何かで怪我をするリスクは、どのようなものであれ喜ばれることはない。

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― 選手たちは春季キャンプ前にソフトボールを打つことをためらうだろう。彼らの打撃フォーム調整に何かしらの悪影響が生じることを恐れるかもしれない。

― ソフトボールは野球のそれより大きく、そして重い。オフシーズン中に野球ボールでの練習をした数日後にソフトボールを投げたりすると、選手たちの腕を痛めるか、それでなくても投球に悪影響が生じるかもしれない。

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― ソフトボールをするためのわずかな時間でも、選手たちのオフシーズンのトレーニング計画を狂わせるかもしれない。彼らはルーティンや習慣をことさら大切にすることで有名なのだ。まるでドミノのように、わずかな狂いがシーズン全体の不調に繋がるかもしれない。

― 選手たちは少しでも早くフロリダへ向けて家を出発することを嫌がるかもしれない。このチャリティー・ゲームは1月か2月の上旬に行われて、その数週間後にテレビで放映されていた。オフシーズン中に家族と過ごすことや自分自身の準備をする時間を大切にする選手たちは、わずか数日の違いであっても、イベントの参加を拒否する理由にするかもしれない。

私は間違っているかもしれない。だが、どうしてもこのようなイベントが今後定期的に行われることは想像すらできないのだ。チームは選手たちを投資の対象とみなし、選手たちは1年を通してコンディションに対して神経質になっているからだ。もしこのようなイベントが長い冬の終わりに、そして来シーズンへの期待が膨らみつつある時期に行われるとしたら、それはとても楽しいものになるに違いないと思うのだが。

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それに、この下の写真のような素晴らしい場面が見られるかもしれない。ボブ・コスタ(訳者注:有名アナウンサー)が『NBCスポーツ』の帽子を被り、ブルックス・ロビンソン(訳者注:野球殿堂入りした元名選手)と話をしている。

何はともあれ、いくつかの試合はYoutubeで見ることができる。下は1984年のものだ。もしあなたが選手たちは怪我をしないように全力でプレイしていたわけがないと考えているなら、8:48のところまで早送りして、ロニー・スミスが全速力でベースを回って転倒するところを見てほしい。スミスはこれと同じことを野球の試合で何度もやって、キャリアの危機を招いている。 

これが楽しいと思えたなら、198519861987の試合も見てはどうだろうか。どれも1時間ほどは退屈な時間をなくしてくれるし、それは自粛中の日々を送っているスポーツファンにとっては、なによりもの贈り物になるだろう。

(翻訳:角谷剛)